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過去最大規模の個展!宇野亞喜良展 AQUIRAX UNOを東京オペラシティアートギャラリーにて


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京王新線初台駅直結の東京オペラシティアートギャラリーでイラストレーターであり、グラフィックデザイナーの宇野亞喜良の個展が開催されています。

注目すべきはこの展覧会が過去最大規模であることです。

2022年にgggで個展「宇野亞喜良 万華鏡を鑑賞した方も少なくないでしょう。

gggの1階のスペースでは俳句と少女のシリーズが展示され、地階のスペースでは宇野亞喜良の活動の原点とも言える1960年代のポスターが所狭しと展示されていました。

「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

それだけでもかなり濃厚な空間で満足しましたが、今回はもっとすごい!

なんと宇野亞喜良過去最大規模の個展なんです。出品総数なんと900点です!これは見逃すわけにはいきません。

「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年
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宇野亞喜良

宇野亞喜良は、1950年代から半世紀以上にわたり、“黄金のサウスポー”を武器に、イラストレーターとして、そしてグラフィックデザイナーとして、常に時代の第一線で活躍してきました。折に触れその作品に意識的に、時には無意識に目にしている方も多いでしょう。

特に1960年代から70年代にかけては、寺山修司演出の天井桟敷公演をはじめ、アングラ系の劇団を中心としたサブカルチャーと深く結びつき、狂気や毒気、エロティシズム、情念を孕んだポスターやイラストレーション表現で一世を風靡したことは周知の事実です。

今回の展覧会では、60年代70年代の仕事はもちろんのこと、1950年代の企業広告をはじめとして、絵本や児童書、近年の俳句と少女をテーマとした絵画や衣装や立体作品、映像作品に至るまで宇野亞喜良のこれまでの仕事を全網羅した大展覧会です。

「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

展覧会構成

展覧会は12の章で構成されています。まず1章「プロローグ名古屋時代」からスタートします。若干19歳で当時のグラフィックデザイナーの登竜門だった日本宣伝美術会(日宣美)で入選を果たすなど、早熟な天才であることが窺い知れる展示です。

「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

2章. グラフィックデザイナー 宇野亞喜良、3章.企業広告、4章. アニメーション映画、5章.ポスター、6章. 絵本・児童書、7章. 版画集・作品集、8章. 新聞・雑誌、9章.書籍、10章.絵画・立体作品、11章.舞台美術、12章.近作・新作という構成です。

時間配分を考えて鑑賞しないとあっという間に何時間も経っているかも!?

「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

それでは、以下展覧会で個人的な思い出や気になった作品などをピックアップしてご紹介します。

宇野亞喜良の絵本・児童書

個人的な思い出になりますが、私が最初に宇野亞喜良と出会ったのは、子供の頃の本です。まさにこの絵本・児童書な訳です。残念ながらもう本は手元に1冊もないけれど、今でもはっきり覚えています。覚えているというよりも脳裏に焼きついているという方が正しいかもしれません。

あの本のイラストが宇野亞喜良だと気づくまでには何年もかかっています。なんせ最初の出会いは小学生だったので。

小学生だった私が宇野ワールドに足を踏みれいた最初の入口は、今江祥智の本でした。今江祥智の本は何冊か持っていたけれど全部が宇野亞喜良が装丁を担当していたわけではなかったように思います。何冊かあった今江本のうち今でもはっきり覚えているのが今江祥智の「海いろの部屋」です。

”海いろの部屋”「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

正直、小学生の時に読んだこの物語がどんな内容だったのかは、あまり覚えていませんが、宇野亞喜良が描いた絵は、鮮明に覚えています。

なぜなら展覧会場で、”魚の顔の女の子”を探す自分がいたからです。

ありました!原画が。思わず作品の前で「ぁ」と小さい声を出してしまいました。

他にもたくさん宇野亞喜良が手がけた絵本・児童書の原画が展示されていますから、懐かしい再会があるかもしれません。

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アーティストとしての宇野亞喜良

イラストレーターを自称する宇野亞喜良ですが、その仕事の幅広さや先駆者としての表現の多彩さには驚かざるを得ません。

「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

▲例えば1960年代に手掛けた雑誌表紙の数々。

サイケなピアズリーにスウィンギングロンドン、デヴィッド・ボウイが「ダイアモンド・ドッグ」で参考にしたのかもと思うようなアイディア。当時アメリカで勃興していたサイケデリックムーブメントと同期しているかのような先進性には眼を見張るばかりです。

「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

▲写真右上のは「ザ・フローラル」というGS(グループ・サウンズ)のグループのポスターで、宇野亞喜良はバンドコンセプト、衣装と楽器のデザイン、さらに作詞を担当しています。ああ、この頃から宇野亞喜良は音楽関係の仕事も手掛けていたんだなぁという話ですが、このあまり売れなかったグループ・サウンズは日本の音楽史の重要バンドなのです。

ボーカルを担当していたのが小坂忠。何枚かシングルを出した後にベースを細野晴臣にドラムを松本隆に入れ替え「エイプリルフール」と名乗るようになります。そして小坂忠が離れたことで残った二人が大瀧詠一と鈴木茂を誘ってできたのが「はっぴいえんど」。

宇野亞喜良のコンセプトで出発した当時のメンバーは誰もいないけど、日本のロックの源流のその原点に宇野亞喜良が居たというのはとっても興味深いです。世界のアート、ポップアートの流れにも敏感だった宇野亞喜良だからこそのエピソードだと思います。

「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

▲60年代の前衛舞踏のポスター(右端:伊藤ミカの「愛奴」)、70年代のイギリスプログレッシブ・ロックのポスター(中左:ピンク・フロイド「狂気」の販促用)など、常に時代の最先端のアーティストたちから声がかかるのが宇野亞喜良です。

“澁澤龍彦考”「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

▲1996年、澁澤龍彦没後10年を機に制作された《澁澤龍彦考》。

澁澤龍彦の世界観をコラージュで表現した珍しい作品です。同時代に似た世界観を持ちながら異なる表現領域で活動していた澁澤龍彦への深いレスペクトが感じられます。

“寺山修司人形”「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

▲宇野亞喜良といえば天井桟敷、天井桟敷といえば寺山修司。

盟友とも言える寺山修司の人形です。

天井桟敷だけでなく他の舞台美術も必見です。宇野亞喜良の世界が立体表現されているのですから。

宇野亞喜良と麻布十番

実は、麻布十番で何度かご本人をお見かけしたことがあります。というのも宇野亞喜良は1999年より麻布十番に事務所を構えていらっしゃるからです。

横断歩道ですれ違った時は思わず、声をかけそうになったくらいです。

“麻布十番納涼まつり”「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

▲展覧会の最後を飾るのは麻布十番納涼まつりのポスター。

写真で左から2000年代初頭のポスター、2014年のポスター、2010年のポスターです。

1990年に事務所を麻布十番に移転し、1999年から麻布十番まつりのポスターを手掛けていますからそれからすでに四半世紀。ライフワーク的な作品かもしれません。

例えば左上の2000年のポスターには六本木駅が最寄り駅だと記載されています。そう、その頃はまだ麻布十番に地下鉄は通ってなかったのです!

また真ん中の2014年の開催日は土日の2日間だけですが、それ以外は金土日の3日間開催となっています。2011年の東日本大震災で開催を自粛する以前は3日間の開催だったのです。

このように世相や時代背景は反映されているのですが、宇野亞喜良の描く世界はそんなことを超越して変わっていないところが面白いです。

今年、1934年生まれの宇野亞喜良は今年90歳になります。見てください!この年譜の長さ!これで略年譜ですから。

年譜に出てくるのも寺山修司、田中一光、和田誠、横尾忠則、などなど錚々たる方々ばかりです。

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映像作品・インタビュー映像

会場内では宇野亞喜良が手がけた映像作品が上映されています。

7章のアニメーション映画のコーナーでは、3本の映像作品がループで流れています。

全て60年代の作品です。もちろんCGもPCもない時代ですから手作りのアニメーションです。

「白い祭」7分、「お前とわたし」10分、「午砲(ドン)」7分です。全部鑑賞しても24分です。椅子はなくスタンディングで鑑賞するスタイルです。

また、全て2022年のgggの「宇野亞喜良 万華鏡」展の際に2階で上映されていたアニメーションです。

“誰かがサズを弾いていた”「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

展覧会終盤の11章絵画・立体作品のコーナーにも小さいモニターで立体作品による映像が流れています。

NHKみんなのうた「誰かがサズを弾いていた」2011年は一部を抜粋した30秒の映像にまとめられています。

「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

展覧会最後には宇野亞喜良自身のインタビュー映像がモニターで流れています。こちらは丸いすが用意されているので着席して鑑賞可能です。

2024年3/22の撮影なので、つい最近の宇野の言葉を視聴することができます。インタビューは5分35秒でループで流れています。

宇野亞喜良展の鑑賞時間の目安

映像だけで約30分です。出品点数がなんといっても900点ですから、最低1時間は必須です。

せっかく訪問するなら2時間くらいかけてじっくり堪能することを推奨します。

ちなみに宇野亞喜良展のチケットで上階の常設展も鑑賞できますから、そちらも忘れずに!

宇野亞喜良展の写真撮影について

基本的に宇野亞喜良展は写真撮影可能です。動画撮影は禁止。また、一部撮影禁止の作品がありますが、その作品には撮影禁止マークがついています。当然ながら三脚、自撮り棒、フラッシュは禁止です。

宇野亞喜良展図録とグッズ

会場出口のところにあるgallery 5にて展覧会図録とグッズが販売されています。

展覧会図録「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

▲図録は税込4400円です。デザイナーでありイラストレーターならではの洗練された装丁が目を惹きます。

グッズ「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」, 東京オペラシティアートギャラリー, 2024年

▲図録の他に他にポストカード、ハンカチ、マグカップ、Tシャツ、エコバッグなど多彩なグッズが展開されていました。これは迷いますね。

https://amzn.asia/d/71qo5DR

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基本情報

宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO

 

2024年4月11日(木)- 6月16日(日)

11:00 ─ 19:00 月休

入場料:一般1,400円、大・高生800円、中学生以下無料

東京オペラシティ アートギャラリー

新宿区西新宿3丁目20−2 MAP

アクセス:京王新線 初台駅東口下車 徒歩約5分

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