京都駅から地下鉄烏丸線で約20分。その終点であり駅名そのものが「国立京都国際会館」駅で降りると徒歩5分ほどでその荘厳な姿が見えてきます。
コロナによりしばらくはイベントホールを使用した会議やイベントは激減していたと思われますが、現在は少しづつ復活してきているようです。
訪問した日もホールは使用されていました。
国立京都国際会館
京都を代表するモダニズム建築である国立京都国際会館は、大谷幸夫の設計により1966(昭和41年)に竣工しました。
国立京都国際会館は、日本で最初の国立の会議施設です。1997年気候変動枠組条約に関する議定書が通称”京都議定書”と言われるのはこの場所で採択されたからです。
開館から56年の間に約20000件に及ぶ会議やイベントがこの場所で開催されてきました。
敷地は約156,000m2と広大です。その広大な敷地に本館、イベントホール等の会議、展示施設の他、宝ヶ池を臨む本館南西側には約23,000m2の日本庭園が設けられています。
1998年公共建築百選に選定され、1999年日本の近代建築20選に選定。この評価は2003年「DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に引き継がれています。
エントランス側
建築の特徴は、日本古来の合掌造りと現代建築の融合です。
合掌造りからインスパイアされているので、日本的で直線的な装飾がてんこ盛りの建築です。▲
この場所、なんかみたことある!という人はもしかしたら、それは円谷プロの名作ウルトラセブンかもしれません。
ウルトラセブンの第14話と15話「ウルトラ警備隊西へ」でキングジョーに襲われた六甲防衛センターのロケ地は実はここなんです。
車寄せとエントランスまでが広々なので、色々なゆとりがあります。▲
ん!これは丹下健三の名作香川県庁舎にも似たようなものを見た覚えがあります。▲
というのも大谷幸夫は丹下健三の右腕と言われ、丹下健三都市建築設計研究所で広島平和記念資料館や旧東京都庁者の設計を担当していました。
この上写真▲は丹下健三の傑作1958年竣工で2022年に県庁舎として初の重要文化財に指定された香川県庁舎です。国際会館の方が高台の部分が長細いですが、グラスのようなお茶碗のようなフォルムがよく似ています。誰かの作品なんでしょうか?
1960年まで丹下健三の元で働いていたので、無関係ではなさそうです。
正面の入り口です。入り口の両脇の壁のデザイン!▲
庭園
さぁ中の見学!と思ったのですが、平日はイベント関係者以外は中に入れないということがわかり、愕然としました。中もそうですが、庭園にも行けません。
ショックを受けていると受付の方が、宝ヶ池公園にまわれば外観を見ることができると教えてくれたので、早速行ってみました。広くて誰もいない公園は気持ちよかった。いい散歩コースです。▲
これが地名となっている宝ヶ池です。▲亀とか鯉が優雅に泳いでいました。
そして、公園側から見た庭園側の国際会館の姿。
宝ヶ池公園で見かけた野生の鹿!奈良だけではないんですね。びっくりしました。
実は2010年くらいから、宝ヶ池公園から国際会館の庭園に鹿が侵入してウメやツツジ類などの低木を中心にシカ食害による被害が発生し始めました。
そこで、2019年に庭園に鹿が侵入できないよう外周をフェンスで囲む工事が行われたということを後で知ったのです。確かに目撃した時もめちゃくちゃツツジを食べまくっていました。
レストラン「The Grill」
一般来館者は中に入れない日だったのですが、レストランThe Grillの利用は可能だということで、せっかくなので利用してみました。
入る前にラウンジなどは一切見えませんと言われましたが、本当に見えなかった。
剣持勇の家具がみたかったんだけれど残念!▲
おそらくここの家具は剣持勇ではないと思われます。しかし、天井の造作と照明が素敵でした。▲
60年代ぽいデザインの照明▲
ランチはすませてしまっていたので休憩がてら水分補給をしました。コースターが京都国際会館に来た証拠です。▲
見学するには
基本的には催事参加者以外は中に入ることはできません。施設と庭園を見学するには、一般来館者の方へICCkyotoカレンダーを確認してから訪問しましょう。
ICC OPEN DAYという日だけ施設と庭園を一般解放しています。
また、月に一度「建築の日」という建築に特化した特別見学ツアーが行われています。特別見学会は、10:30~/14:00~の1日2回1時間ほどのガイドツアーです。参加には事前予約が必要で、定員を超えた場合は抽選です。特別ガイドツアーに参加すると会場やホール内も見学することができます。
いつか建築の日に参加して今回のリベンジをしたいと思います。
自然との調和
台形・逆台形の空間の組合せで形づくる国際会館特有のデザインは、四角形の建築では、周囲の自然に対して異形のものが立ち現れたように感じられるため、自然との調和を考えた結果導き出された答えです。
周辺の山々の穏やかな曲線に対して、大会議場のスケールが大きいので、山肌に迫っていた議場の壁面を内側に傾け台形とすることで、必要な面積を確保しつつも建物のボリュームを削って、周辺の山々との調和を目指しました。
奇しくもお隣に1986年に竣工した村野藤吾のザ・プリンス京都宝ヶ池(写真奥)▲のコンセプトも周辺の豊かな自然との調和です。
しかし、そのデザインは真逆とも言えるものです。施設の機能が全く違うとはいえ、その対比が興味深く、面白かった。是非併せて建築見学をしてみてください。
基本情報
京都市左京区岩倉大鷺町422 MAP
アクセス:地下鉄烏丸線「国際会館駅」出口4−2徒歩5分
すぐお隣の村野藤吾設計ザ・プリンス京都宝ヶ池の記事はこちら▼
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