六本木ヒルズと東京タワーのちょうど真ん中にあって昔ながらの商店街を擁する麻布十番。
老舗と新しい店が混在し、しかも周辺に大使館やインターナショナルスクールが多いので、外国人も多く住む国際的な街でもあります。
港区とか麻布といった言葉から真っ先にイメージされる街。そんな麻布十番とその周辺の建築巡り情報をまとめてみました。
スポンサーリンク駅はなかった麻布十番
麻布十番駅ができるまでは、電車でのアクセスの面で陸の孤島だった場所ですが、2000年に開通した麻布十番駅には南北線と大江戸線が乗り入れ、以前の不便さはすっかり解消されました。
また、周辺には六本木ヒルズやタワーマンションが立ち並び、近年街の様子は一変しました。(高層のマンションは住所的には三田や東麻布、元麻布、六本木に建っているものが多い。)
数年前まで麻布十番の隣町の東麻布に長く住んでいたので個人的には親しみのある街でもあります。
まずは麻布十番駅周辺の建築からスタート。
麻布十番駅周辺
南北線と大江戸線が乗り入れており、大江戸線の麻布十番駅のすぐ上には首都高速が走り、東京タワーも眺められます。
ジュールA
駅の真上、新一の橋交差点の角に建つのは、今は亡きエドワード鈴木設計のジュールAです。バブル期1990年竣工のいかにもバブリーな建築です。
代官山の駅前にあったジャン・ポールゴルチェのビルも鈴木エドワードの設計でジュールAのような剥けちゃったようなファサードでした。懐かしいですね。今でもそのビルはありますが、ファサードが改修され、当時の面影はありません。
▲ジュールAは駅と直結のテナントビルです。
中に入るとわかりますが、低層部は大胆な吹き抜けになっていて、かなり贅沢な構造です。
▲これは改修工事の際、低層部に足場が組まれていたときの写真なのですが、この違和感のなさ!
西麻布にあった鈴木エドワード建築設計事務所も2019年に本人が亡くなられてからは、表参道に移転してしまいました。西麻布でよくご本人をお見かけしたのがとても懐かしいです。
ジュールA
東京都港区麻布十番1丁目10 MAP
MAXPLAN AZABU 10
ジュールAのすぐ近く、一の橋交差点の角に建つのは2020年竣工のテナントビルMAXPLAN AZABU 10は隈研吾設計です。
麻布十番では新参者のビルですが、だいぶ馴染んできました。
▲ランダムに並んだパネルの隙間に窓があるというデザイン。
屋上部分の迫り出したパネルにやっつけ感と乱雑さが垣間見えてしまうのがちょっと残念。意図しているわけではないのはわかるのですが。
▲個人的にはこの最上部のパネルがない方がスッキリするような気がしてなりません。
MAXPLAN AZABU10
東京都港区麻布十番4丁目1−1
スポンサーリンク
はなぶさ麻布十番ビル
麻布十番特集で最も新しいビルです。以前は、麻布十番のパテオの近くのテナントビルに入居していたひつまぶしのはなぶさのビルです。
設計は青木弘司と岡澤創太の2名の建築家の事務所AAOAA。このはなぶさビルは青木弘司が担当しています。竣工は2022年1月の出来立ての新しい低層のビルです。
▲元々のはなぶさは隠れ家感満載の場所で個室を売りにしたレストランだったので、新店舗であるこちらのビルにも個室があります。
写真は、竣工したばかりでまだ、はなぶさの入居が始まる前に撮影したものです。
はなぶさがオープンした現在は、店名サインなどがついていると思います。
追記:そんなに大掛かりなサインはついていませんでした。入り口であるエレベーターの扉に1ヶ所店名サインついているだけでした。あとは「営業中」の木の札が置いてあるだけです。
白井屋ホテルやGYRE FOODの植栽を手がけたSOLSO FARMの植栽の緑と建物のコンクリートがマッチしていていい雰囲気。
SOLSO FARMの植栽はいつもセンスが良くて、さすが!
久しぶりにはなぶさでひつまぶしを食べてきました。新しいはなぶさには初潜入です。
エレベーターで入店するのは以前と変わらずですが、前とは違って普通にエレベーターに乗って2階へ行けば店内です。
外観とは違い、中は木製で和風モダンです。
▲左側に個室が2つです。自社ビルに移転しても個室は健在です。
奥にはテーブル席が並びます。窓は和紙で覆われているので外は見えません。壁から天井に木製のルーバー。ルーバー以外の壁は左官です。
▲以前のビルの中の店舗に比べると高級感がグレードアップしています。
最上階は更に独立した個室です。前店舗からはなぶさは個室が売りのお店です。ですから、誰にも会わずに食事ができるので、たくさんの開店祝いの胡蝶蘭に書かれているような著名人・有名人の方々が常連なんですね。
階下は、はなぶさではなく、別テナントが入る予定だそうですが、まだどのような業態のテナントが入るか未定なんだとか。
内装も建物と同じ人がデザインしたとはなぶさのスタッフの方は言っていましたが、裏が取れませんでした。店員さんを信じてないわけではありませんよ。
▲営業開始したので、内部の照明がついています。
さて、どんなひつまぶしなのか、食事内容やメニュー、価格帯などについて関連サイト歩いて知った麻布ガイドの<ひつまぶしで有名な隠れ家風の鰻店「麻布十番 はなぶさ」。あのムード満点な個室はどうなった?>の記事を参照してください。
ああ、久しぶりのはなぶさのひつまぶしは美味しかった!
移転、再開したばかりでランチタイムでもけっこう混んでいますから、はなぶさを利用する際は事前の予約をおすすめします。
はなぶさ
東京都港区麻布十番2丁目7−11 2F・3F はなぶさビル MAP
iron gallery(ギャラリー柳井)
2011年竣工のiron galleryは森ビルの土地と建物で2011年からずっと古美術を扱うギャラリー柳井が入っています。
設計は、渡邉健介が主宰する渡邉健介建築設計事務所です。外観はコールテン鋼の波板による特徴的なデザイン。
▲竣工時はマダラだった錆が、現在は全体に行き渡りすごく味のある建物です。
前の道は通勤で使っていたので数えきれないほど通っていますが、一度も中に入ったことはありません。
ギャラリー柳井
東京都港区麻布十番1丁目5−1 MAP
スポンサーリンクしろいくろ
古民家をリノベーションした和菓子屋さんで、建築家の大縄順一とグラフィックデザイナーの落合崇がオーナーの古民家カフェ。
▲当然、リノベーションはオーナーの建築大縄順一によるものです。
▲テイクアウトだけでなくイートインも可能です。
しろいくろ
東京都港区麻布十番2丁目8−1 MAP
国際文化会館
鳥居坂にある国際文化会館は、江戸時代から幕末にかけて多度津藩(現香川県)藩主京極壱岐守の江戸屋敷だった場所です。
その後久邇宮邸、赤星鉄馬邸、岩崎小彌太邸と変遷し、戦後国有地でしたが、国際文化会館が購入し現在に至ります。
1955年(昭和30年)に日本建築界の巨匠、前川國男、坂倉準三、吉村順三の共同設計により現在の本館部分が完成。
1976年(昭和51年)に前川國男設計で本館の改修と増築した西館(新館)が竣工しました。
六本木(十番)とは思えない広々とした庭ではコロナ前は結婚式やパーティが頻繁に執り行われていました。庭園からは東京タワーが望めます。
現在の庭園は、1930年(昭和5年)岩崎小彌太がわが国屈指の京都の名造園家「植治」こと7代目小川治兵衛に作庭を依頼したもので、2005年に港区の名勝に指定されました。
季節ごとに訪れる、個人的に十番で一番好きな建築かもしれません。
国際文化会館
東京都港区六本木5丁目11−16 MAP
スポンサーリンク元麻布
オーストリア大使館
はなぶさのすぐ近くにある槇文彦設計の大使館です。竣工は1976年。
内装はオーストリアの建築家エンメリッヒ・シモンチッチュによるものだそうですが見たことはありません。
▲大使館はなかなか中に入るチャンスがないし、警備が厳しいです。国よってはカメラを向けるだけで警備員がすっ飛んでくるところもあるので要注意です。
タイル張りの低層の大使館です。
オーストリア大使館
東京都港区元麻布1丁目1−20 MAP
西町インターナショナルスクール
本部館を囲むように3つの校舎をジュールAを設計した鈴木エドワードが設計しました。
▲竣工は3校舎ともに1985年です。
松方ハウス(西町インターナショナルスクール本部館)
ヴォーリズによる西町インターナショナルスクール本部館は、旧松方正熊邸で、通称松方ハウスと言われています。
1921年の竣工なので、昨年100年を越えた歴史ある建築です。
▲東京都選定歴史的建造物に指定されています。
西町インターナショナルスクール
東京都港区元麻布2丁目14−7 MAP
元麻布ヒルズ
麻布エリアで一際目立つ森ビルが開発した高層高級マンション元麻布ヒルズのデザイン監修は内井昭蔵率いる内井昭蔵建築設計事務所です。竣工は2002年。
内井昭蔵というと個人的には世田谷美術館がすぐに思い浮かびます。
元麻布ヒルズフォレストタワー最上階のペントハウスには、あのカルロス・ゴーンが住んでいたこともある超高級マンションで、森ビルの他のヒルズと違って全て住居です。
友人が住んでいたので、中に入ったことがあるのですが、高台に建っているので中層階からでもベランダからの眺望は、それはそれは素晴らしいものでした。
元麻布ヒルズフォレストタワー
東京都港区元麻布1丁目3−1 MAP
安藤記念教会
大谷石造りの教会の設計は銀行や教会建築を手がけた吉武長一です。竣工は100年以上前の1917年。
現在は、東京都選定歴史的建物に指定されています。
▲100年以上経っているけれど、全然古さを感じさせません。石造りの建築の良いところです。
▲数年前までは夏になると全面が蔦に覆われていましたが、最近はこのような事にはなっていません。
安藤記念教会
東京都港区元麻布2丁目14−16 MAP
三田
麻布通りを挟んで東側が三田です。住所的には麻布十番ではありませんが「麻布十番」を名乗っているビルやマンションが一番多いエリアでもあります。
住友不動産麻布十番ビル
三田だけど麻布十番を名乗っている代表格の新参者のビルです。最寄駅名を名乗るなら赤羽橋駅ですけれどね。
2017年竣工で日建設計によるオフィスビルです。
アルミ製の折り紙のような壁面と窓が混在し、窓には空が映り込んで、季節や時間でその表情は変化します。場所によっては東京タワーが映り込んで見えます。▼
奇抜なデザインですが、普通のオフィスビルです。
ピロティと風除室の天井パネルも屏風のように折れ曲がったデザインです。シルバーメタリックの塗装で未来的雰囲気です。▼
住友不動産麻布十番ビル
東京都港区三田1丁目4−1 MAP
オークウッドホテル&アパートメンツ麻布
元々は向かい側に移転した日進デリカテッセンの店舗と駐車場があった場所です。
三井不動産レジデンシャルによるホテルライセンス型のサービスアパートメントで、1階にはテナントが入っていますが、上部は全て賃貸と分譲の住宅です。2022年1月に開業したばかりの新参者です。
奇抜な外観のデザインは、LIV建築計画研究所による「麻の葉文様」をモチーフとしたデザイン。
住友不動産麻布十番ビルと近いので、奇抜なファサード対決ですね。
オークウッドホテル&アパートメンツ麻布
東京都港区東麻布3-10-5 MAP
スポンサーリンク綱町三井倶楽部(旧三井邸)
ジョサイア・コンドル設計で三井家の迎賓館として1913年(大正2年)に竣工しました。三井家の威信をかけて建てられたそれはそれは立派な洋館です。
現在は、三井グループの会員制倶楽部として機能しています。▼
三田綱町三井倶楽部
東京都港区三田2丁目3−7 MAP
かんぽ生命東京サービスセンター(現存せず)
旧簡易保険局で逓信局の設計により1929年(昭和4年)に竣工。都内では数少ない戦前築の逓信建築でした。綱町三井倶楽部と向かい合って建っていて、2つの洋館の効果でとっても趣のある街並みでした。
三井不動産レジデンシャルが土地を購入し、残念ながらすでに解体されてしまいました。
解体の様子▼
オーストラリア大使館
オーストラリアのデントン・コーカー・マーシャル社の設計で、建物の外壁はPVF2コーティングのアルミ仕上げで現代的な建物です。
▲芦原太郎が設計協力をしています。
オーストラリア大使館
東京都港区三田2丁目1−14
スポンサーリンク東京さぬき倶楽部(閉業)
コロナにより予定よりも早くひっそりと2020年4月末に閉業してしまった東京さぬき倶楽部。
前身の東京讃岐会館の表札が残る門扉には蔦が絡まり、華族のお屋敷のような雰囲気です。建物は国立能楽堂を手掛けた大江宏による設計。
大江宏と香川県との縁は1965年(昭和40年)に竣工した香川県文化会館の設計からです。
内装も家具も最高でした。家具はジョージ・ナカシマデザイン。照明とか壁とかモダニズム建築の塊のような場所。
それもそのはず、この建物は、香川県庁を丹下健三に依頼したデザイン知事と異名を持つ金子知事が香川県知事時代のものだからです。
讃岐うどんも美味しかったのになぁ。この空間がもう見られないと思うと閉業は本当に残念でなりません。▼
閉業してから様子を見に行った時の写真です。▼
閉業してしまったので、蔦の勢いがすごいことになっていました。▼
右手の低層のエントランス棟と左手の高層12階建ての宿泊棟が寄り添う構成でした。奥には明治時代に建てられた日本家屋があったりしてとっても趣のある場所でした。
まだ、着手されていませんが、このエリア一帯は、再開発地区となっていて、東京さぬき倶楽部のあるこの場所は公園になる予定のようです。
麻布十番の駅の周辺の古い建築、新しい建築を取り上げてみました。建築巡りの参考にしていただければ嬉しいです。
スポンサーリンク