東京都内には公立私立、大小さまざまな美術館があります。東京にある数多くの美術館の中から、絶対に行くべき美術館をテーマごとに紹介する特集の第四弾です。
今回は、コレクションや企画展も充実しているけれど、美術館の建築もまた素晴らしい美術館を3つご紹介します。
重要文化財にも指定されている20世紀を代表する建築家のひとりフランスの建築家ル・コルビュジエが設計した歴史的建造物や、日本のモダニズム建築の巨匠前川國男の手がけた美術館。
そして、哲学を学ぶためにドイツに留学し、独学で建築家となった孤高の建築家の区立美術館などその建物を見学するだけでも満足できちゃう東京で見るべき名建築の美術館3選です。
PR国立西洋美術館
国立西洋美術館は、ル・コルビジェ設計で1959年に竣工しました。その設計監理は、ル・コルビジェの日本人の3人の弟子、坂倉準三、前川國男、吉阪隆正が担当しています。
2007年に重要文化財に指定され、2016年には、本館と前庭を含む敷地全体がユネスコの世界文化遺産<ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―>に登録されています。
しかし、そのユネスコの世界遺産登録の際に、ル・コルビュジエの設計による当初の前庭の設計意図が一部失われているという指摘があり、2020 年10月から2022年4月までの約1年半にわたる休館期間にリニューアル工事が行われました。
リニューアルでは、竣工時にならって植栽を最小限とし、西側の門からのアプローチと開放的な柵へと戻す工事が行われました。
また、ロダンの彫刻「考える人」と「カレーの市民」の位置も竣工時の位置に戻しました。
またル・コルビュジエが人体の寸法と黄金比をもとに考案した尺度である「モデュロール」で割りつけられた床の目地も、復元されています。
▲改修後は、前庭だけでなく建物もとても綺麗に蘇りました。
登ることはできないけれど階段のその姿が美しい。
階段の美しさもさることながら、見どころはたくさんありますので時間に余裕を持って訪問しましょう。
▲展示室内にある階段も外階段のデザインと同様に美しい。
上り下りはできないけれど、この階段を見られるだけで満足です。
その美しい佇まいを展示品と同じくらいじっくり見たい。
リニューアル前と後の様子がよくわかる写真です。1枚目と2枚目をスライドして比較してみてください。▼
基本情報
国立西洋美術館
月休(祝日の場合翌平日) 企画展入館料:展覧会により異なる 常設展:一般500円、大学生250円、高校生以下無料 Kawasaki Free Sunday(原則毎月第2日曜日)、国際博物館の日(5月18日)、文化の日(11月3日)は常設展無料 東京都台東区上野公園7番7号 MAP アクセス:JR上野駅下車(公園口出口)徒歩1分、京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分、東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分 |
東京都美術館
前川國男設計の東京都美術館は、前川の師ル・コルビジェ設計の国立西洋美術館から徒歩5分ほどの距離に建っています。その外観は、まるで煉瓦のように見える特別なタイルで覆われています。
特別なのはタイルだけではなく、コンクリートと一緒に固めてしまう「打ち込みタイル工法」という施工方法もです。これは前川がこの都美術館で発案した工法です。
上野には、師コルビジェの国立西洋美術館と並んで前川國男設計の東京文化会館もあります。この3つの名建築をめぐるだけでもかなり充実の時間を過ごすことができます。
▲東京都美術館は、夜の姿も美しいのです。特別展を開催中の金曜は夜間開館で20時まで開館しているので、あえて狙っていくのもありです。
▲展示室も前川國男らしい空間が広がっています。かまぼこ型の天井とこの照明!
▲建築家にならなかったらペンキ屋さんになりたかったという前川國男は色に対するこだわりも相当なものでした。
この公募展示室の壁の色といい、椅子の色といい、相当なこだわりを感じます。
壁の色と非常にマッチしている椅子も前川國男によるもので、天童木工の制作です。
東京都美術館の詳細は▼
前川國男設計の東京文化会館▼
基本情報
東京都美術館
入館料:展覧会により異なる 台東区上野公園8−36 MAP アクセス:JR上野駅公園口より徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分、京成電鉄京成上野駅より徒歩10分 |
渋谷区立松濤美術館
松濤の高級住宅街に建つ小規模ながらも際立つ佇まいの区立美術館は、異色の建築家といわれた白井晟一の設計です。
竣工は1980年、開館は1981年で2021年に開館40周年を迎えました。
その際、コロナ禍ではありましたが、40周年記念展として建築家白井晟一の建築を2部形式で見せる展覧会が開催されました。
その展覧会は、松濤美術館の建築をなるべく開館時の状態で見せるという画期的な企画内容でした。
▲建物の中央は地下2階から屋上まで円筒形状に吹抜けとなっています。
最下部の地下2階部分は噴水のある池があり、どのフロアもその吹抜けから採光できる仕組みです。
敷地が狭いことを逆手に取った秀逸な建築は、何度訪れてもため息が出ます。
▲中央吹き抜け空間に出ることができる1階のブリッジ
夜の松濤美術館も雰囲気があって良いです。金曜は夜間開館をしているので2回目以降に行ってみるのもありです。
▲エントランスからブリッジまでの天井はオニキスです。
▲松濤美術館の見どころの一つ、美しい螺旋階段。
▲通常、展覧会開催時には閉まっていることが多い中央吹き抜け側の窓。
何もない展示室は白井晟一の展覧会で建築そのものを見せる「建物公開」という企画の時の様子です。
▲白井晟一のこだわりが詰まった2階サロンミューゼは、美術館の展示室とは思えない空間です。
これも白井晟一展第二部「建物公開」の時のもの。
▲家具もすべて白井晟一のセレクトです。現在も開館時の家具が大切に使われています。
渋谷区立松濤美術館詳細に関する記事▼
基本情報
渋谷区立松濤美術館
入館料:展覧会により異なる 東京都渋谷区松濤2丁目14−14 MAP アクセス:京王井の頭線神泉駅徒歩5分、JR・東急電鉄・東京メトロ渋谷駅徒歩15分 |
名建築の美術館マップ
連休に行くべき名建築の美術館編のマップを用意しました。参考にしてください。地図をタップすると大きくマップが開きます。
GW美術館特集▼
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