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「横尾忠則 寒山百得」展を東京国立博物館 表慶館でみる。これぞ建築とアート


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上野の東京国立博物館で横尾忠則の個展「横尾忠則 寒山百得(かんざんひゃくとく)」が始まりました。

展覧会のテーマとタイトルは中国は唐の時代の伝説的な二人の詩僧、寒山と拾得(かんざん じっとく)です。この二人は高い教養を持つにも関わらず、洞窟の中に住み、時には残飯で腹を満たすと言った脱俗的な振る舞いで知られていて、その奇行を「風狂」と捉えることで中国や日本の伝統的な画題として扱われてきました。

感染症が流行し自由な外出もままならない中、横尾忠則は俗世から離れたアトリエで創作活動に勤しんでいたそうです。その創作活動で寒山拾得をテーマに描き出された100枚以上の新作を”寒山百得” として展示する展覧会です。

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東京国立博物館 表慶館

まずは、「横尾忠則 寒山百得」が開催されている建築に注目して見たいと思います。

この建築を設計したのは、J.コンドルの弟子である片山東熊という建築家です。

▲皇太子(後の大正天皇)のご成婚を記念して1900年に計画され、1909年に日本初の本格的な美術館として開館しました。

その建築は、中央と左右に美しいドーム屋根を持ち、上層部の外壁には製図用具、工具、楽器などをモチーフにしたレリーフが施され、美しい階段があるのが特徴です。

1978年(昭和53年)に重要文化財に指定され、明治末期の洋風建築を代表する建物として高い評価を受けています。

要するに、展覧会会場を見るだけでも訪れる価値のある建築なのです。

私は、2014年のエルメスの「レザー・フォーエバー」展や2015年の「アート オブ ブルガリ 130年にわたるイタリアの美の至宝」展の訪問以来、実に9年ぶりの表慶館でした。

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横尾忠則 寒山百得 展

今回の展覧会は寒山拾得とテーマにパンデミック中のこの2,3年で制作された100点余りの作品が「寒山百得」として展示されています。

▲会場となる東京国立博物館の表慶館。その左右に広がる建物の1階と2階が寒山百得シリーズで埋め尽くされています。

今年で87歳という年齢を感じさせない大作ばかり。天井の高い表慶館なのであまりサイズを感じさせません。でもこれだけの大作が100点以上並べられる美術館は多くはありません。

▲テーマは寒山拾得ですが、古今東西の名画や名作、文学的なモチーフ、さらにはAI(人工知能)まで、博覧強記な横尾忠則らしいスパイスを加えていて飽きることがありません

▲かと思えばこれはエドゥアール・マネの「草上の昼食」からの引用です。

▲アーティスティックスイミングをモチーフにした作品。

画面から飛び出しそうな躍動感と瑞々しいばかりの生命力。87歳にしてこんな絵が描けるとは信じられません。

身体も衰え思うように手も動かせない状況で描く絵は、余計な技術や思惑が削ぎ落とされ横尾忠則のコアな部分がそのまま表現されているかのようです。横尾忠則とは異なり認知症で思うような表現ができなくなった蛭子能収が、やはり最後に残った ”蛭子能収” そのものを描いていた「最後の展覧会」と同じような境地なのかもしれません。

▲そしてAI(人工知能)や科学技術もきちんと動向を追っていて、その違和感を横尾忠則らしい表現で描いているのにも驚かされます。

そして幽体とか涅槃とか、かつての横尾忠則のようなインドや精神世界への関心がいまだ強い、というかむしろ先祖帰りしているかのような部分が見えるのも興味深いところです。

便器とトイレットペーパー

寒山百得シリーズに繰り返し現れるモチーフがあります。

それが「便器」と「トイレットペーパー」。

▲書をしたためようとしていますが、よく見るとトイレットペーパー。

また便器も多くの作品に登場していますが、マルセル・デュシャンを意識したわけではないそうです。

▲トイレットペーパーと同じように現れるティッシュペーパーも。

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寒山百得展の鑑賞時間目安は?

大作ばかりが100点余り。しかも横尾忠則のエナジーが注ぎ込まれた作品ばかり。

さらに引用元やモチーフの意味など考えながらの鑑賞ですから時間がかかります。

少し前に東京都現代美術館で開催された大回顧展「現郷から幻視へ、そして現況は?」展ほどではないにしろ、最低でも1時間半、じっくり見るなら2時間はみておくのが良いと思います。

その日であれば再入場可能ですから、疲れてしまったら上野公園に戻って栄養補給してから再チャレンジするような鑑賞方法もできます。

寒山百得展の写真撮影は?

寒山百得展は全作品が写真撮影可能です。

▲動画撮影、自撮り棒、フラッシュ、三脚はもちろんNGです。

注意書きにもあるように、状況によっては条件が変更される場合があるので、現地での最新の指示に従うようにしてください。

寒山百得展のチケットは? 予約制?

この展覧会は事前予約は不要です。いきなり東京国立博物館へ行って当日券で鑑賞することができます。

しかし、スムーズに入場したいならオンラインチケットを事前に購入しておいた方が良いでしょう。

チケット料金は、一般 1,600 円 / 大学生 1,400円 /高校生 1,000円 /中学生以下無料
このチケットで本館の総合文化展も入場可能です。

オンラインチケットはプレイガイドなどでも購入可能です。

寒山百得展の混雑状況

会期始まってすぐの鑑賞だったので、入場制限もなくすんなり入場し、ストレスなく鑑賞することができました。

年齢層を問わず知名度も人気もある横尾忠則ですから、今後会期後半に向かって混雑していくことは容易に想像できます。

会期は12月3日までと長いですが早めに訪問した方がよいでしょう。

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寒山百得展のミュージアムグッズ

ミュージアムショップでは様々なグッズがたくさん販売されています。

▲展覧会の図録は2,200円。

▲アパレルもあります。

▲バッグなどのアクセサリー類。

▲ソックスです。

いつ、どこに履いていこうか悩みますね。

▲これは下着と「泣き笑い人生」のマスコットチャームです。

▲猿田彦珈琲も。ドリップパックです。

いろいろな商品があって楽しいですね。

▲「Eye and Mouth」のトイレットペーパー。

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寒山百得展のポイント

11月5日まで東京都現代美術館では「横尾忠則 − 水のように」展が開催されていますし、2年前には同じ東京都現代美術館で「原郷から幻境へ、そして現況は?」という大回顧展が開催されたのも記憶に新しいです。

そして今回の展覧会。作品の制作日を見ると、1日に3作品を仕上げた日もあるくらいで創作意欲は衰えることを知らない横尾忠則のまさに新作群。それも100点以上。

100点の寒山百得シリーズを見るとそこには画家に転向してからの横尾忠則だけでなく、それ以前のグラフィックデザイナー時代のテーマも浮かび上がってきて、新作群ですが ”横尾忠則の世界” を回顧するという展覧会になっています。

2023年の秋、上野でアートめぐりをするなら絶対外せない展覧会です。

基本情報

「横尾忠則 寒山百得」展


2023年9月12日(火) ~ 2023年12月3日(日)

9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)

月曜日、9月19日(火)、10月10日(火)休

10月9日(月・祝)開館

事前予約不要

チケット:一般 1,600円、大学生 1,400円、高校生 1,000円

東京国立博物館 表慶館

東京都台東区上野公園13−9 MAP

アクセス:JR上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分

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