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メディアアートの先駆者ダラ・バーンバウムの新作を含む展覧会を表参道 プラダ青山で観よう!


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ニューヨーク出身でメディアアートの先駆者でもあるアーティスト、ダラ・バーンバウム(Dara Birnbaum)の個展、その名も「ダラ・バーンバウム」が、HdM設計の建築が一際目立つPrada Aoyama/プラダ青山店で始まっています。

ダラ・バーンバウム

1946年生まれのダラがアーティストとして活動を始めたのは意外と遅く1970年代の半ば、彼女が30歳前後の頃だそうです。その当時としてはナム・ジュン・パイクや久保田成子がビデオアートの作家として認知されていましたが、ダラ・バーンバウムもそうした作品や活動に興味を惹かれて自身もアーティスト活動を始めました。

そしてそれ以来50年ほど、ビデオアート、メディアアート、インスタレーション作品を発表していて、特にメディアアートとしては先駆者の一人として位置付けられています。

今回のプラダ青山での展覧会にはそもダラ・バーンバウムの1979年から2021年までの作品4点が展示され、そのうち2点の作品には今回の展覧会のために新たなサウンド作品が付け加えられています。

そして、たった4作品ですがプラダ青山の広い5階フロア全部を使って展示されているうえ、ダラ・バーンバウム自身が展示順序を指定しています。

それでは指定された順番に従って作品を鑑賞してみましょう。


展示順路

展覧会は、これまでの展覧会と同様にプラダ青山5Fで開催されています。

エレベーターを降りたらまずは右側の作品から鑑賞しましょう。

Kiss the Girls: Make Them Cry

ブラウン管モニターが2台置かれ、そこに流れているのは2チャンネルのビデオインスタレーション作品《Kiss the Girls: Make Them Cry》です。

▲1979年の作品でアメリカに対する悪意みたいなものを感じさせる作品です。

観ていると当時のヒット曲TOTOの「Georgy Porgy」が流れたりして、それがまたこの作品が描く闇を強調しているような気がします。

長さは6分50秒。昼間より暗くなってからの方が見やすいかもしれません

ちなみに、これはブラウン管式のモニターです。今はそんなの見たことないという人の方が多そうですが、昔はこういう分厚くて重いモニターを使っていたのです。

家電店に行っても、もう販売していることはないのですが、こうした古いメディアの上映用に細々と作られ続けているようです。このブラウン管式モニターはアメリカ製でした。

New Music Shorts

ダラ指定の2番目の作品は1981年の《New Music Shorts》。

カラービデオ映像と2023年にリプロダクションされたサウンドによる作品です。

 

▲メインフロアから一段下がった個室スペースに展示されています。

《New Music Shorts》は西側の個室スペースです。

映画の宇宙戦争に出てくる火星人みたいなモニターに映像が上映されています。

▲約5分40秒の映像作品と再現サウンドによる《New Music Shorts》。

メディアに流れるダラ・バーンバウム展の記事の多くはこの作品にはチラッと触れるだけですが、作品の背景や映像として残っている内容はあまりに胸熱な、この展覧会の実は目玉ではないかという作品です。

中身はパンクの時代と並行してニューヨークで隠れるように花開いたノー・ウェーブ(No Wave)のドキュメンタリー風映像です。

ノー・ウェーブが始まったのは実ははっきりしていて、1978年にブライアン・イーノがニューヨークのノイジーでアヴァンギャルドなバンドを集めたコンピレーション「No New York」を出したときです。

70年代ニューヨークのパンク〜ノー・ウェーブのシーンはミュージシャンだけでなく様々なジャンルのアーティストにとっても刺激的だったようで、映像作家による映像、美術家による作品、詩人や作家による作品が数多く残されていますが、この映像もそうした作品の一つです。

6分弱の短い映像ですが、実は2つのライブパフォーマンスを編集したもので、ひとつは多くのノー・ウェーブの中でもマイナーな存在だけど知る人ぞ知る的なギタリスト、ジュールズ・バプティスト(Jules Baptiste)のバンド「Radio Fire Flight」。

もう一つはやはりギタリストでエクスペリメンタルなサウンドを追求したグレン・ブランカ(Glenn Branca)の初期のライブです。

グレン・ブランカはミニマルで暴力的とも言えるサウンドで有名ですし、ジュールズ・バプティストも今もカルト的なファンがいる存在です。そんなミュージシャンたちの最初期の様子をきっちり捉えているところはダラ・バーンバウムも鼻が利くんですね。というか、そんな才能がひしめき合っていた時代と言う方が正しいかもしれません。

ダラ・バーンバウムだけでなく、ノー・ウェーブをもっと知りたい人、ニューヨークのアングラシーンをもっと知りたい人にはとても貴重な作品ではないでしょうか。


Bruckner: Symphony No.5 in B-Dur

New Music Shortsが流れる個室スペースと対称になるようにもう一つスペースがあり、そこには《Bruckner: Symphony No.5 in B-Dur》という作品が上映されています。

▲New Music Shortsと同じようなモニターに上映されています。

ここからは東京タワーも見えたりして景色も良いです。

アントン・ブルックナーという19世紀オーストリア帝国の作曲家の作品を表現者がどう解釈するかということを巡る作品みたいです。

まぁどう解釈するかということ自体が作家の表現活動そのものなんですけど、ブルックナーというナチが好んだ音楽家がテーマというところがミソなのかもしれません

 Arabesque

最後、4つ目の作品は北東側の壁面一杯を使って展示されている「Arabesque」。

▲4チャンネルの映像を使い、左から右へ時代を遡りながら物語が展開しているみたいです。

テーマはドイツのピアニストで作曲家のロベルト・シューマンと妻で同じくピアニストだったクララ・シューマン。

フェミニズム的なテーマも隠されているように感じます

展示会場

展示会場になっている5階をもう少し細かく紹介します。

▲フロアはほぼ中央にエレベーターホールがあり、北西側には階段やスタッフ用のファシリティーがあります。

いつも大きな作品は北東側の広いスペースに設置、残りの作品は空いたスペースを有効に使い展示し、いつも苦労している様子が伺えます。

でもHdMのデザインを内側から見るハイブランドらしい雰囲気や周囲の南青山の風景がそんな細かいところは吹っ飛ばしてくれます

 

▲《New Music Shorts》が流れているスペースの全体像はこんな感じです。

座って鑑賞することもできますし、反対側のスペースは麻布台ヒルズや東京タワーなど遠景も見どころだったりします。

▲まるでキューブリックの映画の世界のような空間も。


リーフレット

入口でリーフレットとDM、そしてLINE の壁紙がもらえる QRコードが書かれたカードがもらえます。

▲ポスターのキービジュアルにもなっているこの女性、決してダラ・バーンバウムではありません。

《Kiss the Girls: Make Them Cry》に登場する、知名度も下がり返り咲くことに必死になっている売れない芸能人のおばんさんです。空虚で絶望的な笑顔を絵に描いたような表情です

鑑賞前に知っておきたいこと

今回の展覧会は事前予約制ではありません。

いきなり行って鑑賞可能です。また、入場無料です。

映像作品ばかりですが、どれも10分以内ですから4点全部を見ても30分もかかりません。ただマルチチャンネルなので1回見ただけではすみませんから結局2回、3回と見ることになります。やはり鑑賞時間として1時間は見ておくのが良いと思います。

プラダ アレックス・ダ・コルテ

▲現在、ショップエントランスに設置されているのは、ダラ・バーンバウムの作品ではなくて、アレックス・ダ・コルテの作品です。

アレックス・ダ・コルテは現在「プラダ ガレリア」のハンドバッグのコンセプトやディレクションを担当しています。ダラ・バーンバウム展覧会初日はなかったのですが、後日通りかかると設置されていました。

この作品がいつまで設置されているのかは分かりません。

基本情報

ダラ バーンバウム展


2023年6月1日(木) 〜 8月28日(月)

11:00〜20:00  入場無料

PRADA AOYAMA/プラダ青山

東京都港区南青山5-2-6 MAP

アクセス:東京メトロ銀座線、半蔵門線、千代田線表参道駅A5出口徒歩約2分

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