コンテンツへスキップ

坂倉準三設計 天童木工 東京支店の 建築ツアーに参加しました!


フォローする
シェア:
記事の評価

1940年創業、山形県天童市に本社を構える家具メーカー天童木工の東京支店を見学してきました。

家具ショップIDEE、すなわち良品計画(2017年にIDEEは良品計画に吸収合併された)によるLife in Artが主催するTOKYO MODERNISM 2024というイベントで行われた建築ツアーに参加しての見学でした。

普段、天童木工で建築ツアーが行われているわけではなく特別企画の建築ツアーだったのでとても有意義で貴重な時間でした。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店 建築ツアー 写真:建築とアートを巡る
PR

天童木工とは

山形県天童市に本社を構える、日本を代表する家具メーカーです。今回見学したのは、天童木工の東京支店です。

天童木工は日本で初めて無垢材よりも強度があり、軽くて、自由な形に成形できる『成形合板』を実用化させたことで知られています。

1950年代から70年代にかけて発表された名作家具は「Tendo classics」シリーズとして今もなお根強い人気を誇っています。

中でも柳宗理デザインのバタフライスツールを知らない人はいないでしょう。木とは思えない流れるような曲線は天童木工だからこそ実現したデザインです。

剣持勇の柏戸イスや坂倉準三のチェア、磯崎新デザインのモンローチェアなどデザイナーや建築家の起用と高い技術力により、これまでに多くのロングセラー家具を生み出してきました。

前川國男設計の東京都美術館のカラフルな椅子も天童木工によるものです。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店現在のファサード 写真:建築とアートを巡る

天童木工東京支店建築ツアー

本社は山形県天童市にあるのですが、今回建築ツアーが行われたのは、浜松町と大門駅から徒歩約3分の場所にある東京のオフィスとショールームを兼ね備えた天童木工東京支店です。

1964年竣工で地下1階、地上4階の建築の設計は坂倉準三が手掛けました。なんと今年で竣工してからちょうど60年になります。

建築ツアーのガイドをしてくださったのは、生まれも育ちも天童市、お祖父様もお父様も含めて3代で天童木工に勤務するという、まさに天童木工の申し子といっても過言ではない加藤さんによるものでした。

ただ訪れただけでは知り得ない様々なお話が聞けてとても有意義でした。

建築ツアーガイドの天童木工の加藤氏、坂倉準三設計 天童木工 東京支店屋上 写真:建築とアートを巡る

ファサード

1964年に竣工した天童木工東京支店の現在のファサードは、残念ながら当時のものではありません。外壁の劣化により1992年に現在のファサードにリニューアルされました。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店竣工時のファサード 資料:天童木工建築ツアー

ですから、外観で竣工当時の面影を色濃く残しているのは、天童木工のサインが掲示されている赤い彫刻のような意匠と現在も美しい色を見せている窯変タイルです。窯変タイルとは釉薬が溶ける時の変化によって様々な表情を見せるタイルです。窯変タイルは、坂倉準三の建築で度々登場しています。例えば、新宿西口広場などにも多用されています。

また、サインの乗った赤い彫刻のような意匠は、色といい形といい坂倉準三ぽい造形です。

PR

天童木工東京支店エントランス

エントランスエリアは、正面の上部に周囲に勾配のついたニッチのような意匠が特徴です。これは坂倉準三の師匠であるフランスの建築家ル・コルビジェの影響を窺い知ることができるデザインです

また、外部から取り込まれた側面の窯変タイルの壁の上には、かつて守衛室の窓だったという開口が残っています。こちらもやはり周囲に勾配がありル・コルビジェを連想させるデザインです。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店 建築ツアー エントランス 写真:建築とアートを巡る

坂倉準三の美しい階段!

竣工時の状態が現在、最も維持されているのは階段エリアだそうです。

実際に目にしてみて確かにその通りでした。階段の裏側の彫刻のようなデザイン、優雅な曲線を描く木製の手摺、白い窯変タイル、扉に記されたサインのフォントなど1960年代を感じます。

そしてなんと言っても階段のカラーリングでしょう。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店 建築ツアー 階段 写真:建築とアートを巡る

▲この階段裏の造形の美しさたるや!窯変タイルとの調和も素晴らしい空間です。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店 建築ツアー 階段 写真:建築とアートを巡る

▲流麗な曲線を描く木の手すりもブランクーシの彫刻のようです。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店 建築ツアー 階段 写真:建築とアートを巡る

▲地下への階段は上階の黄色い階段とは打って変わって無彩色な中にシンプルで直線的な木の手すりがまるでエルスワース・ケリーの絵画のようです。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店 建築ツアー 階段 写真:建築とアートを巡る

▲竣工時は吹き抜けの大空間だったというショールームですが、竣工後間も無く家具を置く場所が少ないという理由で増築されたそうです。

その増築された上のフロアへ上がる階段は木製の踏面と蹴上が一体化した珍しいデザインです。

踏面と蹴上げが一体化したカーブは天童木工らしい技が光っています。

白と黄色のコンビの手すりも素敵です。

PR

坂倉準三の色彩

内部空間の様々な場所でキラリと光る差し色が、坂倉建築らしさを感じます。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店 建築ツアー 写真:建築とアートを巡る

▲地下にあった火災報知器横の配管は濃紺に塗装されていました。壁の白、火災報知器の赤、配管の青でトリコールになっています。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店 建築ツアー 写真:建築とアートを巡る

▲日本初の成形合板の高い技術を持つ天童木工の製作過程を見せるコーナーのダクトのカバーも濃紺です。

坂倉準三設計 天童木工 東京支店 建築ツアー 写真:建築とアートを巡る

▲黄色く塗装された巨大なダクトと配管は、坂倉準三によるものではなく、後に坂倉建築研究所の指示によって黄色になったそうです。全く違和感のない黄色です。

本来なら目立たせたくないものですが、黄色くすることで天井高のある吹き抜け空間の良いアクセントになっています。

PR

天童木工の家具

天童木工は家具メーカーですから、当然ショールームにはたくさんの木製家具が展示されています。

▲地下に整然と並ぶ椅子の数々。天井の意匠が坂倉建築らしいものでした。

▲こちらは丹下健三設計の国立代々木競技場第一体育館の来賓室の椅子です。

竣工時の来賓室の家具は天童木工の家具だったそうです。

▲剣持勇デザインの柏戸イス。1961年に剣持勇が熱海ガーデンホテルを手掛けた際にデザインされた椅子です。

無垢材を使った椅子は天童木工では珍しい存在です。
この椅子の名前の柏戸というのは、山形県が生んだ名力士・柏戸のことで、柏戸が横綱昇進の時に贈呈されたことから柏戸椅子と呼ばれるようになったそうです。

どっしりとした存在感のある椅子だから横綱の名前なのかと思いましたが、そうではなかったようです。

▲天童木工は椅子だけではありません。こちらのテーブルは映画「シンゴジラ」に登場したデスクそのものだそうです。映画の中で大杉漣演じる大河内総理が使ったらしいので映画をチェックしてみましょう。

さらに、リオ五輪の際にテレビをみていてとっても気になった卓球台の美しい脚の製作も天童木工の仕事です。(卓球台のデザインは澄川伸一)

また、自動車のレクサスのステアリングなど、実は天童木工だった!という仕事がたくさんあるのです。

そもそもこの建築ツアーに参加するまで天童木工のショールームが浜松町(大門)にあることも知りませんでした。

建築も家具も見られて大満足のツアーでした。

しかし、天童木工東京支店では通常建築ツアーは行っていません。

ただしショールームは、電話による事前予約制で見学することができるようです。

基本情報

天童木工 東京支店

東京都港区浜松町1-19-2 MAP

PR
シェア:
同じカテゴリーの記事 PR
PR
PR

コメントを残す