「埼玉建築巡りその1川口イイナパーク三つの伊東豊雄建築をめぐる」に続いてその2では、同じく伊東豊雄設計のヤオコー川越美術館・三栖右嗣記念館を巡ります。
エントランス横には枝垂れ桜の木、周囲はベンチですが、ちょっと劣化しています。
美術館への道のカーブは内部空間と呼応したデザインです。▲
ヤオコー川越美術館
埼玉県内に数多くあるスーパーマーケットのヤオコーを経営する株式会社ヤオコーの会長がコレクションしている三栖右嗣の作品を展示・保管する私立の個人美術館です。
2011年にヤオコーの120周年記念事業として、会長のお母様(ヤオコーの創業者)がコスモスの絵を購入したのをきっかけに、ヤオコー会長も三栖作品を集めるようになり、その総数150点を超えるコレクションを保管展示する美術館を開館しました。
水盤の上にコンクリートの箱が浮いているようなソリッドな印象の外観。左の上部に何やら飛び出しているのに注目です。▲
土地探しから
最初に伊東豊雄建築設計事務所に依頼があったときは、まだ美術館を建設する場所も未定だったそうです。当初は、ヤオコー創業の地に建設する予定だったのですが、様々な理由から美術館建設ができないことがわかり、土地を探すところからのスタートでした。それが2009年の春。
作家の三栖右嗣氏はその開館を見届けることもなく残念ながら2010年に亡くなってしまいます。開館どころか三栖右嗣氏と伊東豊雄氏は会うこともなかったそうです。
結局、美術館の場所は様々な候補地の中から観光地として人気の高い小江戸川越のとても静かな住宅街に決まります。
お施主さんからのリクエストで、門や塀などはなく、美術館の敷地にはいつでも誰でも入れるようになっています。▲
美術館内
中に入ると真っ赤な壁が印象的なエントランスです。ここはイントロダクションであり、ミュージアムショップも兼ねているスペースです。
奥の展示室がチラ見えしていますが、何やら期待が高まるものが見えていますね。▲
半円形のチケットカウンターは、隣のラウンジまで壁を貫いて続いています。スタッフは入館チケットの販売とミュージアムショップの精算、ラウンジの対応までこの半円形のカウンターのあっちとこっちを行ったり来たりして兼業することができます。
展示室1
伊東豊雄氏がこの美術館空間を松花堂弁当に例えていましたが、まさに松花堂弁当空間でした。
四角の中央を十字で区切って四つの空間になっています。ひとつがエントランス、一つがラウンジであとの二つが展示室です。
最初の展示室には、中央に柱があって、床の照明に向かって天井が落ちていきます。▲
この湾曲した曲線は、実は外部のゆるくカーブした道から始まっています。
展示室1はやや照明が暗めで、漏斗状に天井が地下へ吸い込まれるているような印象です。隣に第二の展示室が見えいています。▲
展示室2
展示室2は、天井がまるで富士山のように盛り上がった屋根から自然光が降り注ぐ荘厳な空間です。
とても明るくて開放的な空間。まるで美術館が呼吸しているみたいです。
伊東豊雄氏はこの美術館で「光を媒介にしながら空間の性格が絵と響き合うような関係を作りたい」と言っています。
私は空間がまるで呼吸しているように感じました。
まさに息を吸って〜(展示室1)吐いて〜(展示室2)というように。
第二展示室のソファには、たくさんの伊東豊雄関連の書籍が並びます。建築目当ての訪問も多いようですね。▲
ラウンジ
ラウンジはミュージアムカフェになっていて、作品を鑑賞した後に一休みできるようになっています。
美術館の四つのスペースは照明の照度や壁の色など、それぞれ異なっています。ラウンジはうっすらとピンク色です。下部に開口が設けられていて、館の周囲の水盤を眺めることができます。
4つのスペースはどこも個性があって、まさに松花堂弁当そのものの空間です。
東京出身の私は、実はヤオコーには行ったことがないのですが、ラウンジで食べられるおはぎが大人気商品のひとつだそうです。なんと年間800万個の売り上げがあると言うから驚きです。マツコの知らない世界のおはぎ特集でも取り上げられた逸品。食べないわけはにはいきません。▲
おはぎ、本当に美味しかった。形も丸くなくて、少しテーパーがかかった不思議な形をしているのですが、甘さ控えめながらも小豆の味がしっかりしていて、人気の秘密がよくわかりました。ああまた食べたい。
入館料+飲み物+おはぎのお得なチケットがあるので、おはぎ好きの方は入館するときにセット料金のチケットを購入した方がお得です。入館料+ドリンクセットのチケットもありますよ。
帰りに改めてみてみると第二展示室の上が、富士山のように盛り上がっているのがよくわかりました。▲
空間もラウンジのおはぎも忘れらないとても印象的な美術館でした。
「埼玉建築巡りその1 イイナパーク川口の三つの伊東豊雄建築をめぐる」
「埼玉建築巡りその3 中村拓志の狭山湖畔霊園、エマニュエル・ムホー建築、隈研吾の巨大な隕石建築角川武蔵のミュージアム」も参照ください。
基本情報
ヤオコー川越美術館
10:00-17:00 月休 一般300円、大高200円 埼玉県川越市氷川町109−1 MAP 駐車場15台 アクセス:JR・東武東上線川越駅より、東武バス:7番乗り場 埼玉医大・上尾駅西口・平方・川越運動公園行き川越氷川神社下車徒歩約1分 西武新宿線 本川越駅より、東武バス:5番乗り場 埼玉医大・上尾駅西口・平方・川越運動公園行き川越氷川神社下車 徒歩約1分 小江戸巡回バス:川越駅西口(2番乗り場)、本川越駅(駅前ロータリー北側・小江戸巡回バスのりば)、喜多院先回りコース「氷川神社前」下車 徒歩約1分 |