地中美術館
Benesse Art Site Naoshima/ベネッセアートサイト直島の地中美術館は、安藤忠雄設計で、その名が表す通り、その大半が地中、すなわち地下にある美術館です。
地中美術館は入り口の一部までしか撮影ができません。
そもそも全体感はドローンを飛ばさないと見られないので、今回いただいた2022年のカレンダーの表紙を見てください。▼
ベネッセアートサイト直島カレンダーは12枚綴りで、来年1年間毎月様々な直島・豊島・犬島を感じられるので嬉しい。
これから行かれる方は、マストアイテムです。
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安藤忠雄設計
他のベネッセハウスの施設がそうであるようにこの美術館も設計は安藤忠雄です。
直島の美しい景観を損なわないように、美術館を地中に作ってしまうという発想、さすが!
地中なのに、自然光がふんだんに入り、光が美しい空間という矛盾も難なく形にしてしまうのだからやっぱりすごいとしか言いようがないです。
地中にある美術館なので、その全容を見ることはできません。
初めて訪れるときは、どこに向かっているのか、自分は今、美術館のどのあたりにいるのか、さっぱり分からなくなります。(私だけかな?)
2度3度と訪れてようやく全体が掴めてくるので、これもまたリピーターが増える仕掛けなのかも。
美術館の概念を覆す
地中美術館はベネッセハウスミュージアムよりも宮浦港側に、2004年に設立された美術館です。
美術館というと、多くの額装された作品や台座に乗った立体作品が並んでいたり、ガラスケースの中に恭しく作品が並べてあったりというのを思い浮かべる人がほとんどでしょう。しかし、ここは全く違います。
人が抱くいわゆる”美術館”という概念を覆す全く新しい美術館です。何がどう普通の美術館と違うのか。
作家は3人
まず、地中美術館で作品が見られる作家は3人です。
3人というのは、あの睡蓮で有名なクロード・モネ、そして、地中美術館が設立されてから9年後に残念ながら77歳で亡くなったウォルター・デ・マリア、家プロジェクトの南寺でも作品が鑑賞できるジェームズ・タレルです。
恒久展示
美術館内には、この3人の作家の作品だけが恒久展示されています。
恒久展示なので、展示変えは基本的にありません。
展示室は各々作品のために設計されています。ウォルター・デ・マリアとジェームズ・タレルはサイトスペシフィック・ワークです。
チケット売り場を見守る地中美術館のニャンこ▼
クロード・モネ
その名を、その作品を、知らない人はこの世にいないくらい有名な印象派を代表する作家です。
43歳の時に移住したジヴェルニーの庭の睡蓮を描いたシリーズは、モネの作品の中でも特に人気が高く、現在でも世界中の美術館で重要なコレクションとして位置付けられています。
モネの部屋といえば、モネが最晩年に描いた水蓮の大作を恒久展示するオランジュリー美術館が有名ですが、地中美術館のモネ室も全く引けをとりません。
2022年カレンダーの最後を飾るものやっぱりモネ▼
はじまりは、モネ
そもそも、地中美術館の構想はオランジュリーと同シリーズの2mx6mのモネの「大装飾画」を入手したことから始まりました。
モネ自身のアイディアが具現化されているオランジュリーのモネの部屋は楕円形の2つの展示室に巨大な水蓮作品が展示されています。その壁はゆるくカーブしていて、鑑賞者はモネの作品に包まれるような感覚に陥ります。
オランジュリーを最後に訪問したのは遙か昔ですが、あの部屋に入った瞬間の光と水蓮に包まれるような感覚は今でも覚えています。
このオランジュリーの幻想的な空間がヒントとなっているのは否めませんが、地中美術館のモネ室は、オランジュリーの斜め上をいく、全く違うアプローチです。
白亜の空間
地中美術館のモネ室は、正方形ですが、部屋の角をとり、床壁天井全てが真っ白です。作品の額装も白いので白い空間に水蓮の作品が浮き上がってるように見えます。額装はおそらくコーリアンではないかな?と思いましたが未確認です。
壁は漆喰がムラなく塗られています。床には角が丸く削られた2cm角のイタリア産大理石ビアンコ・カラーラが敷き詰められています。
大理石は自然石なので、白と言っても一つ一つ石の色が微妙に違います。それがまたとっても美しく、白いモザイク画のようです。
大理石は傷つきやすいので、モネ室に入る前に鑑賞者はスリッパに履き替えます。
真っ白なのですが、石と漆喰なので全く冷たい印象はなく、それどころか、とても温かみのある空間に仕上がっています。そして、すごく心地いい。ここにくると自然素材の偉大さを実感せずにはいられません。
自然光で鑑賞
そして、このモネ室の1番の特徴は照明がないことです。モネの作品をその時間、その季節の自然光で鑑賞するのです。雨や曇りの日は少し暗いかもしれません。朝は明るく、夕方は少し赤みを帯びているかもしれません。訪れたその季節、その日、その時間だけの照度で鑑賞するのです。2度と同じ光で作品を鑑賞することはできないでしょう。
地中美術館にあるモネの作品は5点です。白い空間の柔らかな自然光でふんわりと浮かび上がるモネの作品は、他のどの場所で鑑賞するよりも印象深く、美しいです。
PRウォルター・デ・マリア
二人目の作家はウォルター・デ・マリアです。アメリカ出身の作家ですが、音楽家という一面も持っています。
階段状の大きな展示室は、作家本人の指示により設えられているので、この展示室が丸ごと作品です。
作品タイトルは「タイム/タイムレス/ノー・タイム」 。この部屋もモネ室同様照明は天井から降り注ぐ自然光のみです。
光と音
前回と光が全然違うと感じたのは、モネ室よりもこの部屋でした。いつもは宮浦港から家プロジェクトを経由して地中美術館にたどり着くので午後に訪問していましたが、今回は10時の開館と同時に入った上に、晴天だったこともあって、午前中のそれはそれは美しい光の中で作品を鑑賞することができました。本当に美しくてうっとりしました。前回とは印象がまるっきり違いました。
しかも、終始貸し切りだったのもラッキーでした。そのため、音楽家である作家本人が鳴らすドラムの音や、時折聞こえる鈴の音のような可憐な音など、空間と共にこの作品のもう一つの醍醐味である音を十分に堪能することができて大満足でした。
ウォルター・デ・マリアは作品を解説することを極端に嫌ったそうなので、実際に美術館に足を運んで、空間と光と音を感じるその行為が作品を理解することなんだと思います。
ドラマー
ちなみに、ウォルター・デ・マリアはドラマーで、あのアンディ・ウォーホルのベルベットアンダーグラウンドの前身のバンド、プリミティブスにいたことは有名です。プリミティブスには、なんとルー・リードやジョン・ケールも在籍していたんですからすごいです。
ウォルター・デ・マリアがドラムを叩いているザ・プリミティブズの曲を聴きながらこの文章を書いています。
ジェームズ・タレル
三人目の作家は、2019年の年間入場者数258万人を誇る金沢21世紀美術館にも恒久展示作品があるのですっかり有名になったジェームズ・タレルです。
私が最初にタレル作品に出会ったのは、1995年、現在はもうない横浜ポートサイドギャラリーでの展覧会で「Backside of the Moon」を鑑賞しました。この時の衝撃は今でも忘れられません。
この写真は地中美術館の入り口を見上げの図で、タレルの作品ではありません▼
3つの光
現在、地中美術館で見られるタレル作品は、「アフラム、ペール・ブルー」、「オープン・フィールド」、「オープン・スカイ」の3点です。
3点の中で最も古い1968年制作の「アフラム、ペール・ブルー」は、光を投射している作品です。
2000年制作の「オープン・フィールド」は、縁取ることで光を切り取った作品です。
2004年の「オープン・スカイ」は投射したり、切り取ったりしていた光そのものを自然の光に変えた作品です。
地中美術館の3作品は、タレルが取り組んできた「光」の変遷を辿る秀逸なコレクションです。
ちなみにオープンフィールドは、靴を脱いで鑑賞します。(スリッパはありません)
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最高だったナイトプログラム
地中美術館では、タレルの「オープン・スカイ」を日没時間にあわせて45分間鑑賞できる特別なプログラムがあります。
今回初参加だったのですが、強く強くお勧めします。オーバルスイートの広いバルコニーで日没を見るか、ナイトプログラムに参加するか少し迷ったのですが、結論!一度は、ナイトプログラムに参加した方がいい!
地中美術館入口から垣間見えるおにぎり。10:10頃▼
ナイトプログラムに向かう時、同じ場所17:41。これだけでも十分美しい▼
プログラムの内容について、文章で書くのはかなり難易度が高く、絶対に伝わらないので、とにかく行って体験してください。45分はあっという間です。
気づいたらずっと上ばかり見ていたので首が痛かったのですが、鑑賞中は気になりませんでした。
疑問と感動
本当にこれ、自然の空なのかな?と疑問を感じるのですが、時折鳥が飛んだり、虫が入ってきたりして、ああやっぱり開口してるんだ。と実感します。昼間にも見ているので、開口していることはわかりきっているのですが、え?え?錯覚なの?現実なの????の嵐です。
日没時間や、その日の天気によって照度は毎日毎日違うのに、一体全体どうやってプログラミングしているの?という疑問と、色と照度に対する目の錯覚と刻々と変わる自然の光ってすごい!という感動と疑問が交互に湧き上がってきます。
真っ白なユニフォームを着用している地中美術館スタッフに先導されてナイトプログラムへ。壁には夕焼けが反射しています。▼
ナイトプログラムの注意点
毎週金・土に開催されるプログラムです。完全予約制なので、事前に予約をしないと参加できません。定員は35名です。
ナイトプログラムは美術館閉館後の鑑賞なので、「オープンスカイ」の作品以外は鑑賞できません。ですから、開館中に地中美術館を鑑賞し、日没時間に再度訪問するということになります。当日鑑賞できなかった場合は翌日の入館が可能です。
開館してすぐの10:20頃▼
閉館後、ナイトプログラムに向かう17:40頃。光が全く違います。▼
9名以上の団体、未就学児の参加不可です。もちろん写真・動画撮影も不可です。
日没に合わせてのプログラムなので開始時間は、季節ごとに変わります。ベネッセハウス宿泊者は、送迎バスにて行き来します。宿泊者でない人は自力で行き来しなければならないので、参加はなかなか難しいかもしれません。
プログラム中、出入りしたり途中退席はできませんので、トイレは事前に済ませておきましょう。
4人のコラボ
地中美術館の展示作家は3人ですが、4人目の作家として安藤忠雄は外せません。地中に埋まっているけれど、自然光が美しいこの美術館そのものが大きな一つの作品です。
ものすごい量の作品を鑑賞できるメガ美術館よりも満足度が高いのは、鑑賞するのではなく、作品そのものに入り込む体験ができるからです。
時間を変えて、季節を変えて、何度でも訪問したくなる世界的にも類を見ない唯一無二の美術館です。
PR地中カフェ
地中美術館にはミュージアムショップと共に地中カフェという瀬戸内を見渡せるミュージアムカフェがあります。
ここも必ず立ち寄りたい場所です。
テラスに出ることも可能です。▼
コロナ対策で昨年の訪問時よりも席数が少なくなっていました。視覚と聴覚をフル活動させたら、味覚を満足させたいのは自然な流れです。
こちらはご当地メニューの瀬戸内デットクスジュース、セトポンです。爽やかで美味しかった!▼
美術館内のカフェなので、カフェのみの利用はできません。
地中美術館基本情報
3月~9月 10:00~18:00、 10月~2月末日 10:00~17:00 月休 開館カレンダー
入場料:2100円 オンライン予約
ベネッセハウスミュージアムについてはこちらを▼
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