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東京都内建築巡り <白金台 1> 隈研吾設計 瑞聖寺/ずいしょうじ


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白金台周辺には新旧さまざまな建物がありますが、その中で特筆すべき2つの建物にスポットを当てた建築巡りを2回に分けて紹介します。

1回目は隈研吾設計の「瑞聖寺庫裡/ずいしょうじくり」です。

隈研吾設計 瑞聖寺庫裡/ずいしょうじ・くり

白金台の瑞聖寺(ずいしょうじ)は隠元和尚によって中国より江戸時代に伝えられた禅宗の一宗派で、黄檗宗の東京の中心寺院です。創建は1670年。

その再建を手がけたのが泣く子も黙る?!隈研吾です。

2020年に創建350年を迎えるにあたり、その記念事業の一環として築50年になり老朽化していた旧庫裡を改築しました。瑞聖寺庫裡/ずいしょうじくりの竣工は2018年11月です。

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競合はアーティストだった

現代美術に高い関心がある現住職は、改築のアイディアを高名なアーティストと隈研吾で競わせたそうです。

高名なアーティストって誰でしょうね。それが誰であったかは明かされていませんが、隈研吾と競うってことはかなりの方である事は間違いないでしょうね。そのアーティストが日本人なのであれば、建築も手がけるアーティストって、、、だいたいの見当がつきますね。

その結果は、ご覧の通り隈研吾の計画が採用されたわけですが、昨今は建築家どうしの戦いではなく「アーティストvs建築家」という構図の競合関係が珍しくなくなりました。今や職種という境界がなくなってきているわけですね。

そこで、競合相手が建築家ではなくアーティストであったことから、改めて「建築家の存在意義」について重きを置いたプレゼンテーションをしたそうです。戦い方としてはそうならざるを得ないですよね。

岸田日出刀の墓

隈研吾にとって瑞聖寺には、建築家として注目すべき点があって、それは岸田日出刀の墓があることでした。岸田日出刀というのは、東京大学安田講堂の設計を内田祥三と一緒に手がけた建築家です。

自身も東京大学建築学科(当時は東京帝国大学工学部建築学科)出身で1929年から1959年まで、実に30年間母校の東京大学建築学科の教授を務めました。主に建築意匠設計教育に携わり、東大建築学科の岸田研究室出身者には、あの丹下健三や前川國男をはじめ、立原道造、浜口隆一、浅田孝らがいます。

また、建築家であり、建築学者でもあったので多くの著書を遺しています。その中でも今回の瑞聖寺庫裡の設計にあたり隈研吾は「過去の構成」(1955年刊行)を強く意識して設計を行ったそうです。

パブリックを最大化

完成した瑞聖寺は、水の庭を取り囲むようにコの字型に庫裡を配した回廊型の構成となりました。そこには、建築家として「いかにパブリックな空間を最大化できるか?」ということへの挑戦が見て取れます。

アーティストと建築家の職種がボーダレスになってきているからこそ「パブリックに対する高い意識」が現代における建築家としての存在意義であるという事を具現化したのが瑞聖寺庫裡です。

▲コの字型の水の庭は、その名の通り水盤としてデザインされています。その中央に、水に浮いたような、月台ならぬ舞台のような空間があるので、何かここでイベントが開催されたら是非見に行きたいです。

水庭の木に青々とした葉がついている季節の写真▼

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大雄宝殿は重要文化財

 瑞聖寺大雄宝殿(ずいしょうじ・だいおうほうでん) は、1992円に国指定重要文化財(建造物)に 指定されました。

黄檗宗は、江戸時代になって現在の中国から渡ってきたもので、月台と呼ばれるテラス状の張り出しや、開梆と言う外に吊るされた木魚、正面中央の桃の彫刻がついた腰扉など、それまでの日本の寺院建築とは異なる意匠が目を引きます。

銀杏が綺麗に黄色くなった秋の訪問時の写真。逆さ富士ならぬ逆さ大雄宝殿です。見事です。▼

他にも二重屋根で、正面と背面に外廊下のような吹放し部分を設けることや、丸窓を多用することなども特徴です。そう意味で江戸に残された数少ない本格的な仏堂建築としてとても貴重な寺院です。

改築前の境内は、庫裡のボリュームがこの大雄宝殿と同等にあったので、大雄宝殿の荘厳さが薄れていた印象ですが、今回の改築で伽藍配置を再考し、庫裡はパブリックスペースを大胆に取り入れ水の庭を中心とした回廊型にしたことで、大雄宝殿の凛々しさ、荘厳さが引き立ちます。

見学について

お寺ですから開門していれば誰でも境内に入ることが可能です。

ただし通常は庫裡の中の見学はできません。大雄宝殿や水の庭とその周りの回廊などは自由に行き来できるので、建築巡りとしては十分です。

いつか内部の見学の機会があるといいなと淡い期待をしていますが。

四季折々の表情

境内には桜の木があるので春にはこのような風景が見られます。▼

住んでる場所から近いところにあるので、これまでに季節を変えて何度も訪問しています。晴れの日には水盤に映る青空と大雄宝殿の実像とリフレクションが逆さ富士を見ているかの如く荘厳で神々しいです。

雨の日にはきっと水盤に落ちる雨の雫が円を描いてゆらめく水面が美しいことでしょう。雪の日もきっと目を見張るような表情が見られるはずです。

隈研吾が建築家の存在意義をかけてチャレンジした「最大化したパブリック空間」のおかげで、ほぼ無宗教に近い私でも気兼ねなくついつい何度も足を運びたくなる開けた寺院となりました。

基本情報

紫雲山 瑞聖寺

開門時間:9:00~16:30

住所:港区白金台3-2-19 MAP

アクセス:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅徒歩1分

白金台の駅から目黒通りを清正公前(せいしょうこうまえ)の方に歩いて「日吉坂上」の信号の一つ手前、歩道橋の下の路地の奥が瑞聖寺です。すぐ近くにパーキングもあるのでクルマでの訪問も大丈夫です。

建築巡り白金台2も合わせて参照ください。▼

 

瑞聖寺からほど近い場所の紅葉散歩(白金台編)も合わせて参照ください。▼

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