このブログでも度々取り上げている日本のカウディこと奇才!梵寿鋼先生が(なぜか先生呼びしたくなる)まだ梵寿鋼(ぼんじゅこう)と名乗る前、本名田中俊郎時代に設計した中目黒のマンション、その名も「カーサ中目黒」をみてきました。
なんだかんだとこのブログでも梵寿鋼先生の物件を取り上げるのは、東京都内建築巡り<早稲田 2> 日本のガウディ梵寿綱設計 ドラード和世陀(1983年)、東京都内建築巡り<松濤>白井晟一設計の渋谷区立松濤美術館とあの有名建築家の若かりし頃の建築巡りで取り上げたシャンポール松濤(1969年)、東京都内建築巡り<西麻布その1> 安藤忠雄から梵寿綱まで 近隣住民目線のディープな西麻布建築情報で、取り上げたエスペランザビル(1977年)、代田橋の二つの梵寿綱建築 日本一装飾過剰なコンビニがあるマインド和亜(1992年)と女神ドーン!のラポルタイズミ(1989年)、とこれまでに4回5物件をレポートしてきました。
5回目となる今回取り上げるのは、シャンポール松濤とエスペランザビルの間に完成した1974年竣工の集合住宅カーサ中目黒です。
▲なだらなか坂の途中にあるカーサ中目黒
PRカーサ中目黒
設計:田中俊郎(梵寿鋼) 竣工:1974年(昭和49年)
中目黒を名乗っていますが、東急東横線中目黒駅から徒歩17分、祐天寺からも15分とまぁまぁどこからも遠目な閑静な住宅街にあるマンションです。
1974年竣工ですから、来年でちょうど50年の節目を迎えるヴィンテージマンションです。
なんでも、ここカーサ中目黒が田中俊郎としての最後の物件らしいです。この後の西麻布エスペランザビルから梵寿鋼として覚醒されたようなんです。
まだ、田中俊郎だからなのか、予算の関係なのか、遠慮があったのか、真意は計りかねますが、カーサ中目黒は、梵寿鋼建築の代名詞でもある装飾の大渋滞は起きていません。むしろ、装飾が綺麗に整列しており、目に優しくすっきりしています。
通常のマンションに比べれば装飾が多めな方ですが、梵寿鋼建築としてはとても整然としていて、ぱっと見梵寿鋼建築と気づかないくらいです。
まぁ、厳密にいうとまだ梵寿鋼が梵寿鋼になる前の建築なんですけれど。
装飾あれこれ
梵寿鋼建築は装飾の大渋滞が特徴ですが、その装飾というのは、単なる飾りではありません。
どの建築も立派な手技の光る工芸作品だったりするんです。
カーサ中目黒も他の梵寿鋼建築がそうであるように、さまざまな工芸的要素が詰まっていました。
モザイク
まず目にするのは、マンションの正面に堂々と掲げられたマンション名です。
▲マンションのロゴが、3色のカラーモザイクで表現されています。
その周りにあるフレームのアイアンワークもモザイクもとても手がこんでいますね。
ただ、モザイクよりも何よりも目がいくのは上部の筒状の焼き物です。サイケデリックというのか、個性的というのか、うまい言葉が見つかりませんが、マンションの装飾にしてはちょっと不思議度が高いです。
PR
テラコッタ
長さや太さがランダムな筒状の焼き物がマンションの塀から流れ落ちるかのように取り付けられています。
その有機的なフォルムがなんとも奇妙で面白いですね。
これらのテラコッタが一体何を表現しているのか、なんの意味があるのか、そんなことを問うてはいけません。
これが梵寿鋼建築なのです。
日時計
マンションエントランスの上部には、何やら棒状のものが突き出ています。
これはどうやら日時計のようです。
▲この細い階段を登って各住戸の入り口に向かいます。象徴的なつくりをしているのですが、割と急な階段です。
▲日時計の下はアーチになっていて、その天井にはガラスの照明?が吊り下がっていました。
この照明とても綺麗でした。また、階段を上がった先にもクロス状のアイアンワークが見えます。
PR
謎のキャラクター
筒状のテラコッタがびろーんと流れ出ている塀の上、植栽の下に何やらカタツムリのような石の彫刻が置いてあります。
このカタツムリはこのマンションのキャラクターなのでしょうか。
あ!そうか!ここにカタツムリということは、この筒状のテラコッタは、もしかすると雨を表現しているのかもしれませんね。
「そういうストーリーなのかぁ」としばし納得。でも雨とカタツムリというのが、本当に当たりなのかどうかは確認する術もありません。
バルコニー
全体を見てみましょう。
整然と並ぶアール描いたバルコニー、屋根の感じといい、これはスパニッシュ様式というのか、なんというのか。
強いていうなら南国やリゾートの風を感じる梵寿鋼様式です。
▲全体的に梵寿鋼建築にしてはとてもシンプルです。
▲門や下層階のバルコニーのアイアンワークにはらしさが炸裂しています。
何度も言いますが、他の梵寿鋼建築と比較すると、シンプルで飽きのこないデザインだと思いませんか。
初めてちょっと住んでみたいなと思いました。
そして、何よりもすごく大事にしていて、隅々まで手入れが行き届いているのがみてとれる、とても綺麗なマンションでした。
どこの梵寿鋼建築もそうですが、梵寿鋼先生に設計を依頼するくらいですから、建築に愛着があり、大事しているんだというのが伝わってきて、全く無関係な通りすがりの人間ですが、とても嬉しくなります。このことはどの梵寿鋼建築どこでも共通していることだと思います。
さぁ、次はどこの梵寿鋼建築をみに行こうかしら。
基本情報
カーサ中目黒
目黒区中目黒5丁目7−23 |