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堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)の階段が美しい


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愛知県常滑市の「とこなめ陶の森」の中で最も古い施設で歴史ある建築「常滑陶芸研究所」へ行ってきました。この建築は、堀口捨己(ほりぐち・すてみ)が手がけた建築です。

愛知県に行くことがあったらぜひ訪ねたいと常々思っていた場所にこの夏ようやく訪れることができました。

実は、現在は誰も住んでいませんが、個人的にはルーツの地でもある常滑なのです。

<外観> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る
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旧常滑市立陶芸研究所はいつできた?

堀口捨己(1895-1984)の設計によって1961年に竣工しました。

<正門門扉> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

2014年にドコモモ・ジャパンに選定され、重要な近代建築であることが広く認識され、2023年には敷地内に入る正門と旧常滑市立陶芸研究所の二つが国指定の登録有形文化財に指定されました。

旧常滑市立陶芸研究所の建築は、建築家堀口捨己の晩年の代表作であると同時に日本の戦後モダニズム建築の傑作の一つでもあります。

<2階バルコニー>> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

旧常滑市立陶芸研究所誰が建てた?

常滑陶芸研究所は、伊奈製陶株式会社(のちの株式会社イナックス、現在はLIXIL)の創業者、故伊奈長三郎が常滑陶芸のために、伊奈製陶株式会社の株式15万株を常滑市に寄付したことから始まりました。

その資金で常滑市は、1961年(昭和36年)に本館やアトリエが建設され陶芸研究所が開設されました。

<正面入口 外壁はイナックスのカラコンモザイク張り> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

常滑といえば、イナックス(伊奈製陶)です。イナックスは、常滑の地で1921年に創業された老舗企業です。伊奈長三郎は、創業者伊奈初之烝の長男で個人経営だった伊奈製陶所を伊奈製陶株式会社から大企業イナックスにまで成長させた人物で、常滑市長も勤めた地元の名士であり大実業家です。

現在も常滑にはINAXラブミュージアムという焼き物に関する文化施設があり多くの人が訪れています。ここでは現在もイナックスの名前のままなのがなんだか嬉しいですね。

<屋上> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る
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旧常滑市立陶芸研究所どんな建築?

とにかく素晴らしい建築です。今まで名古屋に幾度となく訪れていたのに、ここになぜこの建築を見にこなかったのだろうかと後悔するくらいです。

<扉を閉めたところ> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

▲正面入り口の扉を閉めると、取っ手周りに金の月のような意匠が施されています。紫と金で上品かつ非常に日本的なデザインです。非常にモダンでありながらも日本的。

紫色のガラスブロックは柔らかい光を内部に届けます。

常滑陶芸研究所は、造形的にもマテリアルにも相当凝っているのですが、色も注目のポイントです。

紫、金、銀の独創的な色使いには驚嘆させられました。

<屋上> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

▲ちょうど展示室のトップライトが飛翔する翼のような造形です。

このようなトップライトのデザインは堀口捨巳設計の明治大学生田校舎でも見られます。

<美しすぎる階段> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

大きな庇や美しい天井など魅力がいっぱい詰まった建築なのですが、中でも特筆すべきは端正な片持ち階段です。天井のデザインを含めて、その佇まいの美しさはため息が出ます。

この階段を見るために東京から出向いたと言っても過言ではありません。

まるでアルネ・ヤコブセンの遺作、ナショナルバンク(デンマーク国立銀行)にある美しい彫刻のような階段を彷彿とさせます。というのもヤコブセンの階段の赤いスチールワイヤーのような天井からスッと引かれた1本の線のような支柱。あぁ痺れますね。

きっと竣工時はもっと金色だったのでしょう。金色に輝く彫刻のような階段。

<2階> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

▲1階のエントランスの正面の吹き抜けには彫刻のような階段があり、その向かい側にあるのがこの空間です。

椅子もテーブルも堀口デザインの当時のもの。現在、座ることは禁止されていますが、貴重な当時の家具が残っているのは嬉しいですね。

<カラフルな取手> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

応接にあるテーブルやエントランスにある机など堀口デザインの家具がたくさん残されています。これらはほとんどが現役なのがすごいです。(一部座れない椅子あり)

また、建物正面入口の扉の取手周りの金の意匠だけでなく、ほぼ全ての扉の取手が竣工時のもの。黄色や青、赤などその扉の先の部屋の用途ごとに色分けされているそうです。

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旧常滑市立陶芸研究所何がみられる?

1階に展示室があります。

ここでは平安時代末期から鎌倉時代の古常滑の大甕から、江戸時代以降現代までの名工が作った作品の数々の展示が見られますが、常時展覧会を開催しているわけではありません。

<展示室のトップライト> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

基本的に隣接する資料館で常滑焼の歴史などの常設展示を見ることができます。

陶芸研究所の展示室で展示があるのは、資料館と同時開催する企画展などの時だけのようです。

私が訪問した時は陶芸研究所の展示室での展示はやっていませんでした。しかし、見学の届けを出していたので、特別に内部を見学させてもらうことができました。入ってびっくり!その空間は全て銀色なんです。

<銀色の展示室> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

▲天井のトップライトからの光を受けて、銀色に輝く展示室。

1960年代にこのソリッドさ!カッコ良すぎる。この空間もヤコブセンのナショナルバンクみを感じました。

しかし!ヤコブセンのナショナルバンクよりこちらの方が10年も前に竣工しています。

え?まさかのヤコブセンがこっちを….?!

<パネル展示> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

▲2階には堀口捨巳についてのパネル展示があります。

また、茶室の研究家でもあった堀口捨巳の茶室を1階応接間の奥で見ることができます。

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旧常滑市立陶芸研究所どこにある?

常滑駅からタクシーで向かいました。タクシーを使えば5分ほどで到着します。

常滑駅から徒歩で向かうと上り坂なので、30分かかるようです。

行きはタクシーで向かい、帰りは常滑の街を散策しながら、INAXライブミュージアムに立ち寄り、常滑のマスコット「とこにゃん」をみて常滑駅まで戻りました。おすすめは行きはタクシー、帰りは歩きです。

<応接室 丸テーブルは堀口デザイン> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

旧常滑市立陶芸研究所のポイント

・行きはタクシー、帰りは散策しながら歩いて常滑駅へ

・見学するなら事前にとこなめ陶の森見学依頼書を提出すると展示室などを見せてもらえる

・階段と天井は垂涎もの

・金銀紫の色使いに注目!

・椅子や机、取手にも注目!

<堀口デザインの現役の机> 堀口捨己設計 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所) 写真:建築とアートを巡る

基本情報

とこなめ陶の森 陶芸研究所(旧常滑市立陶芸研究所)

開館時間:9:00〜17:00

休館日:月曜日

入場料:入場無料

住所:愛知県常滑市奥条7丁目22  MAP

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