谷根千(やねせん)といわれるエリアの千駄木駅の近くに文京区立森鴎外記念館という区立の個人美術館があるのをご存知でしょうか。ずっと行こう行こうと思いつつ、コロナに突入してしまったりして、今回ようやく初訪問となりました。
日本の義務教育を受けた人で森鴎外(もり・おうがい)を知らない人はいないでしょう。「舞姫」や「高瀬舟」、「山椒大夫」など数々の名作を遺した文豪です。
小説家としての森鴎外が一番有名ですが、小説家であると同時に医師であり、戯曲家でもあり、評論家、翻訳家としての一面もありました。
そんな多彩な顔を持つ文豪が亡くなるまでの30年間を過ごした住居跡地に建つ区立の記念館です。
PR森鴎外記念館ができるまで
陶器二三雄 設計 森鴎外記念館
現在の記念館は建築家の陶器二三雄(とうき・ふみお)が手がけたものです。
千駄木の駅から団子坂を登って徒歩5分ほど上った記念館を目の前にして、その建築の色味に目を見張りました。
霞がかかったような、淡い色調をしているのです。ベージュのようなグレーのような、でもちょっとピンク味も感じる温かみのある色調がなんとも親近感を覚えます。
近づいてよく見るとそれはなんとレンガでした。レンガはブリックとも言いますが、ここのレンガは、これまでに見たこともないような色をしているのです。
レンガでこんな淡い色調が出せるのかぁと感心したのですが、調べてみるとそれは簡単な話ではありませんでした。なんと、レンガを貼ってからその表面を手作業で削ったのだそうです。手間がかかってる!そんな大変なこと、なかなかできませんから、見たことがなかったのですね。
なぜ、そんなことをしたかというと、建築家 陶器二三雄によると「若き鴎外が学んだドイツの歴史的街並を彷彿させ、また現代をも感じさせる表現をめざしました」(文京区立森鴎外記念館公式HPより引用)ということです。
なるほど!コンセプトがドイツの街並みだったのです。だから、異国情緒溢れる柔らかな印象を受けたのですね。
記念館の設計を手がけた陶器二三雄は、イタリアはベネツィアで建築を学んでいます。ですからドイツで学んだ森鴎外同様にヨーロッパの街並みが身近である上に、どうすれば温かみがあり、落ち着いたヨーロッパの街並みを日本の建築で表現することができるのかを知っていたのかもしれません。
この記念館で陶器二三雄は、第55回BCS賞、日本芸術院賞、日本建築学会作品選奨を受賞しています。
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記念館の構成
1階は広々としたエントランスにチケットカウンターとミュージアムショップ、そして鴎外が暮らしていた当時からある銀杏の木の見えるミュージアムカフェ「モリキネカフェ」があります。
エントランス入って正面に見えるのは、森鴎外のレリーフです。このレリーフは、谷口吉郎設計の文京区立鴎外記念本郷図書館開館時に取り付けられたものです。
また、2階は図書室と講座室があります。図書室は通常の図書館というわけではなく森鴎外に関する資料を閲覧することができる図書室です。本の貸し出しは行っていません。
記念館の主要スペースである展示室はすべて地下にあります。
地下の展示室では年に2回の特別展と常設展を鑑賞することができます。
しかし、館内の写真撮影は禁止のためエントランスの撮影スポット以外は写真がありません。
モリキネカフェ
森鴎外記念館にはミュージアムカフェが併設されています。
1階のエントランスより入って左奥にカフェスペースがあります。カフェの一面は全面開口になっており、庭の大イチョウの木と三人冗語の石を眺めながらカフェタイムを過ごすことができます。
▲2024年4月までの特別メニュー「近所のアップルパイ」はドリンク付きで1000円です。アイスクリームが2種類ものってる可愛いアップルパイです。
▲森鴎外にちなんだドイツのモリキネサンドは、「ショーマッカー」のロゲンブロート(ライ麦パン)、セミドライソーセージ、クリームチーズ、ザワークラウトを挟んだサンドイッチ。ピクルス、ヨーグルト、ポテトチップスにドリンク付きで同じく1000円です。
モリキネカフェでは、ゆっくりとした大人時間を過ごすことができました。
かつて文豪森鴎外が長らく暮らした場所で、その頃の遠き異国ドイツに想いを馳せながら、素敵建築でカフェタイム。
印象深い至福の時間となりました。
基本情報
文京区立森鴎外記念館
休館日: チケット料金: 文京区千駄木1-23-4 MAP |