DUMB TYPE/ダムタイプがコロナ禍の2022年に第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館にて発表した「2022:remap」の展示帰国展が、ブリヂストンの石橋財団が運営する八重洲の旧ブリヂストン美術館ことアーティゾン美術館で開催されています。
日本で初公開ということに加え、坂本龍一の遺作ともいえるダムタイプの新作です。
ダムタイプの創立メンバーであり、最重要人物の古橋悌二存命の90年代より追っている大のダムタイプ好きとしては、ベニスビエンナーレを観に行くことは叶わなかったものの、東京での開催となれば何をおいても即効観に行かなくてはなりません。
というわけで、混雑する展覧会初日の週末を避けて早速鑑賞してきました。
ダムタイプの変化
初めてダムタイプの存在を認識し、生で伝説のパフォーマンス「ph」や「S/N」を観て、ハンマーで頭を殴られるような衝撃を受けてからすでに30年の月日が経っています。その後「OR」や「memorandum」、「Voyage」を見ましたが、残念ながら最初の衝撃を超えることはありませんでした。
それは主要メンバーの古橋悌二が亡くなったことが大きいのですが、もう一つの要因として”ファーストインプレッションのとんでもない衝撃”な訳です。これはなんについてでも当てはまることですが。
そんな最初の衝撃が忘れられず、あの感覚を再度味わえるかもしれないという淡い期待を抱きつつ、30年間毎回毎回舞台や展覧会に足を運んできました。
今回の衝撃は、坂本龍一が新メンバーとして加わったことです。これまで高谷史郎とコラボレーションをしてきたインスタレーションは何度か見てきましたが、まさかダムタイプにメンバーとして加わるなんてびっくりです。ファンを自認していたご本人も驚いたと語っています。
そして、高谷史郎の妻もですが、坂本龍一の現奥さんまでもダムタイプのメンバーにクレジットされていて驚きました。なので、坂本龍一の映像をやっている息子までメンバーに入っているのでは?と思わず名前を探してしまったくらいです。(さすがにメンバーには入っていませんでしたが、この展覧会の図録の翻訳を担当しているので、ある意味家族総出関わっていました。)
そして、これまで山中透に代わって長きに渡りダムタイプに参加していた池田亮司がメンバーからいなくなっています。これは領域的に坂本龍一と抵触するのでいなくなったと思われますが、池田亮司が抜けたから、坂本龍一が入ったのか、その逆なのかは分かりません。
いずれにしても、ダムタイプはこれまでもメンバーや内容を変化しながら存続してきているので、このメンバー交代もダムタイプの一つの変化として受容し、今回の展覧会を鑑賞しました。
残念ながら新規加入した坂本龍一は、2023年3月28日に長い闘病の末に亡くなったことが発表されました。ですからこの作品は坂本龍一が参加した最初で最後のダムタイプ作品となってしまいました。
これまでの坂本龍一+高谷史郎のインスタレーション作品の記事はこちら▼
ヴァネチアビエンナーレと石橋家
なぜ、今回のヴェネチア・ビエンナーレ帰国展が旧ブリヂストン美術館であるアーティゾン美術館で開催されるのかというと、石橋家とヴェネチアビエンナーレには深いつながりがあるからです。
まずヴェネチアビエンナーレとは、イタリアで最も有名な水の都ヴェネチアを舞台とした、2年に一度開催されるビエンナーレ形式の現代美術の国際展です。
現代美術の国際展として1895年から120年以上の歴史があり、国際的に多大な影響力を持つ美術展です。
アーティゾン美術館を運営する公益財団法人石橋財団は、このヴェネチア・ビエンナーレ日本館展示への経済的支援を行っています。
そればかりか、財団創設者である石橋正二郎は、1956年になんと!個人として日本館の建設寄贈を行っているんです。すごい!
更に、2014年に行われた日本館リニューアルでは、石橋財団から改修を提案し、工事費用を寄付しています。
このような経緯から、石橋財団アーティゾン美術館は、2020年の開館時より、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展での日本館展示の帰国展を開催しています。その2回目となるのが2022年のダムタイプ展なのです。
2022:remap
展覧会は6階の展示室のみで展開されています。ヴェネチアビエンナーレのような吹き抜け空間はありません。
展示室の中央に日本館の90%のサイズに縮小された空間が設置されています。吹き抜けの代わりにLEDパネルが置かれています。
帰国展ではありますが、そのまま同様のインスタレーションはできないので、あくまでもヴェネチアビエンナーレアーティゾン美術館バージョンです。
展示室内は全エリアにわたり真っ暗です。池田亮司が手がけていた、ソリッドでシュッとした都会的な音響は当然ですが、聞こえてきません。
そこで、初めて近年のダムタイプってあの池田亮司の音の存在感がとんでもなく大きかったんだなと再認識しました。
また、一番直近の東京都現代美術館で2019年に開催された「ダムタイプ|アクション+リフレクション」の展覧会規模と比較すると作品点数は全体で一つのインスタレーション、つまり1点なのでかなり小規模です。
勝手な印象ですが、ダムタイプは、古橋悌二存命中の創世期、高谷史郎と池田亮司時代、そして今回の坂本龍一加入で第3幕に突入したという気がしました。
今回、池田亮司の音がないことに違和感を覚えたことは否めませんが、どんなものでも変革には、違和感や抗う力はつきものです。今後のダムタイプも変わらず追っていきたいと思います。
また坂本龍一の関係でしょう元ジャパン(Japan)のデヴィッド・シルヴィアン(David Sylvian)が声で参加しているのも話題かもしれません。
さて、初期の頃からのダムタイプ好きの方のこの展覧会の印象はどうですか?
会場の様子はこちらの動画で体感できます。
鑑賞前に知っておきたいこと5点
1、写真撮影は?
今回、展覧会は写真撮影可能ですが、動画の撮影はNGです。ただダムタイプの展示室は暗いので写真撮影はかなり難しいです。
2、手荷物は?
ロッカーに荷物を預けて鑑賞しよう。
基本的なことですが、展示室に向かう前に手荷物は無料のロッカーに預けましょう。
ここのロッカーは100円玉を用意する必要はありません。無料で利用できます。
なぜか、ここのロッカーの鏡の前でポーズをとってSNSに上げるのが流行っているようなので、自撮りが好きな方は是非どうぞ!
3、ダムタイプ展の混み具合は? 週末より平日、午後より午前中の方が空いています。
▲平日午前中の展示会場の様子
▲午前中は貸切状態でしたが、午後になってどんどん人が増えてきて中央の作品の周りは人だかりに。ちなみにこれ会期初めの平日です。
というわけで平日の午前中が一番人が少なくてオススメです。
4、学生無料!
アーティゾン美術館は大学生も専門学生も高校生もみんな学生は無料です。(ただし要予約)ですから、若い人が多いので平日であっても午後は人が多くなります。なるべく平日の午前中に行くことをおすすします。
5、アーティゾン美術館で他に何か観れるの?
入館したら全フロアの展覧会が鑑賞できます。
現在、ダムタイプと同時に開催している「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」と「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙」も鑑賞可能なので、時間に余裕を持って出かけましょう。
ダムタイプを知っている人も知らない人も、とりあえず美術館へ行って空間に身を置いて体験してみてください。
ダムタイプは、体験するところからスタートです。
アーティゾン美術館の記事▼
基本情報
第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap
2023年2月25日(土)– 5月14日(日) 10:00–18:00(5月5日を除く金曜〜20:00) 月休 入館料:一般web予約1200円、当日1500円 大・専・高:無料(要予約)予約がない場合当日券購入 中学生以下:無料 予約不要 アーティゾン美術館 中央区京橋1丁目7−2 MAP |