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《坂本龍一 | 音を視る 時を聴く》東京都現代美術館を訪問する前に知っておきたい情報


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東京都現代美術館では音楽家・アーティストで2023年に亡くなられた坂本龍一の個展「坂本龍一|音を視る 時を聴く」が開催されています。

YMOのメンバーとしての活躍、映画「戦場のメリークリスマス」への出演や音楽提供などで一般的な知名度も人気も高い坂本龍一の、2000年代以降のアーティスト活動で得られたインスタレーション作品10点あまりと資料アーカイヴなどが展示されています。

コラボレーションするアーティストはダムタイプで近年坂本龍一とのコラボも多い高谷史郎(たかたに・しろう)、Perfumeのディレクションなどで知られるライゾマティクス代表の真鍋大度(まなべ・だいと)など。さらにスペシャルコラボレーターとしてメディアアートの世界的な先駆者で「霧の彫刻」でも知られる中谷芙二子(なかや・ふじこ)が迎えられています。

錚々たる面々とのコラボレーション作品を通じ、YMOや戦メリだけでない坂本龍一の姿を見られる展覧会なのです。

インスタレーション作品が多いので展示されている作品数は少ないけれど鑑賞時間はたっぷり必要です。また、特定の時間帯に体験してこそ感動が増す作品もあります。

本記事を参考に事前に予定を立てておくと「坂本龍一|音を視る 時を聴く」展を10倍効率よく楽しめるはずです。

東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る
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展覧会構成

展示されているインスタレーション作品は全12点。それと坂本龍一の創作の秘密を書かれたメモや資料、80年代90年代の活動を振り返る各種資料が展示されています。

東京都現代美術館の1階と地下展示室が使われているのですが、大型インスタレーション2点が展示室外に設置されています。

《センシング・ストリームズ 2024 –不可視、不可聴(MOT version》, 坂本龍一+真鍋大度, 2024, 坂本龍一 | 音を視る、時を聴く, 2024, 東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲一つは1階ミュージアムショップを抜けた先の中庭に展示されている「坂本龍一+真鍋大度《センシング・ストリームズ 2024 –不可視、不可聴(MOT version》」。

今年の1月にICCで開催された「坂本龍一トリビュート展」では《センシング・ストリームズ 2023-不可視,不可聴》(ICC ヴァージョン)が展示されていましたが、それとはまったく異なるバージョンになっていました。

もう一つは普段は立ち入りできないサンクンガーデンに出現する「坂本龍一+中谷芙二子+高谷史郎《LIFE–WELL TOKYO》霧の彫刻 #47662 2024」。本展の目玉とも言えるインスタレーションなので本記事後半で詳しく紹介します。

なお展覧会のタイトル《音を視る、時を聴く(seeing sound, hering time)》は80年代に哲学者の大森荘蔵と行った対話本からとられています。


展覧会前後に読んでみるのも良いかもしれません。

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アーティスト坂本龍一の代表作

まずはアーティスト坂本龍一としての代表作から紹介します。

《water state 1》, 坂本龍一+高谷史郎, 2013, 坂本龍一 | 音を視る、時を聴く, 2024, 東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲ダムタイプの高谷史郎とのコラボレーション《water state 1》。

2013年にYCAM/山口情報芸術センターで初公開されたインスタレーション。

水滴をコンピューターで制御し自在に落下させることができる装置が天井に設置され、下の水盤の表面に水滴をしたたらせ、坂本龍一の音楽とともに様々な波紋を生み出すというものです。

それだけでなく、音楽に連動して水滴が上から落ちる動き以外に下からの振動による動きもあります。水盤の底面にスピーカーが設置され、スピーカーから発する低音の振動が水に伝わり、水面に見たこともない不思議な模様を描き出します。

また水盤の周囲に置かれている石も作品の一部です。高谷史郎が展示会場に縁のあるものを選んで設置しています。

落下する水滴だけ、水盤の波紋だけを見て展示室を後にせず、水滴と波紋の両パターンの状態を鑑賞しましょう。

 

《LIFE–fluid, invisible, inaudible…》, 坂本龍一+高谷史郎, 2007, 坂本龍一 | 音を視る、時を聴く, 2024, 東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲坂本龍一のオペラ「LIFE」をもとにしたインスタレーション作品《LIFE–fluid, invisible, inaudible…》。

展示室内に9個の水槽が吊り下げられ、水槽に発生する霧と床に投影される映像、坂本龍一のサウンドなどを体験するインスタレーションです

水槽内、床の映像と情報量が多く、それが9個もあるので鑑賞には時間がかかります。

《IS YOUR TIME》, 坂本龍一 with 高谷史郎, 2017/2024, 坂本龍一 | 音を視る、時を聴く, 2024, 東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲2011年の東日本大震災の津波で被災したピアノを作品化したのが《IS YOUR TIME》。

2017年の作品ですが今回の展覧会に向け、世界各地の地震データによって音を発する装置として生まれ変わっています。

時々ポロンとピアノが鳴りますが、それは世界中のどこかで地震が発生したことを告げるものです。地震の発生はランダムなのでピアノが鳴るまで待ってみましょう。

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2024年の新作

本展のためにコラボレーション・アーティストたちが坂本龍一のサウンドを使って制作した新作が目玉でしょうか。

《TIME TIME》, 坂本龍一 + 高谷史郎, 2024, 坂本龍一 | 音を視る、時を聴く, 2024, 東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲《TIME TIME》は舞台作品「TIME」をもとに制作されたもの。

1階展示室の最初の作品がこれですが、20分ほどの長い映像です。タイミングによっては観客が滞留してしまうので、混んでいたらいったん他の作品を鑑賞して、空いているタイミングでこの作品を視るのが良いと思います。

《TIME TIME》, 坂本龍一 + 高谷史郎, 2024, 坂本龍一 | 音を視る、時を聴く, 2024, 東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲《TIME TIME》には田中泯がパフォーマー、朗読者として登場するのが話題ですが、それ以外にも笙奏者の宮田まゆみも登場したりします。

《async–immersion tokyo》, 坂本龍一 + 高谷史郎, 2024, 坂本龍一 | 音を視る、時を聴く, 2024, 東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲2013年のAMBIENT KYOTOで発表された作品を再構成したもので、完全な新作ではない《async–immersion tokyo》。

壁一面を使った大型の映像と音響によるインスタレーションです

《Music Plays Images X Images Play Music》, 坂本龍一 + 岩井俊雄, 1996-1997/2024, 坂本龍一 | 音を視る、時を聴く, 2024, 東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲本展を締めくくるのは《Music Plays Images X Images Play Music》(通称MPI x IPM)。

1997年にメディアアーティストの岩井俊雄とコラボレートした際のMIDIデータと映像データから2024年に再構成したものです。

まるで坂本龍一がその場でピアノを弾いているかのようなインスタレーションです。

このように、東京都現代美術館という大規模施設の空間を使い切った大規模インスタレーションが多く、坂本龍一のサウンド世界や高谷史郎をはじめとしたアーティストによるビジュアルとサウンドを堪能できる展覧会です。

ここまで写真付きで紹介した作品以外にもタイの映像作家アビチャッポン・ウィーラセタクンとのコラボ映像が2本(そのうちの《Durmiente》はあのティルダ・スウィントンが主人公です)。さらにドイツのアーティストであるカールステン・ニコライ(ミュージシャン名アルヴァ・ノトとしても知られる)の最新映像、そして「坂本龍一アーカイヴ」という資料展示などがあります。

▲アルバム「async」制作にインスピレーションを与えた書籍や写真なども展示されています。

ライアル・ワトソンの「水の惑星」、カート・ヴォネガットと「スローターハウス5」、フィリップ・K・ディックに超ひも理論など80年代のニュー・サイエンス、サブカルチャーど真ん中のセレクトで、いわば坂本龍一の種明かしとも言えるような展示です。

▲ビートニクの先駆者で多くのビートニクやヒッピーをタンジールに向かわせたポール・ボウルズと「シェルタリング・スカイ」。坂本龍一は映画「シェルタリング・スカイ」の音楽を担当しています。

そして雪の研究で知られる物理学者の中谷宇吉郎とその娘の中谷芙二子。中谷芙二子は本展のスペシャル・コラボレーターとして取り上げられています。

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中谷芙二子の霧の彫刻

そして本展の最大のおすすめはメディアアートの先駆者で霧の彫刻でも知られる中谷芙二子のスペシャルコラボレーション《LIFE–WELL TOKYO》霧の彫刻 #47662

《LIFE–WELL TOKYO》霧の彫刻 #47662, 坂本龍一 + 中谷芙二子 + 高谷史郎, 2024, 坂本龍一 | 音を視る、時を聴く, 2024, 東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲10:30から17:30までの毎時00分と30分から10分間、サンクンガーデンが霧と音と光に包まれます。

天候、風向・風力、気温、湿度などにより霧の姿は変化しますので、一度として同じ霧を見ることはできません。

《LIFE–WELL TOKYO》霧の彫刻 #47662, 坂本龍一 + 中谷芙二子 + 高谷史郎, 2024, 坂本龍一 | 音を視る、時を聴く, 2024, 東京都現代美術館 写真:建築とアートを巡る

▲サンクンガーデンの中にも入れますから、霧と一緒になることもできます。

聞こえてくるサウンドは霧を発生させる装置のシューっという音と坂本龍一の創り出したサウンド。

この霧は人体に無害な水を使って生成しています。安心して霧の中に足を踏み入れてみましょう。

▲北側の壁の上に設置された鏡が太陽光を反射し霧の中に光の道が浮かび上がります。この演出は高谷史郎です。

サンクンガーデン内で霧の彫刻を体験するには《坂本龍一 | 音を視る、時を聴く》展の入場券が必要ですが、誰でも入れる美術館前広場や地下1階の水と石のプロムナードからも見ることができますし、そうした場所から見下ろして鑑賞するのも楽しいです。

中谷芙二子は今でこそ「霧の彫刻家」としての活動が知られるようになっていますが、メディアアートの先駆者としての顔も持っています。

ビデオの出現を誰もが発信できる新しい民主的なメディアとして捉えビデオアートの分野で活動したり、初期Twitterのような世界中の個人がフラットに発信できるメディアの原型のようなシステムを70年代初期にテレックスを用いて実現したりしていた人物です。その中谷芙二子の作品を高谷史郎がメディアアートの偉大な先達としてレスペクトして演出を行ったコラボレーションなので見逃すことはできません。

また中谷芙二子の霧の彫刻は近くでは品川シーズンテラスや昭和記念公園、それ以外では長野県立美術館でも常設展示(冬季を除く)されていますから、機会があればそうした作品も体験してみてください。

中谷芙二子は物理学者で雪の結晶の研究で名高い中谷宇吉郎博士の娘でもあります。石川県にある「中谷宇吉郎 雪の科学館」では父親が収集したグリーンランドの石と、娘の霧の彫刻のコラボレーションを見ることができます。

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《坂本龍一 | 音を視る、時を聴く》展を見に行くなら

写真撮影について

本展は写真撮影が可能ですし、動画撮影も1分以内であればOKです。ただし《TIME TIME》とアビチャッポン・ウィーラセタクンの2本の映像だけは動画撮影禁止です。

あとフラッシュ、一脚・三脚、自撮り棒も使用できません。

また静謐なサウンドが使われているのでフラッシュ音については最大限の配慮を求められています。

開幕当初からかなり混雑している展覧会です。会期が進み混雑するにつれ撮影ルールが変更される可能性が大いにあります。訪問時の最新のルールに従って写真撮影するようにしてください。

立体作品もあり混雑もしてるので大きな荷物や背負バッグなどはあらかじめロッカーに預けるなどマナーも守って鑑賞するようにしたいですね。

霧の彫刻について

10:30から最終回の17:30まで、30分おきに1日15回も霧の彫刻が出現します。

ただ15:30以降の回は太陽の位置が低くなるので鏡を使った光の演出を見ることができません。その代わりLED照明が地面と霧を照らす様子を見ることができます。でもやはりベストは午前中からお昼ごろにかけてでしょう。

また霧は水で出来ていますから霧の中に入ると身体や衣服や靴がそれなりに濡れます。冬季は気温も低いので霧の中で体験するなら相応の準備をして行くのが良いでしょう。もちろん霧の中に入らず館内やサンクンガーデンの上からも見ることができます。

私たちは全国各地で「霧の彫刻」をみていますが、冬の鑑賞は初めてです。

そもそも常設の「霧の彫刻」は冬場は休止しているからです。自身初の冬の「霧の彫刻」はとにかく寒い!

まとめると、

・天気は晴れている日の方が良い

・適度に風が吹いていると霧が流れて面白い

・光の演出を見るには午前中から午後2時頃までがベスト

・日が落ちた後はLEDでライトアップされたようになるので日暮れ後も狙い目(寒いけど)

・濡れてもよい靴と服装がおすすめ(霧は水なので濡れます)

・外に出るので暖かい服装で、濡れるので吸水するニットなどは避けた方が無難

・最近のスマホは防水が多いけれど、事前にどこまで濡れても大丈夫か確認しておこう

・30分おきに霧が出るので見逃しても焦らせない

・サンクンガーデンで、地下2階の館内から、1階エントランスホールから、地下1階水と石のプロムナードから、美術館前広場から見られます。しかも見る場所によって印象が異なるのでいろんな場所から見るべき!

混雑状況

一言で混んでいます。

1月の3連休時にはチケット購入まで30分、会場への入場待ちに60分、最大90分待ちといった事態にもなっていたようです。学生の冬休み時期、そして3月は18歳以下無料になりますから平日含めガラガラに空いている日は、ほぼないと思った方が良いでしょう。

それでも平日の開館直後の時間帯はそれほどでもないかもしれません。霧の彫刻にも良い時間帯なので、天気が良い平日に時間が取れたら東京都現代美術館まで足を運んでみましょう。

その日の混雑状況は東京都現代美術館が公式X(旧Twitter)でアナウンスしていますから、そうした情報を参考にするのも良いと思います。

週末は朝からチケット売り場に行列ができていますから、事前にオンラインでチケットを購入しておくのも良いです。QRコードが発行されるので、美術館のチケット売り場に並ぶことなく直接展示室入口に向かい、入口でQRコードを提示して入場することができます。10時の会館に合わせて行けばほぼ待ち時間ゼロで入場できます。

最後に閉館間際を狙うのはオススメしません

なぜなら鑑賞には3-4時間くらいかかる可能性があるし、「霧の彫刻」は鑑賞場所を変えて何度も楽しみたいからです。

鑑賞時間

そして鑑賞時間ですが展示作品が10点余とはいえ映像作品もありますし、インスタレーション作品もちょっと見て終わりという作品はありませんから想像以上に時間がかかります。

私たちは展示室を1周半して霧の彫刻を5回見てトータル4時間半でした。

たぶん他の人も同じようなものでしょうから、最低でも3時間は見ておくのが良いと思います。

MOTアニュアル展とコレクション展もありますから、それも含めれば5時間コースですね。

また東京都現代美術館へ行ったなら充実したパブリックアートもお忘れなく。

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特設ショップ

坂本龍一展特設ショップは1階ミュージアムショップ奥のホワイエにあります。

▲展覧会公式図録は2025年2月刊行予定。

現時点では普段あまり手に取ることができない坂本龍一関連商品やCD・書籍などが並んでいます。

▲戦メリ Tシャツや千のナイフトートバッグなど。

▲フグレンのコーヒーや坂本龍一が好きだったウェハースなども。

今のところ特設ショップの方はさほど混んでいません。買うだけで行列するようなことはありません。

展覧会も3月は大混雑になるでしょうから、1月の年明けから2月頃の、できれば天気が良いけどちょっと風が吹いているような日の午前中に訪問してみましょう。

いつもの高谷史郎に加え中谷芙二子というメディアアートの伝説的人物と坂本龍一のコラボレーションが体験できる「霧の彫刻 #47662」はとにかく貴重です。これを体験しておけば将来にわたって自慢できること間違いありません。

基本情報

坂本龍一 | 音を視る 時を聴く

会期:2024年12月21日(土) - 2025年3月30日(日)

開館時間:10:00-18:00 (入場は閉館30分前まで)

休館日:月曜日 (2月24日は開館)、2月25日

観覧料:一般 2,400円、大学生・専門学校生・65 歳以上 1,700円、中高生960円、小学生以下無料
2月1日(土)、2月2日(日)は学生無料
3月1日(土)〜3月30日(日)の期間、18歳以下無料

会場:東京都現代美術館

住所:江東区三好4丁目1−1 MAP

アクセス:地下鉄清澄白河駅から徒歩、有料駐車場あり

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