南青山に文化発信拠点を目指す複合施設「IDEAL(イデアル)ビル」が2023年5月27日にオープンしました。
最寄駅の東京メトロ表参道駅から徒歩で約7分ほどの場所で、骨董通りを一本入った路地に位置し、ヨックモックミュージアムのすぐ近くの静かな場所です。IDEALビルの規模は、地下1階-地上3階が商業エリアで4階以上はなんと個人の住宅という構成です。
建築設計は、このビルから徒歩圏内にある東急プラザ表参道原宿などを手掛けた建築家の中村拓志/なかむらひろし(NAP建築設計事務所)が手がけました。
PR中村拓志設計の建築は観世水がポイント
IDEALビルの外壁は、落ち着いたブルーグレーが印象的なマーブル模様の石が使われています。これは観世水をモチーフとしています。
▲また、ビル片側全面には、立体成型した波打つオリジナルガラスが使われています。このガラスのモチーフも観世水から着想を得たデザインなのではないでしょうか。
中村拓志建築だと西麻布にあるL’ecrin Boutique Tokyo/レクランブティックトウキョウのファサードも立体成型したオリジナルガラスが使われています。
ちなみに観世水/かんぜみずとは、水が渦巻いている様子を描いた文様で、能楽の流派である「観世流」の観世太夫が定式文様として使用した由来を持つ格式高い流水文様の一つです。
このビルの上部は個人邸で、そこにはなんと!「山水」という名の能舞台があるという話です。(能舞台は非公開)
おそらく上部の個人邸に住むのはビルオーナーで、能好きあるいは能を嗜む方なのではないかと推察します。
▲1階ビルエントランスは、左官の挟土秀平による土壁をベースに、観世水をモチーフにしたカーブを描いた壁が訪問者を迎えます。
▲土壁の先のエレベーターホールにあるのは、なんとファッションデザイナーのコシノジュンコ作の彫刻作品「山水」です。
コシノジュンコさんが絵画を制作しているのは存じ上げていましたが、彫刻も作られるのですね。
更に、IDEALビルの正面にどーん!と置かれた巨大な鉢は、周囲がベンチになっています。
このシンボルツリーは、プラントハンター西畠清順のそら植物園の農場で選んだオリーブの木なんだそうです。
地面に植えるのではなく、巨大植木鉢に見せているのが面白い演出です。
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TOM DIXON TOKYO
1階は、イギリスのインテリアブランド「TOM DIXON(トム・ディクソン)」のデザインハブとなるショップ「TOM DIXON TOKYO」が入っています。
2015年~今年3月まで青山通り沿いに店舗を構えていましたが、IDEALビルのオープンと同時に移転してきました。
Tomdixonは、溶鉱炉で熱した時に、徐々に膨らんでいく吹きガラスのような、まるで生命を宿しているような幻想的な意匠が特徴の照明MELT(メルト)を筆頭に、さまざまな照明、更にファニチャー、テーブルウェアからルーム・フレグランスまで様々な商品を取り扱っています。
全てデザイナーのTom Dixonによるものです。
▲エッジの効いたTom Dixonデザインの商品と中村拓志の波打つガラスが呼応した空間。
▲Tom Dixonの代名詞でもある照明を中心にインテリア全般を見られるTom Dixon Tokyo
▲いつまで見ていても飽きない店内
THE CAFE by cadet
そして、嬉しいことにTOM DIXONの店頭にはカフェ「THE CAFE by cadet」が併設されています。
by cadet というのは、神保町のフレンチ「cadet」がプロデュースしているからのようです。
コーヒー(600円~)などのドリンク類だけでなくフィナンシェなどの焼き菓子もいただけます。
またオニオングラタンスープやオマール海老のスープのポットパン(Pot Pain)もそのうち登場するようですから、そうなればランチ利用もできるかもしれません。
▲カウンターは不思議な積み方をしたレンガでできています。
普通の積み方ではないので職人さんがとても苦労して施工したとか。
カフェとして利用できる席は限られています。オープンしたての頃のHAYみたいにどこの席でもカフェ利用ができるのかと思いましたが、違いました。
カフェカウンター周りの席だけです。
新しいお店なので、まだ利用者が少ないけれど、すぐにいっぱいになりそうです。
MELTなど、Tom Dixonの幻想的な照明を眺めながら美味しいコーヒーをいただきました。
お冷のグラスもアイスカフェオレのグラスもTomdixonデザインです。
基本情報
TOM DIXON
11時~18時 水曜・日曜定休 |
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LIGHTBOX ATELIER/SEMPRE
2階はイベントスペース「LIGHTBOX ATELIER/SEMPRE」です。
LIGHTBOX ATELIER/SEMPREは、1999年~2017年まで骨董通りでデザイン系のセレクトショップセンプレデザインを運営していました。
オープン最初のイベントは、昨年急逝したインテリアデザイナーの橋本夕紀夫の模型を集めた展示会「ハシモトユキオの模型展」です。(会期終了)
たくさんの模型は全部当時のもので、試行錯誤した様子が見られます。また、スタッフによるその模型についてのエピソードがとてもリアルで読みながら、眺めながら模型を楽しむことができました。
模型一つ一つの撮影は禁止で、入口からだけ展示風景を撮影して良いということでした。
「ハシモトユキオの模型展」2023年5月26日-6月5日 11時〜18時(会期終了)
今後もこのスペースでの面白いイベントを期待します!
基本情報
LIGHTBOX ATELIER/SEMPRE
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IDEAL TOKYO
3階は、南青山から移転してきたライフスタイルショップ「IDEAL」のインテリアサロン「IDEAL TOKYO」が。
▲ショップ前にはバルコニーのような気持ちの良い空間がありました。どういうふうに使うのでしょうか。
IDEAL TOKYOはデンマークを中心としたビンテージ家具の販売やオーディオ・シアタールームなどを取り扱っています。
尚、 IDEAL TOKYOは事前予約制です。
また、1階TOM DIXONの隣にはフレンチのレストラン「Dominique Corby(ドミニク・コルビ)」が入っています。
パリの老舗「ラ・トゥールダルジャン」総料理長を務めた経験を持つシェフドミニク・コルビのお店が新橋から移転してきました。
席数は16席で、キッチンとカウンター席の間の垂れ壁には、左官の挟土による豊穣のモチーフでありワインの材料であるブドウのレリーフがあしらわれています。
IDEAL 基本情報
IDEAL
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