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建築の神様からの贈り物

建築の神様からの贈り物 vol.8 黒川紀章 設計 国立新美術館
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六本木と乃木坂からアクセスできる黒川紀章最後の建築、国立新美術館は、開館してからこれまでに30回以上は訪れている美術館のひとつだ。

ここへ足繁く通う理由は、近所であることもさることながら、その空間の魅力だ。

もちろん、これまでに数え切れないほどの企画展を見て来た。草間彌生や安藤忠雄、三宅一生と言った日本人の大御所の方々の個展をはじめ、現在開催中のマティス「自由なフォルム」などの近代美術史の巨匠の展覧会、さらにはカルティエやエルメス、イヴ・サンローランなどのハイブランドの展覧会などなど枚挙にいとまがない。

魅力的な展覧会を多く開催しているものの、この空間に身を置くためだけにフラッと立ち寄ったことも少なくない。朝早い時間の人の少ない美術館。雨でしっとりとした静かな美術館。桜の季節はお隣の敷地の桜が見事に咲くので、これもはずせない。

しかし、一番美しいのは冬の西陽のさす時間である。

館内にふたつあるコンクリートコーンのアールのついた壁面に、まるでレースのような美しい影を落とす。その様は何度見ても惚れ惚れするほど美しい。あぁ近所にこんな見目麗しい空間を有した美術館があって本当に良かった!とつくづく思う。

いつ訪れても見られるわけではないというところがまさに建築の神様からの贈り物だ。

床に影が落ちている時間帯よりも、コンクリートコーンに影が落ちる様子が一番美しい。何十回も訪問している私がいうのだから間違いない。

また、小さい方のコーンの上に陽が沈む様子も見える。そこにはまるで印象派の絵画のような空が広がるのだ。この様子は晴天の日でないと見られないのは当然だ。

国立新美術館は、国立なので当然原資は税金だ。こんなに巨大な吹き抜け空間となると、その空調にかかる費用が膨大であることは想像に難くない。しかし、このような美しい巨大空間を個人で所有できるはずがない。だからこそ、庶民が気兼ねなく訪れて、ゆったりと過ごすことができるこのような大空間は、公共空間として大きな意味がある。

設計した黒川紀章自身がこの空間の美しさを、建築の神様からの贈り物を、どのくらい体感・堪能できたのかはわからない。というのも竣工の翌年には亡くなっているからだ。

黒川紀章設計の極小プライベート空間である中銀カプセルタワービルも好きだが、巨大な吹き抜け空間を有する公共施設、国立新美術館も相当好きだ。

国立新美術館

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「建築の神様からの贈り物 vol.8 黒川紀章 設計 国立新美術館」への2件のフィードバック

  1. 極まれに垣間見える建築風景にぴったりの言葉ですね。先日、横須賀美術館にお邪魔した際に「冬シーズンは16:30~17:30は日の入り加減で美術館内全体が青い幻想的な空間になる」と学芸員の方に教えて頂きました。普段の真っ白な空間からは想像できませんでした。これも同じく贈り物かもしれません。

  2. 素晴らしい情報をありがとうございます!山本理顕さんがプリツカー賞を受賞したので、久しぶりに再訪したいと考えていました。
    ご教示いただきましたマジックアワーの時間帯に行ってみたいと思います。

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