東京都現代美術館で開催されている若手アーティスト、ユージーン・スタジオの個展「ユージーン・スタジオ 新しい海」を鑑賞してきました。
展覧会風景
写真映え、動画映えする作品がたくさんあります。
展覧会風景は動画を参照ください。▼
PR「ユージーン・スタジオ新しい海」鑑賞の注意点
写真撮影について
展覧会は、一部の作品をのぞいて写真及び動画の撮影が可能です。
24「想像」は写真・動画共に禁止です。禁止どころか鑑賞の際にスマートフォンやカメラは持ち込めません。詳細は下部にて。
35「Our dreams|夢」は写真撮影は可能ですが、動画の撮影は禁止です。この2作品以外は、全て写真も動画も撮影可能です。
「想像」の鑑賞は整理券制
前述したこの展覧会で唯一撮影禁止の作品「想像」は、整理券制です。
なぜなら、1人づつ入って体験する作品だからです。整理券をどこでもらうかというと、展覧会場の作品の入り口前で配布しています。
下の写真のドラムセットの作品(京都造形芸術大学時代の卒業制作である「あるスポーツ史家の部屋と夢#連弾」)の近くの、立っている人が係員の方です。▼
扉前にいる係員の方に、体験したい旨を伝えてください。特に呼び込んだり、ここに体験型の作品があることを宣伝したりはしてないので、私が見る限りスルーする人が多かったようです。
壁にこのような案内が書いてあります。▼
体験人数は1日16人?!
30分に1人なので、開館時間を単純計算すると1日16人しか体験できない計算です。どうしても体験したい方は、早めにいくことをお勧めします。
30分おきに1人づつの枠ですが、体験時間は1人15分です。私は14:00ー14:30の枠でした。平日の12時前にこの作品前に行ってこの時間でした。だいたい2時間後ということになります。
この作品の体験者(整理券を持つ人のみ)が、再入場可能です。チケットと整理券を会場入口で見せる必要があるので、なくさないようにしましょう。▼
PR「想像」がどんな作品なのか(ネタバレ)
ここから先は、「想像」がどんな作品についてです。知りたくない人は読まないでください。
善光寺のお戒壇めぐりを経験したことがある方はわかるかと思うのですが、あのくらい真っ暗です。タレルの作品のように目が慣れてくると、何かが見えるということは一切ありません。最初から最後まで真っ暗闇で、何一つ見えません。
中に入る前に、スマホや荷物を預けます。指輪やアクセサリーなど、落ちる可能性があるものは、預けるように言われます。あとで分かったのですが、確かにあの空間で何か落としても探せません。ですから、そういう類いのものは、はずして預けるように言われます。そもそもこの説明を聞いている空間がもうすでにかなり暗いです。
説明を聞き、ものを預けたらようやく作品体験のスタートです。まず3重になっている暗幕の先に漆黒の闇があります。そこの足元には、カーペットが引かれています。カーペットは80cm幅くらいでまっすぐ目指す作品まで続いています。ですから、足元のカーペットと既存の石の床との境にできた少しの段差を、足で辿りながらまっすぐ前に進みます。それ以外に前方を知ることのできる情報は一切ありません。
最初、闇雲に進んだら、気付いた時には石の床の上でした。しゃがんでカーペットのあるところを必死で探し、軌道修正して前に進みました。真っ暗闇すぎて前がどこだかさえわからないのです。ですから、こっちがおそらく前だろうという方向に進んだら、偶然あっていたようです。
そんな感じで、恐る恐る前に進むと、ようやく台座の上に乗った人体の彫像にたどり着きました。それを触って鑑賞するというのが「想像」です。私が手を伸ばして頭頂部まで触れるくらいなので、台座込みで高さ2m前後だと思います。台座がおおよそ1mくらい、ですから彫像そのものの高さは1m前後です。素材はブロンズのような金属に感じました
人体の作品そのものよりも、私はわずか数メートル先にある、そのあるべき彫像までたどり着く過程が、ものすごいドキドキしました。
帰りは、どのくらいの距離感なのかがだいたい分かっているので、難なく出られたのですが、それでも真っ暗闇でスタスタと歩くのは怖くて、手探りでゆっくりと進みました。
中の様子をカメラで撮られていたら、ものすごいチキンぶりだったと思います。本当に暗闇って怖い!体験時間はおおよそ12−3分でした。15分経つと係の方から呼ばれるのですが、その前に出てしまいました。
14:30頃体験を終えて扉の外に出たら、整理券は終了していました。▼
PR展覧会見取り図
これが会場で配布している見取り図です。▼
見取り図の最下段にある作品「小さな共通項(36人で見上げた空)」は、目の前に行ってじっくり鑑賞するような場所ではなく、上からだったり遠くから眺めるような位置にあります。そんな難しい場所ではないので、作品は難なく探せます。▼
今後、SNSでこの展覧会の様子は大きく広まり、会期後半になればなるほど混雑が予想されます。早めに鑑賞する方がいいのではないかと思います。
ユージーン・スタジオ
ユージーン・スタジオは、世田谷にオフィスのある会社組織ですが、寒川裕人のアーティストスタジオです。アーティストは多かれ少なかれある程度の規模になると皆、会社組織の事務所やスタジオを持っていますが、この展覧会でアーティストの個人名ではなく、わざわざスタジオ名を掲げているのは、どうしてなのかな?
素朴な疑問
名和晃平のサンドウィッチや、村上隆のkaikaikikiなど優秀な制作スタジオを持つアーティストは多いです。でも展覧会や活動にサンドウィッチやkaikaikikiを名乗ることはありません。あくまで制作の裏方です。もちろんクレジットはされているでしょうけれど。
この展覧会が「寒川裕人展」ではなく「ユージーン・スタジオ」なのは、どちらかというとよく引き合いに出されているチームラボやライゾマティスクに近いって理解でいいのでしょうか。
わざわざ裏方である自分のスタジオ名で展覧会や活動をする理由ってなんなのでしょう。冒頭の展覧会タイトルから素朴な疑問が湧き上がってしまいました。誰か教えてください。
平成生まれ初の展覧会
なんでも、東京都現代美術館としては初の”平成生まれのアーティストの展覧会”だそうです。ここでは、美術館としても”平成生まれのアーティスト”と個人の事を指しているようですが、グループ?組織?集団?の展覧会ではないのかな。そんな事、いちいち追求しなくてもいいのかもしれませんが、なんかのっけから?だったのでついつい。
そんなユージーン・スタジオの疑問は公式展覧会図録や横浜美術大学の宮津学長の解説などを読めば解消するかもしれません。会場でも販売していますがAmazonからも購入可能です。
PR写真映えする作品空間
美術館の既存のフローリングの上にタイルを貼って、いつもの展示室とは別世界に仕上げています。置いてあったベンチもいつものベンチではありません。おそらくユージーン・スタジオデザイン・制作でしょう。
追記:2022.1.10のギャラリートークでユージーンスタジオ制作だと明言していました。
床を張り替えた新しい空間と展示作品のカラートーンや佇まいがとてもマッチしていました。▼
さすが、平成生まれだけあってどの作品も写真映えする作品ばかりです。
水で満たされた大空間、金箔と銀箔がキラキラと頭上から降り注ぐ暗闇、サイコロの目が毎日変化する作品などなど、既視感は否めませんが、今後に期待したい若手作家チーム?グループ?です。
そもそもユージーン・スタジオとしての創作活動の源って何なのかなぁ。表現方法が多種多様なのはいいと思うのですが、全ての作品に通底するコンセプトってなんなのだろう。それがちょっと見えてこないなと個人的には感じました。
2022年1月10日に行われた特別プログラムについて▼
基本情報
2021年11月20日(土)-2022年2月23日(水・祝) 10:00-18:00 月休、年末年始 (12/28-1/1 )
東京都現代美術館 企画展示室 地下2F
江東区三好4丁目1−1 MAP
現在、東京都現代美術館で同時開催されている展覧会については下記記事を参照ください。▼
せっかく清澄白河まで来たら周辺のカフェもまわりたい!という方はこちらを参照ください。▼