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秋の直島その5 安藤忠雄設計 李禹煥美術館


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李禹煥美術館

ベネッセアートサイト直島にある李禹煥美術館は、建築家安藤忠雄の建築と現代美術作家の李禹煥の作品が融合した美術館です。

オープンは2010年で、2013年にオープンした家プロジェクトのANDO MUSEUMの次に新しい美術館ということになります。

李禹煥

▲上の写真の作品をSNSなどでみたことある方も多いのではないでしょうか。この海辺に建つ大きなアーチは、李禹煥の作品で、李禹煥美術館のアイコン的な存在です。

李禹煥は1936年韓国生まれで1956年に来日しました。1968年頃から日本で本格的な作家活動と評論活動を始めます。

そして、1960年代末から1970年代初頭の日本美術の重要な一つの動向である「もの派」の代表的な作家の一人として世界的な知名度を誇るアーティストです。

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もの派って?

「もの派」とは、アーティスト10数名の表現傾向に与えられた名称です。李禹煥の他に、関根伸夫、菅木志雄、吉田克朗、成田克彦、小清水漸、榎倉康二、高山登、原口典之などが主な作家です。

共通しているのは、ものをできるだけそのままの状態で作品の中に存在させることで、そのもの自体に語らせることを目的としています。しかし、それ以外は各々作家によって考え方やテーマに差異があります。

戦後日本の現代美術として、具体美術協会とともに海外からの評価が高いのですが、具体とは違って「もの派」は芸術的運動ではなく、前述した10数名に付けられた表現傾向であって、アーティスト自らがこの名称を名乗ったわけではありません。

美術館へ

残念ながら館内は撮影禁止のため、写真は屋外作品と美術館の受付までのアプローチのみとなります。

柱の広場

ベネッセのシャトルバスのバス停から、このような階段を降りて美術館へ向かいます。左側は高いコンクリートの壁が立ちはだかり、視界は自ずと前方に向けられます。

視線の先の玉砂利の敷かれたエリアに、何やら石がゴロリと置いてるあるのが目に入ります。▼

李禹煥美術館「関係項ー点線面」

さらに、進むと石の横にとっても長い柱のような棒が立っています。そして、その奥には鉄板が置かれているのがわかるでしょうか。

この3つの物体、石、棒、鉄板、を素直に受け止めると「点線面」と捉えることができますね。この3つで李禹煥の「関係項ー点線面」(2010年)という一つの作品なのです。

ここからもう李禹煥美術館の展示は始まっています。

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柱の広場にある李禹煥「関係項ー点線面」▼

李禹煥美術館 「関係項ー点線面」

そして、高い壁に阻まれていたその先に見えるのは、こんな風景です。ヒョエーーー!!▼

すごい、抜け感!瀬戸内の海とその向こうの山並みまで見えます。あのアプローチのコンクリートの高い壁は、この素晴らしい風景を見せるまでの”ため”の時間だったのですね。

「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」じゃないけれど、「壁を通り過ぎるとそこは瀬戸内海だった!」

建築家安藤忠雄の作戦にまんまと引っかかりました。シャトルバスから降りて、徐々にこの風景が見えるよりも、高い壁で阻まれていたところに、いきなりバーーーーーンッ!の方がインパクト10倍です。

で、もちろんここから見える石や鉄板、アーチなどは全て李禹煥の作品です。

手前が「関係項ー対話」(2010年)▼

李禹煥美術館 「関係項ー対話」(2010年)

ここで作品として置かれている石は李禹煥本人が、岡山、香川などの瀬戸内の採石場をめぐり、山間の河川にも足を運んで探してきた石です。

李禹煥は、作品に石を用いる時、作品が展示される地域で石を採取することを重視しており、その行動も作品の一部と言えるかもしれません。

色、形、大きさなど李禹煥の目によって選ばれし石をマジマジと眺めてみました。なんの変哲もない石なのですが、こういうシチュエーションに置かれていると立派な作品に見えてくるから不思議です。

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無限門

そして、中央のアーチが李禹煥美術館で最も新しい作品「無限門」(2019年)、左の作品は「関係項ー休息または巨人の杖」(2013年)です。▼

安藤忠雄設計 李禹煥美術館

もう少し無限門に近づいてみましょう。

よくみてください。両脇の石に押さえられてステンレスの板が湾曲しているのが分かります。実際は両脇の石ではなく、物理的にとめられているはずですが、すごい緊張感のある作品だったのです。

そして、このアーチの先に見える風景は、季節、天候、時間によって様々な表情を見せます。

まさに無限に変化する作品なのです。▼

安藤忠雄設計 李禹煥美術館

今回は、まるでルネマグリットの作品に出てくるような、真っ青な空にモクモクと白い雲が浮かんでいます。▼

安藤忠雄設計 李禹煥美術館

こちらは、2020年1月に撮影した無限門です。

上下を比較してみてください。空の色、海の色、芝の色、全てが全く違うのがよく分かりますね。

この表情の差を知ってしまうと、何度も通いたくなりますね。▼

安藤忠雄設計 李禹煥美術館

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アプローチ

屋外にある柱の広場の4つの作品を堪能したら、いよいよ館内へ入ります。

美術館は「関係項ー点線面」の背後にあるこのコンクリートの壁の先です。周りの木々の木漏れ日が美しい。▼

ここからは、また安藤忠雄の世界です。両側を高いコンクリートの壁に阻まれ、見えてくるのはコンクリートによって切り取られた空と先に見える緑だけです。

無機質なコンクリートに囲まれることによって、より一層空や緑の自然の美しさが際立つ仕掛けです。そして、このチラリズムが美術館へのワクワク感を高めてくれます。▼

関係項ーしるし

長い通路を進むと見えてくるのはこの景色です。左前方に何かありますね。▼

安藤忠雄設計 李禹煥美術館

そこには、テラコッタのレリーフがきっちりコンクリートの壁におさまっています。

硬質なコンクリート空間に突然ポッと現れる温もりのある質感と色、そしてそこにはおそらく焼かれる前に施したであろう手の痕跡。

ここで見るテラコッタの茶褐色は、普段テラコッタを見る時に感じる数倍温もりを感じます。なんかほっこりするこの作品は「関係項ーしるし」(2008年)です。そうか、手の痕跡はしるしだったんですね。

この空間は、まさに建築家安藤忠雄とアーティスト李禹煥によるコラボ作品です。▼

安藤忠雄設計 李禹煥美術館

テラコッタ作品のある空間から見る 歩いて来た道(左)とこれから通る道(右)です。

ここからの風景もかっこいいんですよね。▼

安藤忠雄設計 李禹煥美術館

李禹煥美術館はオンライン予約の必要はありません。この先にあるチケットカウンターで入場料を支払って入館です。

美術館は、館内に入る前の中庭に照応の広場、その先の館内に出会いの広場、小間、沈黙の間、影の間、瞑想の間と6つの空間で構成されています。

それぞれの間で、1970年代の初期の作品から、2017年までの李禹煥の作品を幅広く鑑賞することができます。

とても静かで気持ちが清められるような美術館です。

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美術館基本情報

李禹煥美術館

3月 ~ 9月10:00 ~ 18:00、10月 ~ 2月10:00 ~ 17:00 月休    開館カレンダー  入場料:1,050円

安藤忠雄設計の地中美術館は李禹煥美術館から徒歩で10分ほどです。▼

秋の直島その3 美術館の概念を覆す 安藤忠雄設計 地中美術館

同じく安藤忠雄設計のベネッセハウスミュージアムも李禹煥美術館から徒歩10分ほどです。▼

秋の直島その1 安藤忠雄設計 ベネッセハウスミュージアムの夜と朝

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