軽井沢に2023年7月29日にオープンした「リヒター・ラウム/Richter Raum」を早速訪問してきました。居ても立ってもいられず、オープン初日の開館時刻11時という真っ先の訪問です。
リヒター・ラウムは六本木のピラミデにギャラリースペースを持つ「ワコウ・ワークス・オブ・アート」が運営するゲルハルト・リヒター/Gerhard Richterだけを見せる特別な空間です。
訪れてみて初めてわかったリヒター・ラウムの筆舌に尽くし難い素晴らしさを綴りたいと思います。
また、リヒター・ラウムはどんな場所なのか、リヒター・ラウムで何がみられるのか、リヒター・ラウムはどこにあるのか、などなど訪れる前に読んでおくと便利な情報もあわせてレポートします。

リヒター・ラウムってなに?
リヒター・ラウム/Richter Raumは英語だと リヒタールーム/Richter Roomですから「リヒターの部屋」という意味です。
そこは、ケルンにあるアトリエ・リヒターにそっくりな空間で、リヒターの作品を心ゆくまで堪能することができる特別な部屋。
ゲルハルト・リヒター美術館、ゲルハルト・リヒターミュージアムとも言えますし、ゲルハルト・リヒターギャラリーでもあり、ゲルハルト・リヒターのアトリエでもあるんです。

▲展示している作品は今後展示変えされる予定ということなので、リヒター好きにとってはリピート確定です。

▲初めての秋を向かえたリヒター・ラウム。
リヒター・ラウムの空間
リヒター・ラウムは天井高3.4mのエントランス空間(Raum1)、その隣に展示室(Raum2)、その更に奥にスタッフオンリーのオフィス(Raum3)が横並びになっています。
そして、エントランス空間の正面には天井高5mの空間(Raum4)が配置されており、全部で4つの部屋で構成されています。

この建築は、リヒターのアトリエ(アトリエ・リヒター/Atelier Richter)を少しだけ縮小して、一部をそっくりそのまま模して建設されています。
ケルンへ行くことは出来ても、一般人がリヒターのアトリエを訪問するのはまず不可能でしょう。
しかし、ここ軽井沢のリヒターラウムなら気軽に訪れることができるのです。

リヒター・ラウムのエントランス(Raum1)の真正面からRaum4に展示された「Grey Mirror」の作品が見えて、訪問者の高揚感はマックスまで高まります。
「Grey Mirror」には自然豊かな軽井沢の緑を背景とした自分の姿が映り込み、都会の美術館では絶対に体験できない現象を目の当たりにすることになるからです。
東京の美術館でリヒターの作品に風に揺れる木々が映り込むなんてあり得ませんから。
また、特別なのはそれだけではありません。
リヒター・ラウムの空間全体にケルンの森に来たような(行ったことありませんが)夏の軽井沢とは思えない静謐な空気が漂っています。
無理矢理例えるなら、質のいい真っ白なシャツを着て襟を正して静かに1人で鑑賞したくなるような場所です。(伝わりますでしょうか)

リヒター・ラウムの作品
リヒター・ラウムには、ゲルハルト・リヒター財団所蔵作品とワコウワークスオブアート所蔵作品、つまりリヒターのマスターピースとも言える作品が展示されています。
それらの作品は屋内の展示室だけでなく、なんと!庭に設置されていて、その屋外作品も鑑賞することができます。

Strip Sculpture Karuizawa
なんといってもリヒター・ラウムでみるべき作品は「Strip Sculpture Karuizawa/ストリップスカルプチュア軽井沢」です。
この作品は、リヒター・ラウムのためのリヒターの最新作で、ここでしかみることのできない唯一無二の超大型作品です。

Strip Sculpture Karuizawaをみられただけで、ここに来てよかった!と思える作品ですし、これを鑑賞するためにまた訪問したいと思わせる作品です。
室内に展示されているSTRIP 927-10と同じ技法で制作されたSTRIP 8枚がガラスでカバーされ十字型に設置されています。

その高さはなんと5mもあります。
Strip Paintigは線が水平(横縞)ですが、「Strip Sculpture Karuizawa/ストリップスカルプチュア軽井沢」の線は垂直(縦の縞)になっています。
それがまたとても新鮮であり、屋外にあるせいもあって、まるで天から降りてきたかのような、はたまた地上から天に舞い上がるような躍動感があって、思わず見上げながら声が出てしまいました。

訪問時は、よく晴れた夏の日だったのでリフレクションが強めでした。

見る位置によって、周りの樹々や空の青、そしてリヒター・ラウムの白い壁が映り込み様々な表情をみせてくれます。
これは、時間帯や季節を変えて何度か訪問してその変化を体験したくなる作品です。
紅葉の季節はもちろん、雪の中の風景なんて格別でしょう。

実はこの作品、90歳を超えているため作者であるリヒター自身はまだ見てはいないそうです。
高齢なので来日して実物を見る日が来るのかどうか‥。

▲私たちが最初に訪問したのは夏でしたが秋の紅葉シーズンになると周囲の木々も色づいて、また異なった印象です。
本当に何度も訪れたくなる場所です。
(画像はワコー・ワークス・オブ・アート様から提供いただきました)
8枚のガラス/8 Glass Panels
建物の外からもガラス戸をとおしてチラっと見えるのは、東京国立近代美術館の「ゲルハルト・リヒター展」でも展示されていた「8枚のガラス」です。
この作品はこれまでに何度も鑑賞していますが、まるで、リヒターのアトリエで鑑賞しているような気持ちになれるので、1番空間とマッチしていると感じました。
そもそもこの場所がリヒターのアトリエの再現ですから、どの作品をみても一番しっくりくるのは当然のことではあります。
また、紹介した大型作品以外にアブストラクトペインティングなどの平面作品と1992年のステンレスの球”Sphere”などをみることができます。
WAKO WORKS OF ART / ワコウ ワークス オブ アート
リヒター・ラウムを作ったのはワコウ・ワーク・スオ・ブアートというギャラリーで、1992年に和光清さんが創設した現代美術のプライマリギャラリーです。
開廊当初は初台にスペースがあり、現在は六本木のピラミデ3Fにスペースがあります。
ワコウ・ワーク・スオ・ブアートと言えば90年代からリヒターで、リヒターと言えばワコウ・ワーク・スオ・ブアートです。
90年代は今ほどリヒターがみられる機会がなかったので何度か初台まで足を運びました。
また、ワコウ・ワーク・スオ・ブアート発行の市原研太郎さんによるリヒター論は鮮烈で、ゲルハルト・リヒターといえばワコウ・ワーク・スオ・ブアートでステイトメントは市原研太郎だったと記憶しています。
和光さんにはいつか「私にゲルハルト・リヒターの素晴らしさを教えてくれてありがとうございました」とお伝えしたいくらいです。
ワコウ・ワーク・スオ・ブアートは、なんといってもリヒターではあるのですが、先日も個展に2回ほど足を運んだフィオナ・タンやミレアム・カーン、ヴォルフガング・ティルマンスなど静かで知的でとても洗練されたアーティストの作品を日本に紹介しています。

リヒター・ラウムの見学
リヒター・ラウムは誰でも有料で見学可能です。
ただし、中学生未満の方は入場できません。
おそらく子供が触ってしまう危険がある展示だからだと思われます。

リヒター・ラウムの鑑賞時間の目安
私が訪問した時は屋外作品含めて大小16点の作品の展示でした。
ですから、30分くらいあれば鑑賞は可能です。
解説パネルなどがあるわけではないので読むものはありません。
ただひたすらに作品鑑賞をする空間です。
とてもゆっくり鑑賞しても予約枠は30分なので鑑賞時間は最大30分ということになります。
リヒター・ラウムの写真撮影について
リヒター・ラウムは室内の写真撮影は禁止です。
ただし、屋外作品の撮影は可能です。

リヒター・ラウムの入館料
リヒターラウムの入館料は1,200円です。
ただし、中高生は無料でそれを証明する書類(免許証や学生証など)を見せる必要があります。
どちらにも私は当てはまりませんが、素敵な優遇ですね。
リヒター・ラウムの予約
リヒター・ラウムは完全予約制で1ヶ月前から予約可能です。
事前にWeb予約をしてから訪問しましょう。
予約には徒歩と車とアクセス方法別の予約枠があります。特に車の場合は駐車場が3台分しかなく一つの予約枠で3組までしか予約できません。遠方から車での訪問を計画しているなら早めの予約をおすすめします。
私が訪問した時間帯は予約枠は徒歩も車で全て埋まっていましたが、同枠で鑑賞したのはだいたい10人くらいだったと思います。
ですから、ゆっくりじっくり堪能することができるように予約枠の人数は配慮されていると感じました。
リヒター・ラウムの場所
軽井沢の旧中山道、離山通り沿いにあります。

▲道路沿いに出ているこの控えめな看板が目印です。車で行く場合は見落とさないよう注意が必要です。
軽井沢駅から徒歩で向かった場合、こんな感じで見えてきます。
リヒター・ラウムの行き方
リヒターラウムは、軽井沢駅から徒歩で約20分くらいです。
季節の良い時期なら歩いて行っても気持ちいいかもしれません。
軽井沢駅からタクシーだと約6分ほど到着できます。
車の場合は旧軽井沢と国道18号離山交差点を結ぶ通称 ’離山通り” 沿い。離山交差点から500mほど旧軽方面に行った場所です。逆に旧軽井沢側からの場合は六本辻のラウンドアバウトから1kmほど中軽井沢方面へ行ったところです。
リヒター・ラウムの駐車場
リヒター・ラウムには車3台分の駐車場があります。逆にいうと3台分しかありません。
駐車場に車を停めて見学するためには「車での訪問予約」をする必要があります。
駐車場予約枠は少ないので早めに予約をとっておきたいところです。
ワコウ・ワークス・オブ・アートが作った軽井沢の筆舌尽くし難いリヒター・ラウムはリヒター好き現代美術好きにはたまらない場所です。
美術館では味わえないゲルハルト・リヒターの愉悦に浸れる時間を過ごすことができる唯一無二の空間を満喫してきました。
そして、季節や時間を変えて再訪したいと思います。
基本情報
リヒター・ラウム /Richter Raum「R」
事前予約制 webから要予約 (徒歩か車か指定して予約) 開館日:木金土日曜日(シーズンによる) 入館時間:午前は10:30から11:30、午後は13:30から15:30まで30分ごとの入館枠 入館料:一般 1,200円 大学生 800円、中高生無料(中学生未満入場不可) 住所:長野県軽井沢町軽井沢1323-1475 MAP アクセス:軽井沢駅から徒歩約22分。軽井沢駅から西武観光バスでトンボの湯行乗車または町内循環バス内回り乗車、泉の里バス停下車徒歩約2分 軽井沢駅からタクシーで約6分 車の場合:旧中山道、離山通り沿い、レジーナリゾート旧軽井沢の向かい側 |
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