建築とアートを巡る®︎が日本橋から竹橋まで実際に巡りながら名建築やパブリックアートを紹介します。
出発点は武田清明設計のファサードが独創的なホテル、ゴールは竹橋の「東京国立近代美術館」まで。
普通は人形町・日本橋と竹橋の間は地下鉄東西線で移動するのでしょうが、実は距離にして2Kmちょっと。徒歩で40分くらいなので都心のお散歩ととしてちょうど良い距離です。でも多くのパブリックアートを見ながら歩くので実際に歩くと1時間以上かかります。
<SOIL Nihonbashi Hotel>
武田清明
スタートは人形町の「SOIL Nihonbashi Hotel」から。
気鋭の建築チーム「武田清明建築設計事務所」による建築デザインで2025年秋にオープンした新しい建築です。
赤い帯を巻いたようなベランダが特徴的。
ホテルのエントランスから客室のベランダまで植栽だらけ。
この地域には昔から植物の株分けの習慣があり、それをリスペクトしてホテル棟にも多様な植物を配置しているそうです。
武田清明はこのような建築と植物さらに土を巻き込んだ建築を得意としています。石神井の武田清明建築設計事務所が入る建物も同様なので、機会があったらそちらも見に行くと良いでしょう。
基本情報
| SOIL Nihonbashi Hotel
開業:2025年 住所:中央区日本橋人形町3−2−4 MAP |
<Pizza Tane>
SOIL Nihonbashi Hotelの1Fには「Pizza Tane」というピッツェリアが入っています。
ホテル宿泊者でなくても利用できますし、テイクアウトにも対応しています。
奥がSOURDOGといってサワードウピザ生地を使ったホットドッグ、手前はトマトのピザです。
ただ人形町は隠れたグルメタウン。例えばハンバーガーの超有名店「BROZERS'(ブラザーズ)人形町本店」などの名店でランチしてからスタートするのもありですね。
基本情報
| Pizza Tane
開業:2025年 営業時間:11:30 – 14:30、18:00 – 21:00 住所:中央区日本橋人形町3−2−4 MAP |
<日本銀行本店 本館>
辰野金吾
SOIL Nihonbashi Hotelを西の方に歩いて昭和通りを渡って中央通りを渡って三越日本橋本店を過ぎたところで右に曲がると通称「日銀通り」です。そのまま進めば左手に「日本銀行本店」が見えてきます。
明治期の日本建築界の第一人者、辰野金吾の東京駅と並ぶ代表作がこの日本銀行本店です。
場所が場所だけに一般人は立ち入ることもできませんし、敷地内からの撮影もNG。道路から眺めるだけですが、それでも建物の荘厳さに圧倒されます。
基本情報
| 日本銀行本店
設計:辰野金吾 完工:1896年 (明治29年) 住所:中央区日本橋石町 2-1-1 MAP |
<陽甲>
清水久兵衛
日銀からさらに西へ。常盤橋を渡って朝倉文夫の「渋沢栄一像」とか現代アートの「CADAN大手町」を片目に通り過ぎ、JRの高架をくぐると今度は大手町エリアです。
大手町プレイスの脇に設置された赤色が目立つ彫刻は、彫刻家で陶芸家でもある清水久兵衛(きよみず・きゅうべえ)の《陽甲》。
もともと別の場所にあったものが10年ほど前にこの場所に移設されてきました。
清水久兵衛の作品は都庁や横浜の伊勢佐木町、神奈川県立近代美術館葉山館など意外と多くの場所で目にしますね。
基本情報
| 陽甲
作者:清水久兵衛 制作:1992年 住所:千代田区大手町2-3-2 MAP |
<SUNDIAL>
杉本博司
《陽甲》のある大手町プレイスの西側、通称「大名小路」沿いに高くそびえるのが現代芸術家、杉本博司の《SUNDIAL》です。
正月の箱根駅伝で復路のゴールへ向かう最後の交差点角に立っていますから現地やTVで目にしたことがあるかもしれません。
2018年ですから比較的最近の作品です。
数理模型シリーズの一つで高さは12m。
先端は尖ったように見えますが理論上はけっして交わることのない曲線。
SUNDIALという作品名のとおり、日時計としても機能します。
残念なのは ”スケートボード禁止” で無粋に囲まれていること。近所のキッズたちが夜な夜な・・・といってもこの辺りに住むキッズは数えるほどでしょうから、深夜にわざわざ遠方から滑りに来るんでしょうねぇ、ダサいなぁ。
基本情報
| SUNDIAL
作者:杉本博司 制作:2018年 住所:千代田区大手町2-3-1 MAP |
<イリアッド・ジャパン>
SUNDIALと大名小路を挟んで向かいの「大手町サンケイビル」の敷地に設置された赤くて大きなオブジェはウクライナ生まれのアメリカ人、アレキサンダー・リーバーマンの《イリアッド・ジャパン》という作品。
イリアッド(Iliad)とは古代ギリシヤの詩人ホメロスの叙事詩Iliadのこと。日本では「イリアス(イーリアス)」と表記される作品です。
ブラッド・ピットが英雄アキレスを演じた映画「トロイ」の原作でもあります。
このようなタイトルの作品がバブル期にサンケイグループの拠点に設置されたことは何か予言的でもありいろいろ深い意味を考えたくなりますね。
基本情報
| イリアッド・ジャパン
作者:アレクサンダー・リーバーマン 制作:1987年 住所:千代田区大手町1-7-2 MAP |
<星のや東京>
「イリアッド・ジャパン」の先の交差点を左に進むと星野リゾートのラグジュアリーホテル「星のや 東京」が見えてきます。
「塔の日本旅館」を標榜する星のや東京は、キラー通りに自宅兼事務所として「塔の家」を建てた建築家、東孝光(あずま・たかみつ)の娘で、星野リゾートの設計を多く手がけてきた東利恵(あずま・りえ)の設計による都市型ラグジュアリー。
星のや東京の脇道は仲通りになっていてパブリックアートがいくつか設置されています。
また星のや東京にはあの立ち食いそば屋の「港屋2 (Miyatoya 2)」が入っています。虎ノ門で日本一行列のできる立ち食いそば屋として名を馳せ、六本木のメルセデスに「Minatoya 3」として出店して話題になったあの「港屋」です。
(虎ノ門も六本木もすでに閉店しています)。
平日のランチタイムだけの営業ですが、通りかかったときに行列が短かったり時間に余裕があるようなら名物(というかそれだけ)の「肉そば」をどうぞ。夕食までお腹いっぱいで過ごせます。
基本情報
| 星のや 東京
設計:東利恵 開業:2016年 住所:千代田区大手町1-9-1 MAP |
<大ゲートと床全面>
星のや東京の前の道路はかつて箱根駅伝のスタートラインがあった場所なので、読売新聞社側の箱根駅伝関係の碑などを見ながら日比谷通りへ出て右へ曲がってみます。
大手町一丁目の交差点のファイナンシャルシティビルの玄関先にあるのがダニエル・ビュレンヌの《大ゲートと床前面》。
縞々の大ゲート、床には白い幾何学模様が描かれています。
ダニエル・ビュレンヌは ”ビュレン” あるいは ”ビュラン” とも表記されるフランスのコンセプチュアル・アーティストで、縞々(ストライプ)のアブストラクトな表現でよく知られています。
(ダニエル・ビュレンという表記が多いですが、本記事では作品キャプションに倣い ビュレンヌ と表記します)
ビル脇の工作物の壁面にもストライプがあり、たぶんこれも含めての作品ななのでしょう。
基本情報
| 大ゲートと床全面:サイトスペシフィック作品 東京 2015/2016
作者:ダニエル・ビュレンヌ 制作:2016年 住所:千代田区大手町1-9-32 MAP |
<経団連会館>
ダニエル・ビュレンヌのゲートから見える右手のビルは日本経済団体連合会(経団連)の入る「経団連ビル」。
日本の経済界の総本山とも言える場所です。
この経団連ビルの入口の上の方を見ると、何やら鳥らしきオブジェが目に入ります。
これはフクロウのモニュメント。フクロウは智慧の使者であり経済繁栄を象徴する鳥とされていて、当時の御手洗冨士夫キヤノン会長/経団連会長が寄贈したものだそうです。
基本情報
| 経団連会館
住所:千代田区大手町1-3-2 MAP |
<いのち>
経団連ビル脇の道を進むと内堀通りに出るので右手に進むと「東京消防庁 本部」ビルです。
ビル入口に置かれた円形のオブジェが宮脇正雄の《いのち》。
見過ごせば環境に溶け込み、しっかり見れば立派な彫刻作品。まるでブライアン・イーノが提唱した「環境音楽」のようなことを都市の景観の中で彫刻として表現しようとした宮脇正雄ならではの作品。
《いのち》というのは都民の生命や財産を守る消防の姿をコンセプチュアルに表現したもの。目に見えないものも視覚的に表現できる彫刻作品として分かりやすいですね。
基本情報
| いのち
作者:宮脇正雄 制作:1984年 住所:千代田区大手町1-3-6 MAP |
<旧気象庁>
《いのち》が設置された東京消防庁本部ビルの隣の塗装が剥げたビルはかつて「気象庁」だったビルです。
気象庁自体は再開発された虎ノ門に移転していて、港区立みなと科学館や気象庁気象科学館として港区民にお馴染みのビルになっています。
こちらの旧気象庁舎のビルはよく見ると戦後のモダニズム建築の特徴を持っていて、いわば忘れられた名建築と言えるかもしれません。
仮囲いされているのはもうすぐ解体されてしまうから。解体後は隣の東京消防庁 本部が移転してくるみたいです。もうあと少しの期間しか見ることができないのでしっかり見ておきたいです。
基本情報
| 旧気象庁ビル
竣工:1964年 住所:千代田区大手町1-3 MAP |
<パレスサイドビル>
次は竹橋の「パレスサイドビル」。建築家、林昌二の大傑作です。
そもそも巨大なビルなので全体を把握するのは難しいのですが、一歩引いて眺めるとその全貌を見ることができますし、この写真のような「逆さパレスサイド」を見ることができます。
▲大手町の経団連ビルにはフクロウが止まっていましたが、パレスサイドビルの屋上付近にも鳩(ハト)のモニュメントがあります。かつて新聞の原稿は伝書鳩に運ばせた時代があり、また平和の象徴として毎日新聞のビルにふさわしいとして作られたようです。
この鳩のモニュメント4体あるのだそうです。そのうち3体は見つけられましたが4体目だけはどうしても見つけられません。視力自慢の方はぜひ4体を探してみてください。
パレスサイドビルの外見的な大きな特徴は左右に建つ巨大な円筒形のタワー。
中はエレベーターです。
最近はかなり知られるようになりましたが、パレスサイドビルの屋上へは一般人でも上がることができます。円筒形のタワーの中のエレベーターを使って屋上へ上がります。
屋上が開放されるのは平日(休日・土曜・日曜を除く)の午前11時から午後15時までで雨天の場合は閉鎖。
(レギュレーションは変わることがありますから最新の情報は現地で確認してください)
飲食、球技などのスポーツは禁止されています。最近は個人的な写真撮影なら可能になっていて、皇居越しの風景撮影も大丈夫です。
この写真では皇居東御苑の桃華楽堂(とうかがくどう)、その向こうには虎ノ門ヒルズ/ステーションタワー、東京タワー、麻布台ヒルズといったお馴染みビル群が見えますね。
。
なお昭和の新聞社のビルですから屋上には喫煙所が何箇所かあります。
今でもあまり知られていませんが、お隣の「東京国立近代美術館」を上から眺めることもできます。
東京国立近代美術館も間近からは全体像がよく分かりませんが、このように斜め上から見下ろしてみると谷口吉郎がこだわった端正な姿がはっきりと分かります。
パレスサイドビルに戻りますが、このビルには浮いたように見える階段があったり内部の意匠もみどころがいっぱいです。
さらにレストランも充実していて、中華の「赤坂飯店本店」、創業300年超えの洋食屋「カレーのタカサゴ」、絶望スパゲッティの「マンマ・ミーア」など個性的な店舗がいっぱいです。
歩き疲れてお腹が空いたならパレスサイドビルで食事を。ただし日曜・休日はほとんどの店舗が定休日、土曜日も営業している店舗は数えるほどしかありませんから注意してください。
基本情報
| パレスサイドビル
住所:千代田区一ツ橋1-1-1 MAP |
<門>
パレスサイドビルを堪能したらお隣の「東京国立近代美術館」へ。ここは谷口吉郎設計によるもので1969年竣工です。
東京国立近代美術館の一角に建つ青いモニュメントがイサム・ノグチの《門》。美術館の新築移転にあわせて制作された作品です。
この作品の特徴はまずとにかく色が変わること。朱色だった時代が長いですが、2022年の開館70周年の時に今の青色になりました。たぶん数年後にはまた別の色に塗り替えられるのでしょう。
今の青は東京都のごみ清掃車の青だそうです。おそらく今後《門》の塗装に同じ色が使われることはないでしょうから、この色の《門》を見られるのは今のうちだけです。
芝生の上に設置されているのは彫刻家、多田美波の《Chiaroscuro》。
東京国立近代美術館の庭(無料)には他にもマリノ・マリーニや木村賢太郎の作品が展示されています。
人形町から日本橋、大手町を抜けて竹橋までの建築とアートを巡る散策、少なくても1時間、いろいろ見ていればあっという間に2時間くらい経ったと思います。
続けて東京国立近代美術館での展覧会とコレクション展、さらに時間と体力があればこの先の旧近衛師団司令部庁舎の外観を見学することができます。
建築とアートを巡る旅は終わりません。
基本情報
| 門
作者:イサム・ノグチ 制作:1969年 住所:千代田区北の丸公園3-1 MAP |































