上野の公園口のランドマーク、東京文化会館はモダニズム建築の旗手である建築家の前川國男の設計です。
今回は、前川國男設計で東京のモダニズム建築の代表的な存在である東京文化会館を取り上げます。
前川國男は日本人で初めてル・コルビジェに師事した事も有名です。
また、自身が主催する前川國男建築設計事務所出身者にはあの丹下健三がいます。
これらのことからもわかるように前川國男は、戦前・戦後を通じて日本近代建築の歴史に大きな足跡を残した偉大な建築家なのです。
PR東京文化会館
東京上野の公園口を出て、最初に目にする建築が東京文化会館です。
その堂々たる姿は、素通りできない風格を携えています。
東京文化会館の竣工は1961年です。
会館には2300席の大ホールと国際会議としても利用される660席の小ホール、大小会議室と音楽資料室、レストラン、リハーサル室や楽屋など延床面積は、隣に建つ西洋美術館の5倍に相当する約21,000㎡という巨大な文化施設です。
そして東京都開都500年記念事業であるだけでなく戦後復興の象徴でもありました。
PR
打放しコンクリート建築
前川國男は東京文化会館をはじめとして1950年代後半〜60年代に多くの打放しコンクリート建築を手掛けています。
再整備が行われることになった世田谷区民会館・区庁舎(世田谷区役所)や京都会館(現在の京都ロームシアター)、弘前市民会館、神奈川県立青少年センターなどです。
その中でも東京文化会館は、前川國男の代表作と言っても良い建築です。
特にロンシャン礼拝堂を彷彿とさせるコンクリートの庇がめくれ上がったような大胆なフォルムは、ここで特別な時間を過ごすために訪問する人々を迎え入れます。
東京文化会館は、東京都交響楽団の本拠地であり、ウィーン国立歌劇場などの海外著名歌劇場が来日の際には必ずここで公演を行います。
ですからこの場所は、公演する側にとっても観る側にとっても特別な場所なのです。
前川カラー
前川國男には前川カラーと呼ばれる独特な色彩があります。
ここ東京文化会館においての前川カラーは赤と青です。
正面エントランスは赤ですが、国立西洋美術館側の入り口はブルーで塗装されています。▲
扉の取手は赤。この取手の形もとんでもなくかわいい。
この扉も赤と青▲
実は赤と青のように並んではいないけれど、文化会館には緑色の扉もあるという噂を聞いて探してみました。
ということで裏側に緑色の扉を発見しました。▲
内部の天井の低いところは赤です。▲
2階のレストランへ向かう螺旋階段は真っ赤▲
この真っ赤な螺旋階段は、東京文化会館のポイントの一つでしょう。
ちなみに楽屋にある螺旋階段は青です。
東京文化会館レストランについては▼
PR
天の川と落ち葉
正面エントランスから入ると夜空に見立てた濃紺の天井に星のようにランダムに配された照明が目に入ります。
この照明は天の川のイメージです。
ここは、文化会館の公演を観にくる人にとって非日常への入り口です。
星が瞬くような天井と硬質なコンクリートの柱の対比が高揚感を高めます。▲
4色、2種類のサイズのタイルで巧みに表現されているのは落ち葉です。▲
非日常を演出する文化会館のエントランスロビー空間は、頭上には天の川、足元には落ち葉なのです。
PR
惹かれる後ろ姿
前川國男建築は、顔である正面ファサードもいいのですが、意外と後ろ姿も惹かれます。
私は建築探訪に行ったら必ず背後にもまわります。
後ろ姿は、前面とは違った風合いがあります。
均一ではない目地割りやマチエールが特徴的な外壁の石積みなど見逃したらもったいない場所です。
国立西洋美術館
東京文化会館竣工の2年前の1959年にすぐ隣に位置する国立西洋美術館が竣工しています。
美術館の設計は前川國男の師であるル・コルビジェ設計です。
東京文化会館の設計には、このル・コルビジェ設計の西洋美術館の存在はとても大きく、多大な影響を与えています。
というのも、文化会館の軒高を対面の西洋美術館に揃え、ガラス窓の縦桟の位置は西洋美術館の前庭に引かれた床の目地にあわせて設計してあるのです。
目地とガラス窓の縦桟の位置に注目▲
今回の改修で竣工当時の目地に戻したということなので、縦桟とあっているはずです。
西洋美術館改修前は目地が見えません。▲文化会館の天の川のような照明が綺麗です。
国立西洋美術館は、ル・コルビジェが世界7ヶ国で手がけた17件の建築群の一つとして、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。
しかし、師弟の建築が向き合うように並んで建っているのは、世界中でここだけです。
そういう意味でもこの2つの文化施設はとても貴重な建築です。
同じ上野公園内にある前川國男設計の東京都美術館も一緒に見学することをお勧めします。
PR
基本情報
東京文化会館
台東区上野公園5−45 MAP |