千代田線乃木坂駅直結の国立新美術館で3月19日から開催されている《リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s》展を見てきました。

《リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s》
この展覧会は、国立新美術館が開催のための資金の一部をクラウドファンディングで集めて実現した展覧会でもあります。
展覧会タイトルにある通り、1920年代から1970年代の「住まい」すなわち住宅を中心とした、建築、インテリア、家具の歴史を紐解く展覧会です。
国立新美術館の1階の企画展示室Eとさらにその上階の2E展示室の2つの展示室を使った大規模な展覧会です。
建築好きだけでなく、インテリア、家具、工芸、デザインなどが好きな方に刺さる内容となっています。また、デザインを語る上では欠かせないのがドイツのバウハウスの存在です。この展覧会でも当然触れられています。
同時に東京都庭園美術館で開催されている《戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見》展も合わせて鑑賞するとグラフィックデザインの側面からもバウハウスについて知ることができるのでおすすめです。

《リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s》展覧会構成 1階展示室
住宅建築の傑作14邸を中心に、展覧会は7つの章で構成されています。この14の住宅と7つの章がリンクしている構成です。
明確な順路も壁面によるエリア分けもありません。ひとつの展示室全体でそれぞれが混じり合いながら展示されています。

住宅建築の傑作14邸
1)ル・コルビュジエ : ヴィラ・ル・ラク 1923年
2)藤井厚二: 聴竹居 1928年
3)ミース・ファン・デル・ローエ: トゥーゲントハット邸 1930年
4)ピエール・シャロー: ガラスの家 1932年
5)土浦亀城: 土浦亀城邸 1935年→詳細はこちらの記事を参照ください。
6)リナ・ボ・バルディ: ガラスの家 1951年
7)広瀬鎌二: SH-1 1953年
8)アルヴァ・アアルト: ムーラッツァロの実験住宅 1953年
9)ジャン・プルーヴェ: ナンシーの家 1954年
10)エーロ・サーリネン、アレキサンダー・ジラード、ダン・カイリー:ミラー邸 1957年
11)菊竹清訓、菊竹紀枝: スカイハウス 1958年
12)ピエール・コーニッグ: ケース・スタディ・ハウス #22 1959年
13)ルイス・カーン: フィッシャー邸 1967年
14)フランク・ゲーリー: フランク&ベルタ・ゲーリー邸 1978年▼

7章の構成
1)衛生: 清潔さという文化
2)素材:機能の発見
3)窓:内と外をつなぐ
4)キッチン:現代のかまど
5)調度:心地よさの創造
6)メディア: 暮らしのイメージ
7)ランドスケープ: 住まいと自然
1階展示室の貴重な資料、模型、家具類は前澤友作コレクションをはじめ、国立工芸館、豊田市美術館、大阪中之島美術館など国内の美術館からのもの、竹中工務店やミサワホームなどの企業が所蔵しているもの。そしてNY近代美術館やアルヴァ・アアルト財団など海外からも貴重な資料が来日しています。

《リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s》私のおすすめはこれ!
1階展示室で私がおすすめしたいのが、アメリカのデザインスタジオDiller Scofidio + Renfroの映像作品です。展示室奥の暗幕がかかる唯一仕切られた暗い空間にあるインスタレーション作品です。
撮影禁止のためビジュアルはありませんが、ピエール・シャローのメゾン・ヴェールで撮影した映像と図面を用いたインスタレーションです。
床には大きな平面図があり、四方に映像が流れる仕組みになっています。
平面図の上をスキャンするかのように赤いレーザーが前後に移動します。レーザーが止まった時、その赤いレーザーが示す場所の断面図が2箇所の映像で示され、その場所に人が実際に居る様子がもう2箇所の映像で流れます。
拙い文章のせいで何を言ってるのかわからないと思いますが、ぜひじっくり鑑賞することをおすすめします。
展示室には特に解説がないため、意味不明と判断してすぐに部屋を出て行く人が多かったのですが、もったいない!
このインスタレーションは全部見ると17分です。
《リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s》展覧会構成 2階展示室(無料)
2階の展示室はなんと入場無料で誰でも鑑賞することができます。
この2階の展示室にクラウドファンディングで資金を集めたこの展覧会の見どころの一つ、近代建築の巨匠ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエの未完のプロジェクト「ロー・ハウス」の原寸大展示があります。
なんと原寸大での実現は世界で初めて!まさかミース・ファン・デル・ローエ自身もこれまで実現したことのなかった「ロー・ハウス」の原寸大模型を日本が最初に実現させるとは夢にも思わなかったでしょうね。
原寸大の「ロー・ハウス」には当然ながら、ミース・ファン・デル・ローエがデザインした最も有名な椅子バルセロナ・チェアが置かれています。
奥のダイニングセットの椅子以外は自由に座ってOKです。
「ロー・ハウス」原寸模型では朝から夜までの1日の光の変化を表現した演出もあります。▼
そのほかに2階の展示室には、「ロー・ハウス」と時を同じくしてデザインされた、名作家具が体感できるコーナーやVRコーナーがあります。

名作家具コーナーはB&B Italia、Carl Hansen & Søn、Cassina、Karimoku Case、Marcenaria Baraúna、Molteni&C、TECTA、Knoll、YAMAGIWAの家具が出展されています。ここは家具のショールームまたはコンベンションセンターでの展示会のようです。
VRコーナーでは何がみられるかというと、1階展示室でも紹介されていた電動で開閉する天井高いっぱいのガラス窓が特徴的なミース・ファン・デル・ローエの「トゥーゲントハット邸」と、展覧会場入口にもあった水平連続窓で知られるル・コルビュジエの「ヴィラ・ル・ラク」の内観の一部が見られるます。
ただしVRは毎日体験できるわけではありません。直近だと3月22, 23日、29, 30日の土日のみです。体験に要する時間は20分ほど。
これら全てが無料です。
《リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s》ミュージアムショップ
展覧会場最後にミュージアムショップが特設されています。
ミュージアムショップも小規模ですし、売っているものの数も多いとは言えません。今後グッズが増えるのか、このままなのかも不明です。

▲展覧会図録は3,850円(税込)です。

▲オリジナルグッズのTシャツ

▲トートバッグ。展覧会のオリジナルグッズは図録、Tシャツ、トートバッグの3点のみのようです。
そのほか、関連書籍や葉書などがありました。現時点ではレジは1台という規模でした。現金、電子マネー、カードなどが使えます。
《リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s》展を見に行くなら
<写真撮影について>
1階展示室は基本的に撮影禁止です。
一部写真撮影可能マークが掲示されているものだけが撮影可能です。どういうものが撮影可能かというと主に模型です。

住宅の模型と一部家具、そして藤井厚二 聴竹居▲と広瀬鎌二 SH-1 は撮影可能です。
ジャン・プルーヴェやミースなど模型も資料も全て撮影NGな場合もあるので、その都度撮影可能かどうか確認する必要があります。

2階の展示室は写真撮影可能です。
<映像>
1階展示室では資料映像、インタビュー映像、インスタレーション作品があります。
古いモノクロ映像からドローンを用いた最新映像までモニターのサイズもバラバラです。それぞれの作品の長さは次のとおりです。
ル・コルビジェ(1:33)
ミース・ファン・デル・ローエ (7:32)
スカイハウス( 12:17)
藤井厚二( 6:09)
フランク・ゲーリー ( 3:12)
アレクサンダー・ジラード( 5:16)
J.アーウィン・ミラー:リーダーの横顔 (11:29)
短編ドキュメンタリー映画:フランクフルト・キッチン( 7:43)
インスタレーション:メゾン・ド・ヴェール (17:26)
総再生時間は72:37です。全部鑑賞すると映像だけで1時間以上かかる計算です。
<鑑賞時間の目安>
映像だけで72分です。さらに資料や解説パネルなど読み物もたくさんあります。じっくりみたいのであれば1階の展示室だけで2時間はみておきたいところです。
さらに2階の展示、VRも体験することを考慮すると3時間は考えておいた方が良いでしょう。

混雑状況
平日の夕方に足を運びました。それでも決して「空いている」とは言えません。この状況から察するに、土日と会期終盤は混雑必至です。
まず、なるべく平日に行くこと。事前にオンラインでチケットを購入することをお勧めします。
土日に行く場合はオンラインチケット購入は必須です。
国立新美術館について▼
基本情報
ビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s
会期:2025年3月19日(水) ~ 6月30日(月) 休館日:火曜日 (4/29と5/6は開館し、5/7は休館) 時間:10:00~18:00 (金土曜は20:00まで) チケット・料金:一般 1,800円、大学生 1,000円、高校生 500円 国立新美術館 企画展示室1E 港区六本木7-22-2 MAP |