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坂倉準三、大高正人、佐藤総合計画設計 3つの神奈川県立近代美術館建築について


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「神奈川県立近代美術館」は現在、葉山館と鎌倉別館の二つの施設があります。

しかし、遡ると元々は坂倉準三設計の「神奈川県立近代美術館旧鎌倉館(現在の鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム)」からスタートしています。

現在ある葉山館鎌倉別館、それと今は閉館してしまった日本で最初の公立美術館だった旧鎌倉館の建築についてレポートします。

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3つの神奈川県立近代美術館はいつできた?

神奈川県立近代美術館は日本初の公立美術館として1951年に誕生しました。

旧神奈川県立近代美術館(旧鎌倉館)は、鎌倉の鶴岡八幡宮境内に坂倉準三の設計により1951年に竣工。1966年には隣の敷地に新館(通称別棟)が建設されていますが、2016年に解体されています。

旧鎌倉館のある場所は鶴岡八幡宮が所有する土地で、神奈川県が鶴岡八幡宮から借り上げる契約を結び建設されました。

そしてその土地貸借契約が2016年3月末に満了となったため旧鎌倉館は2016年に閉館しました。

契約では返還の際に土地を更地にして戻すことが条件でしたが、鶴岡八幡宮は建築的価値が高い旧鎌倉館の建築を解体せずに耐震補強工事を行い、「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」として2019年に再オープンさせています。

旧鎌倉館建築は 1999年にDOCOMOMOの日本の近代建築20選に選出され、鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムとなってからの2020年には国の重要文化財に指定されました。

神奈川県立近代美術館の現存する3つの建築と解体された新館別棟について整理すると以下となります。

○神奈川県立近代美術館(旧鎌倉館 現在の鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム)

坂倉準三設計 1951年竣工 2016年神奈川県立近代美術館閉館 2019年鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムとして再生

神奈川県立近代美術館新館(別棟)現存せず

1966年竣工 2016年解体

○神奈川県立近代美術館鎌倉別館

大高正人設計 1984年竣工

○神奈川県立近代美術館葉山館

佐藤総合絵計画設計 2003年竣工

坂倉準三設計 旧神奈川県立近代美術館鎌倉館(現在の鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム) 写真:建築とアートを巡る

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神奈川県立近代美術館旧鎌倉館はどんな建築?

現代建築の巨匠ル・コルビュジエの設計事務所出身の坂倉準三が設計した神奈川県立近代美術館鎌倉本館は、鉄骨構造2階建て、延床面積1,575平方メートルの美術館です。

美術館規模としては、現在の感覚だとコンパクトな美術館ですが、この美術館の設計者を決めるための設計コンペに参加した建築家は大物ばかりでした。そのメンツは坂倉準三、前川國男、吉村順三、谷口吉郎、山下寿郎です。このコンペで坂倉準三が設計者と選ばれ、今日の神奈川県立近代美術館があります。

また、この美術館竣工の7年後にはル・コルビュジエによって上野に国立西洋美術館が竣工します。

旧鎌倉館の建築も、また師匠ル・コルビュジエの国立西洋美術館も、美術館のメインエリアは2階にあり、その下はピロティになっています。また、大谷石をふんだんに使った建築の内部には中庭があり、中央にはイサム・ノグチの彫刻が常設されていました。

池に面して広いテラス空間があり、内部空間と外部空間とその中間領域がゆるやかに交差する気持ちの良い美術館でした。とっても美しい階段があったのも印象的です。

中庭にあったイサム・ノグチの彫刻や池にあったアントニー・ゴームリーの彫刻は、閉館の際に葉山館に移設されているので今でも見ることができます。

基本情報

鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム神奈川県立近代美術館 旧鎌倉館)

鎌倉市雪ノ下2丁目1−53  MAP

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神奈川県立近代美術館鎌倉別館はどんな建築?

旧鎌倉館から徒歩で10分弱のところに位置するのが「鎌倉別館」です。設計は前川國男設計事務所出身の大高正人です。

大高正人は、建築家であると同時に都市計画家としても知られ、香川県にある「坂出人工土地」などを手がけています。身近なところでは六本木の海員組合本部会館も大高正人の仕事です。

建設前の発掘調査で、入口から前庭にかけて室町期の鶴岡八幡宮二十五坊跡が出てきたため、建物全体を山の方にセットバックさせるというハプニング?もありました。

エントランスは、キャンティレバーで2階部分が飛び出しているような建築です。

久しぶりに訪問したら奥のキャンティレバーの下にカフェが増設され、左右対象だった建築は非対称に変わっていました。

基本情報

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

鎌倉市雪ノ下2丁目8−1 神奈川県立近代美術館鎌倉別館  MAP

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神奈川県立近代美術館葉山館はどんな建築?

葉山を代表する一色海岸沿いで、海と空と富士山を背景にした立地が最高の美術館です。

その代わり森戸海岸線という海沿いの1本道にアクセスを依存するため、夏はバスでも自家用車でも大渋滞必至です。

海を見渡すレストランも大人気で、夏場は行列ができることも。

また旧鎌倉館にあったイサム・ノグチの彫刻「コケシ」は葉山館の広々空間に移設されました。

美術館を訪れるというよりも海を見に行くならアートも一緒に!くらいの気持ちでいつも訪れています。

都内からだと電車でも車でもそれなりに時間がかかるのですが、行ってしまえばとっても気持ちのいい大好きな美術館の一つです。

 

基本情報

神奈川県立近代美術館 葉山館

神奈川県三浦郡葉山町一色2208−1  MAP

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