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吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』 のプレ公開へ行ってきた!


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ル・コルビュジエの日本人弟子の一人、吉阪隆正(よしざか・たかまさ)の代表作とも言われている「VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ」(旧近藤邸)のプレ公開が2024年5月に行われたので早速行ってきました。

この建築は、一度は解体の危機にさらされましたが、皆さんご存知の通り女優の鈴木京香さんが救世主として現れ、この名作住宅を継承することになり、解体を免れ、未来へ繋がることになったのです。

保存されることになっただけでも朗報なのですが、継承することになった鈴木京香さんが住居として使われるわけではなく、なんと!一般人の我々に見学の機会を下さったのですからすごいです。本当にありがとうございます!!

ちなみに鈴木京香さんはこの偉業が認められ2023年建築学会文化賞を受賞されています。

5月に2日間だけ行われたプレ公開のチケットは、私が見た限り発売時間5分でほぼ全枠売り切れました。

もちろん私は販売時間5分前からスタンバイして貴重な見学枠をゲットしたのですが。グッジョブ自分!

ついに一般公開スタート!詳細は下部へ↓

外観 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る
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吉阪隆正(よしざか・たかまさ)とは

超簡単に要約すると吉阪隆正は、ル・コルビュジエの日本人弟子三人のうちの一人です。三人というのは前川國男、坂倉準三、吉阪隆正です。

早稲田大学建築学科卒業後、母校早稲田大学で教授を努めつつ、自身の設計事務所U研究室を主宰していました。

と同時に登山家・探検家としても活躍し、日本山岳会理事や早大アラスカ・マッキンリー遠征隊長を務めるなど建築と山岳を両立させていた極めて稀有な存在でした。

吉阪隆正の手がけた建築、八王子のセミナーハウスやお茶の水のアテネフランセについて、また吉阪隆正の東京都現代美術館での展覧会については以下記事を参照ください。

杉本博司と新素材研究所によるテラス 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥとは

1957年竣工、渋谷区の閑静な住宅街にある一戸建ての個人邸です。

施主のフランス文学者近藤等は、吉阪隆正と同様に早稲田大学の先生でした。生涯で数多くの山岳関係の著作と翻訳を手掛けています。

また、アルプスをはじめとして世界中の山に登り、日本山岳会名誉会員の登山家でもありました。

そうです!ここで吉阪隆正とつながるわけです。近藤等と吉阪隆正は、早稲田大学の山岳部で共に活動していたのです。その近藤が自邸の設計を吉阪に依頼するのは自然な流れです。

片持ち階段 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

かわいいネーミングの「ヴィラ・クゥクゥ」は近藤夫人のニックネームをヒントに付けられているそうです。

ちなみに最近マイブームの渡邊洋治もU研究室に在籍していたことがあり、なんとヴィラ・クゥクゥの初期の図面は渡邊洋治が書いているそうです。最終的な担当は大竹十一と滝澤健児だったそうです。

完全に個人的な偶然ですが、この日に渡邊洋治に関する出会いもあってちょっとびっくりしたのでした。

ジャンカを利用したレリーフ 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥのプレ公開

冒頭にも書きましたが、2024年5月に2日間だけ先行して行われたプレ公開は、予約制でその予約枠は即満席という盛況ぶりでした。今後公開が定期的に開催されることになってオペレーションも変わっていくことと思いますが、プレ公開の様子をレポートします。

おそらく予約の1枠は10人だったと思います。内部見学時間は45分間でした。途中退出ももちろん可能です。

内部に入る前に予約名による受付が行われました。家の中には靴を脱いで入ります。入り口にビニール袋が用意されていてその中に自分の靴を入れて、自分で自分の靴を持ち歩いて見学するスタイルです。(日本民藝館的なシステム)

ですから靴は簡単に脱ぎ履きできるもので、且つコンパクトなものが良いでしょう。

これから夏なのでないとは思いますが、ロングブーツなどは絶対に避けた方がよいです。

また、靴同様に自分の荷物も自分で持ったまま見学するので、荷物も少なめに。

大荷物でも預かるシステム(要するに預かる場所)はありません。とにかく身軽で行くことです。

地面の模様 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

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ヴィラ・クゥクゥ外観

建築についてはいろんなサイトやいろんなメディアが書いているのでこちらではごくごく簡単にしておきます。

外観でまず目を惹く、コンクリートのジャンカを利用して制作したレリーフの作者は彫刻家の坂上政克です。

玄関まで続くエントランスの地面の模様も坂上政克だそうです。入り口左のシンボルツリーでもある桜の木は元から(近藤邸時代)あったそうです。

斜めに切り込んだル・コルビュジエを彷彿とさせる開口は、内部空間にもたくさん見られます。

今回オーナーが鈴木京香さんになってから、極力竣工時の状態に戻す改修が、現代美術家の杉本博司と建築家の榊田倫之が率いる新素材研究所によって行われました。

入口の門扉もオリジナルではなく、新素材研究所によるものだそうです。

外観からも既に秘密基地感が溢れています。さぁ内部は?

杉本博司と新素材研究所によるテラス 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

ヴィラ・クゥクゥ内観

内部は、もっとすごかった。

ある程度写真などで見聞きしていたとはいえ、初めて中に入った時は、思わず「わぁ」と小さい声が出てしまいました。

玄関から右側は2階層になっており、1階部分は書斎、上階は寝室です。玄関から左側は奥にキッチン、手前がリビングルームです。コンパクトながらも溢れ出る秘密基地感!これは住んでみたい!

もちろん、吉坂隆正の建築の力もさることながら、なるべく竣工時に戻した新素材研究所の力もあっての再現です。それをやってくださった施工業者の方々そして、鈴木京香さんの存在あっての現在のヴィラ・クゥクゥです。

書斎 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

溢れ出る秘密基地感は、照度にもあると思います。なんとダウンライトは天井に空いている数カ所の穴だけ。

大きな二つの穴はトップライトになっています。これ本当に自然光だけ?と疑うくらい強い光が降り注いでいました。

テラスから見える天井からニョッキリと生えているようなトップライトのさまがかわいいです。必見!

ダウンライトとトップライト 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

このトップライトの周囲にも照明が仕込まれています。昼は太陽光で明るく、夜はトップライトの周囲にある照明が光ます。けれど基本的には夜は暗い。自然と共にする登山家らしい照明計画です。

ちなみに施主によって竣工後に様々な改修が行われていて(1階に棚の増築、2階を個室化する壁増築、塗装色の変更などなど)今回の改修では竣工時に戻す工事を行なったそうです。

キッチン横のダイニング 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

飾ってあるアートは全て鈴木京香さんのコレクションだそうです。

私が見学した時にはシンディ・シャーマン、レイチェル・ホワイトリード、シュテファン・バルケンホール、日本人作家では三嶋りつ惠などの作品がありました。きっともっとたくさん作品をコレクションされてらっしゃるでしょうから、今後居室内に飾られている作品も変わることがあるかもしれませんね。

リビング 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

家具も、近藤邸時代ものと新しく入れたものが混じっているようです。キッチン横のテーブルはオリジナルだという話でした。

2階のビバンダムやYチェア、そして杉本博司デザインのものは新しく導入されたのです。

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ヴィラ・クゥクゥの階段

一番、この目で見たかったのはコンクリートの片持ちの階段です。まるで彫刻のように美しい姿ですが、ちゃんと構造的にもしっかりしているんです。(当たり前)ちょっと登るのに躊躇しましたが、全然びくともしません。

階段 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

▲年季が入ったステップ。まあるいカーブが可愛い。

手摺りもレリーフ作品のように美しい。

吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

そして、階段下のカラーガラス!!!

ここが一番のコルビュジエポイントではないでしょうか。

二重のカラーガラス 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

▲二重になっているカラーガラスが奥まった場所に嵌め込まれ、ぼんやりと優しい光を放っています。

ヴィラ・クゥクゥのテラス

リビングルームの正面は全面開放する大きな窓になっています。

ここを開けるとテラスまでつながり圧倒的な解放感です。

杉本博司と新素材研究所によるテラス 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

窓の外のテラスは、杉本博司ワールドに変貌していました。おそらく元々の面影はほぼない場所ではないでしょうか。元を知りませんが。

杉本博司全開の竹箒の生垣に、数理模型を彷彿とさせる石の塔、塔の足元は青々とした苔、その周囲は白い玉砂利が敷き詰められ、竹箒の下は(表参道の杉本博司が手がけた)茶酒金田中のテラスのような石が積み重ねられています。

杉本博司と新素材研究所によるテラス 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

▲見学の日は良い天気であふれんばかりの光が降り注いでいました。

45分間でしたが、相当に満足度は高いです。

個人邸なのでそんなに広いわけでもないので細部までしっかり堪能できました。

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ヴィラ・クゥクゥの写真撮影について

ヴィラ・クゥクゥでは写真撮影が可能です。

当然ながら三脚・自撮り棒などはNGです。動画撮影はNGです。

書斎 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

ヴィラ・クゥクゥへの行き方

小田急線、千代田線の代々木上原駅から徒歩で約8分ほどです。駅の西口から出てまずは西原防災防犯センターを目指します。

駅からの行き方 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

▲この空き地にちょっこり立っているのが赤い三角屋根防災センターです。防災センターの横に見えるT字路の坂道を入っていきます。

ここから高級住宅地エリアに突入です。

駅からの行き方 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

▲この坂道まで来たらあとはひたすら真っ直ぐです。両脇に立派な邸宅が続くこの坂をぐんぐん上がり、上がり切るところまでいきます。

上り切って、道が若干下り坂になってきたら左側に見えてきます。

ヴィラ・クゥクゥ見学注意点まとめ

脱ぎ履きしやすい靴で行こう

荷物はなるべく持たずに行こう

トイレは使用できないので駅で済ませてから行こう

2階 吉阪隆正の 『VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ』写真:建築とアートを巡る

今後の定期的な公開がスムーズに行われ、公開中止なんてことにならないようにルールを守って見学したいですね。

私は初夏の気持ちの良いヴィラ・クゥクゥを見学したので、次回は秋か冬に再訪したいなと思います。

スタッフの皆様、そして何よりも貴重な建築を次世代に繋いでくれた鈴木京香さんありがとうございました。

一般公開について

クゥクゥにちなんで毎月9のつく日(9日・19日・29日)に見学会を開催するそうです!

ちなみに2024年6月最初の一般公開は2024年5月27日(月)12:00 ~から予約開始(2時間ほどで完売しました)

6月 9日(日)
6月19日(水)
6月29日(土)

各日5回(12時/13時/14時/15時/16時)
各回45分間/定員入替制/予約時間から15分以内に入場
入場料金:1000円

ただし月によっては開催しない日もあったり、真夏や真冬は一般公開は中止だそうです。

すでに2024年8月は一般公開中止が決定しています。

見学の予約や詳細はPeatix のVILLA COUCOUアカウント にて!

基本情報

VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ

Peatix のVILLA COUCOUアカウント

渋谷区

最寄駅:小田急線・千代田線代々木上原駅徒歩約8分

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