国立競技場や根津美術館、サニーヒルズやスターバックスなど大規模建築からカフェまで幅広い代表作で知られる世界的建築家の隈研吾は、木材をふんだんに使用した日本的な建築を数多く手がけることで知られています。
私が訪れた全国の隈研吾建築の中から木材が効果的に使われている隈研吾建築を集めてみました。
PR国立競技場
2020年東京オリンピックのメイン会場とするため2019年11月に竣工した新宿霞ヶ丘の「新国立競技場」。
この設計を手がけたことで隈研吾は多くの日本人がその名を知る建築家となりました。
▲当初のコンペでは超未来的なザハ・ハディド案が採用されたのですが予算の都合ということで一転不採用となり、すったもんだの末に隈研吾に落ち着いたという経緯はみなさんも御存知の通り。
明治神宮外苑という周辺エリアとの調和を目指した「杜のスタジアム」をコンセプトに、自然に開かれた日本らしいスタジアムとして鉄骨と木材のハイブリッド構造を採用。
外観は木造のようにも見えるまさに隈研吾ならではのデザインです。
▲屋根も鉄骨と木材のハイブリッドで、しかも片持ち梁。
全体で2,000㎥もの木材を使用しています。
また外観の特徴を決める軒庇に使われた全国47都道府県から集めたスギ材(沖縄県はリュウキュウマツ)は一番北側部分に北海道、南端には沖縄と、方位に応じて地域順に並べられています。
スポーツ競技やイベントへ参加すれば国立競技場の威容を目の当たりにすることができますが、見学イベントも定期的に開催されておりさらに内部まで見学することができます。
詳細はこちらから▼
基本情報
国立競技場
住所:新宿区霞ヶ丘町10-1 MAP アクセス:都営大江戸線国立競技場駅徒歩A2出口徒歩1分、JR千駄ヶ谷駅徒歩約5分、JR信濃町駅徒歩約7分 |
根津美術館
ここは東武鉄道の社長などを務めた実業家、初代根津嘉一郎が収集した日本や東洋の古美術品のコレクションを保存・展示するためにつくられた私立の美術館です。
開館は1941年。長らく南青山の住宅地に佇む地味な美術館でした。
大きな転機があったのは2006年。旧本館などを取り壊し、新たな展示館(本館)を隈研吾設計で建設するなどの大工事を3年半かけて行い、2009年に今の新しい根津美術館に生まれ変わっています。
隈研吾らしい和テイストに溢れる本館とそのアプローチ、多くの東洋古美術の収蔵作品、春の燕子花と秋の紅葉が美しい庭園。
インバウンドのお客さんには大人気なのも頷けます。
これは夜の根津美術館。
美術館の開館時間は通常は午前10時から午後5時までですが、年に1回、数日だけ夜間開館をします。
マジックアワーや夜の美しい根津美術館を堪能できます。
基本情報
根津美術館 開館時間:10:00 – 17:00 休館日:月曜日、展示替え期間 入館料:展覧会による 住所:港区南青山6丁目5−1 MAP アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線 表参道 駅下車 A5出口(階段)より徒歩8分 |
瑞聖寺
創建1670年という白金台(しろかねだい)の禅寺「瑞聖寺(ずいしょうじ)」。
創建350年の記念事業の一環として老朽化していた庫裏(くり)を改築し、その再建を手がけたのが隈研吾です。
▲中央には水庭。それをコの字型に取り囲む庫裏。そして対極に位置する重要文化財の大雄宝殿。
周りにはビルも多い都会の寺院、江戸時代から残る仏堂建築、隈研吾のモダンな庫裏。ちょっと感動的な空間です。
▲春には桜が咲き、天気が良ければ水庭から日の光が庫裏に反射し、雪が降れば山水画の世界になり。
いつ訪れても新しい発見があります。
基本情報
開門時間:9:00 – 16:30 住所:港区白金台3丁目2−19 MAP アクセス:地下鉄白金台駅より徒歩1分 |
サニーヒルズ
台湾のパイナップルケーキのお店で2013年に竣工しました。
▲「地獄組み」という日本の木造建築に伝わる伝統技術が使われています。
▲内部から見たところです。
基本情報
サニーヒルズ南青山
営業時間:11:00 – 19:00 住所:港区南青山3丁目10−20 MAP アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線 表参道駅 |
村上春樹ライブラリー
2021年に開館した早稲田大学国際文学館、通称「村上春樹ライブラリー」は、早稲田大学の卒業生で村上春樹と同じに入学したファーストリテイリング(ユニクロ)代表取締役会長兼社長の柳井正が費用12奥円全額を寄付して建設された施設。
”建設” というか実際にはリノベーション案件です。
▲あまりに有名な「階段本棚」。
本棚には、安藤忠雄設計の中之島と遠野の子ども本の森の選書も担当した幅允孝のバッハが選書した本が並んでいます。この階段本棚には村上春樹以外の作者の書物が並んでいます。
ライブラリー全体では村上春樹の著作が日本語、外国語含めて約3,000冊が閲覧可能になっています。
▲アコヤ材による流線型のダイナミックな装飾がなされたエントランス。
隈研吾曰く「現実の世界なのか非現実なのか。村上作品のそういう希薄な存在感をイメージした庇」なのだそうです。
詳細はこちらから▼
基本情報
早稲田大学国際文学館村上春樹ライブラリー
住所:新宿区西早稲田1-6 MAP アクセス:東京メトロ 東西線 早稲田駅徒歩5分 |
STARBUCKS RESERVE® ROASTERY TOKYO
長い正式名称ですが通称は「中目黒のスタバ」。
2019年2月に世界で5番目の「スターバックス リザーブ®ロースタリー」としてオープンしました。
▲外装の設計は見れば分かる通りの隈研吾です。
この外観のせいばかりではありませんが、週末ともなると朝7時の開店から整理券待ちの行列ができます。
しかも桜の季節には300万人とも言われる花見客が訪れる目黒川沿いなので、そんな時期には入場待ち4時間とかになることも普通です。
▲ただし内装は隈研吾ではありません。
スタバのCDO(チーフデザインオフィサー)のリズ・ミューラーの手になるものです。
基本情報
STARBUCKS RESERVE® ROASTERY TOKYO 営業時間:7:00 – 23:00 定休日:不定 住所:目黒区青葉台2丁目19−23 MAP アクセス:東急東横線・東京メトロ日比谷線 中目黒駅下車より徒歩15分、東急田園都市 池尻大橋駅より徒歩15分 |
AEAJ グリーンテラス
2023年に原宿駅近くのJR山手線の線路沿いに姿を現したAEAJ GREEN TERRACE(AEAJ グリーンテラス)。
公益社団法人 日本アロマ環境協会がアロマ関連事業を行う拠点です。
▲環境に配慮したサスティナブルな木造建築で建築家隈研吾と共に築いた”神宮前の小さな森”というのがコンセプトです。
まるでガラスのボックスの中に3階建ての檜の組積構造がすっぽり入っているような構造で、国産の檜がふんだんに使われています。
基本情報
AEAJ GREEN TERRACE
営業時間:13:00 – 18:00 定休日:日月祝、事前予約制 料金:AEAJ会員は無料、一般 500円、高校生以下無料 住所:渋谷区神宮前6丁目34−24 MAP アクセス:JR原宿駅東口より徒歩7分、東京メトロ 明治神宮前駅7番出口より徒歩3分 |
ルアール東郷
原宿の東郷神社内の結婚式場「ルアール東郷」も隈研吾の設計によるもの。
▲水盤に囲まれた、まるで水の上に浮かんでいるかのような施設です。
まるでガラスのボックスの中に3階建ての檜の組積構造がすっぽり入っているような構造で、国産の檜がふんだんに使われています。
基本情報
ルアール東郷
住所:渋谷区神宮前1丁目4−20 MAP アクセス:JR原宿駅竹下口より徒歩7分、東京メトロ 明治神宮前駅5番出口より徒歩5分 |
PR
日本平 夢テラス
2018年11月にオープンした静岡県の施設「日本平 夢テラス」。
景勝地である日本平の山頂部にあり展望台と静岡の情報を発信する施設を併せ持っています。
駿河湾越しに仰ぎ見る富士山、眼下に見える清水港、伊豆半島、南アルプスのパノラマビューと絶景に囲まれています。
▲1階から3階まで階段で吹き抜けになっていて、隈研吾らしく地元の静岡県産富士ヒノキをふんだんに使った温かみのある内装です。
木製の階段が吹抜けの中央を横切っています。
▲外観も木材で、日本の伝統的な社寺建築を彷彿させるもの。
また3階の展望テラスからは1周約200mの大規模な空中回廊が続きます。その回廊もウッドデッキです。
何がみられる?
上の写真にも写っていますが富士山、眼下の清水港、駿河湾、伊豆半島と天城山系、北に目を向ければ遠くには南アルプスの高峰。これ以上何を望むかというばかりの絶景です。
詳細はこちらから▼
基本情報
日本平夢テラス
営業時間:9:00 – 21:00 (土曜日は21:00まで)、展望回廊は終日 定休日:第2火曜日、年末 住所:静岡県静岡市清水区草薙600-1 MAP アクセス:JR東静岡駅南口より日本平線日本平ロープウェイ行きバス約25分 「日本平夢テラス入口」下車 東名高速道路静岡IC・清水ICから約30分 新東名静岡ICから約35分 駐車場:200台 |
snow peak LAND STATION HAKUBA
2020年に長野県の白馬にオープンした「snow peak LAND STATION HAKUBA」。
新潟のアウトドアブランであるスノーピークが運営する複合施設です。
▲スノーピークのショップの他に、スタバ、レストランそれと白馬村の観光情報施設が入っています。
また、スノーピークと隈研吾コラボのモバイルハウス「住箱-JYUBAKO」に宿泊することも可能です。
屋根の形は白馬三山(白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳)のシルエットをイメージしたもの。
▲屋根を支える骨組みは雪の結晶をイメージしたものです。
基本情報
営業時間:11:00 – 19:00 (スタバは7:00から) 定休日:無休 住所:長野県白馬村北城5497 MAP アクセス:JR東日本 大糸線 白馬駅より徒歩10分 |
富山市ガラス美術館(TOYAMAキラリ)
2015年、富山市内の百貨店跡地に開業した複合施設「TOYAMAキラリ」も隈研吾による設計。
外観は隈研吾建築でよく見るものですが、ガラスのようなキラキラしたイメージをガラス・アルミ・石といった富山県の名産品を使用して表現しています。
▲内部は木を多用したこれぞ隈研吾なものです。
ビル内は富山市ガラス美術館のエリアと富山市立図書館のエリアが共存するもの。
フロア間を繋ぐエスカレーターと相まっての知的な空間ができています。
基本情報
富山ガラス美術館
開館時間:9:30 – 18:00 (金・土曜日は220:00まで) 休館日:第1, 3水曜日、年末年始 観覧料:展覧会による 住所:富山市西町5−1 MAP |
鍋島松濤公園
渋谷区内の公衆トイレを著名なクリエーターのデザインで順次リニューアルしていく「THE TOKYO TOILET 」プロジェクト。サイドプロジェクトとしてドイツの世界的な映画監督ヴィム・ヴェンダースがメガホンを取って映画「Perfect Days」が製作され、役所広司が第76回カンヌ映画祭で主演男優賞を受賞したり、米アカデミー賞にノミネートされたりしたことは記憶に新しいです。
その「Perfect Days」にも登場した木材が立ち並ぶ不思議なトイレ、鍋島松濤公園トイレが隈研吾による設計です。
▲集落のようなトイレの村というコンセプト、タイトルは「森のコミチ」。
場所は渋谷区松濤という日本でも有数の高級住宅街の中。周囲には大きなお屋敷が建ち並ぶ緑の多いエリア。白井晟一による特徴的な建物と攻めた展覧会企画で知られる「渋谷区立松濤美術館」もすぐ近くです。
▲個室の内部はそれそれ異なるサイズ、デザインの木製装飾。
外も内も木という分かりやすい隈研吾建築です。
詳細はこちらから▼
基本情報
鍋島松濤公園 住所:渋谷区松濤2丁目10−7 MAP アクセス:京王井の頭線 新鮮駅より徒歩5分、渋谷駅より徒歩10分 |
守山市立図書館 本館:本の森
2018年に開館した滋賀県守山市の市立図書館も隈研吾設計です。
2023年に「守山市立北部図書館:本の湖(うみ)」が開館したので隈研吾設計の本館は「守山市立図書館 本館:本の森」と呼ばれています。
▲滋賀県産の杉材がふんだんに使われたファサード。
▲館内はもっとすごい大空間です。
図書館という性格上、写真ではお伝えできません。ぜひ現地に足を運んでみてください。また図書館のすぐ近くにある守山市役所もやはり隈研吾による設計です。
基本情報
開館時間:10:00〜19:00(土曜日は20:00まで) 休館日:月曜日、資料整理日(第1金曜日)、年末年始 住所:滋賀県守山市守山5−3−17 MAP アクセス:JR守山駅からバスで約6分、徒歩で約20分。無料駐車場あり |
馬頭広重美術館
栃木県東部の那珂川町に2000年に開館した町立の美術館で歌川広重の肉筆画を中心として作品が展示されています。
20世紀末ですから今のように中央(=東京)でブイブイやってる時代の隈研吾ではありません。
▲木材とルーバーという隈研吾の代名詞的デザインはこの頃からすでに多用されています。
またこの馬頭広重美術館によって「村野藤吾賞」を受賞していますから隈研吾の飛躍のきっかけになった建築と言えるかもしれません。
この時期、同じ栃木県内の那須町で「ストーンプラザ 石の美術館」や「那須歴史探訪館」なども手がけていますし、少し後には宝積寺駅とその周辺も手がけています。なにか栃木県の縁があったのでしょう。
▲建物自体は大きな切妻屋根を持ち、木のルーバーが多用されています。
このエリアに数多い隈研吾建築の中でも、最も分かりやすい建築の一つです。
基本情報
開館時間:9:30〜17:00 休館日:月曜日、展示替え期間、年末年始 住所:栃木県那須郡那珂川町馬頭116−9 MAP アクセス:JR宇都宮駅、那須塩原駅よりバス利用 |
宝積寺駅
JR東日本東北線と烏山線の分岐駅である宝積寺駅(ほうじゃく・えき)は2008年に新しい駅舎が供用を開始しました。
その少し前に駅前に完成した大谷石が特徴的な「ちょっ蔵広場」ともども隈研吾の設計です。
▲”光と風が吹き抜けるイメージ” でデザインされているので訪問するなら晴れた日の昼間が良さそう。
合板をランダムなひし形に組んだ天井部分が映えそうです。
基本情報
宝積寺駅
住所:栃木県塩谷郡高根沢町宝積寺 MAP アクセス:東京から在来線で2時間、新幹線+在来線で1時間10分 |
都内の隈研吾建築▼
隈研吾の本▼
PR