南青山にあるショールームTIME & STYLE Atmosphere/タイムアンドスタイル アトモスフィアで開催中の、スイス人建築家ピーター・ズントー/Peter Zumthorの家具コレクション「Peter Zumthor collection」の展示会に足を運んでみました。
この展示会はミラノでも同時開催されており、日本では東京のあと大阪に巡回予定です。
Peter Zumthor/ピーター・ズントー
ズントーは、2009年のプリツカー賞をはじめ、1998年のデンマークのカールスバーグ賞、1999年のミース・ファン・デル・ローエ賞だけでなく、日本では2006年に日本芸術協会から高松宮殿下記念世界文化賞を受賞している国内外で超有名な建築家の1人で、1943年スイス生まれ、現在78歳の大御所です。
ズントーといえば教会や魔女裁判の犠牲者達のための記念館(スティールネセト・メモリアル)など数多くの有名作品がありますが、筆頭はやはり、1996年スイス、グラウビュンデン州の小さな山里に作られた温泉施設「テルメヴァルス/Therme Vals」でしょう。スイスの渓谷ヴァルスの石材を何層にも積み上げて作られた建築は作品集の写真を見てるだけでため息が出てしまいます。残念ながら未訪問。いつか絶対行きたい。
絶対行きたい建築として96年竣工のテルメヴァルスと共に97年に開館したフランク・O・ゲーリーのグッゲンハイムビルバオがあったのですが、ビルバオはその後訪問したもののテルメヴァルスはまだ行けてません。
というわけで未だにテルメヴァルスは”一生のうちに一度は行きたい建築”の一つであり続けています。まぁそんな建築が世界中にたくさんあるのは建築好きあるあるですね。
展示会
一応、個人的なこだわりがあって、美術品などの場合は”展覧会”、商業製品などの場合は”展示会”を使用しています。なので、今回は展覧会ではなく展示会です。実は美術館の展覧会を展示会と称しているのをみかけるとものすごくモヤモヤします。まあ、どうでもいいことですが。
さて、何が展示されているかというと、ズントーがデザインした家具です。ズントーは、父親が家具職人だったので、その希望もあり家具職人としての訓練を受けています。
このことからズントーの原点は家具にありと言っても過言ではありません。しかし、ズントーは家具を建築の一部として製作しており、家具のみのデザインをすることはありません。
アトリエピーター・ズントーが手がける建築プロジェクトは常に長い長い時間をかけて完成へ向かいます。ですから、膨大な時間をかけて検討・考察された建築のためにデザインされる家具もまた、同様の過程を踏んだものばかりなのです。
Peter Zumthor collection
今回、展示(販売)されているズントーの家具を一つ一つ勝手にご紹介します。
Valserliege
このシェーズロングは、憧れのテルメヴァルスのためにズントーがデザインした家具です。実際のシェーズロングは、積層材でできていますが、タイムアンドスタイルでは、無垢材を日本の伝統の曲木技術で製作しました。
それはそれは美しく優美な曲線を描き、脚が細く存在感がないのでまるで宙に浮いているかのようです。壁の写真はテルメヴァルスの写真です。
下の写真奥にあるのが大きくカーブしたTYPE1▼
展示会では日本が誇る職人技が光る曲木技術を駆使した製作過程の映像を見ることもできます。
下の写真の奥がカーブの緩いTYPE2です。▼
屋上にあるのが屋外仕様のTYPE1▼
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Serpentine table&Serpentine stool
ロンドンのサーペタインギャラリーでは、毎年著名な建築家に設計を依頼したパビリオンが設営されます。これらは、2011年にピーター・ズントーがパビリオンを設計した際に、空間に合わせてデザインしたテーブルとスツールです。
テーブルトップは屋外仕様の亜鉛メッキバージョン(写真上)と屋内仕様のステンレスバイブレーション仕上げ(写真下)の2種類▼
ストイックなSerpentine table&Serpentine stool(写真右)と彩り豊かで温かみのあるKolumba side table & Damenhocker(写真左)▼
この家具のデザインの対比も石だけでできた建築もあれば、木だけの建築もあるズントーらしい。
Kolumba side table&Damenhocker
カラフルな家具は、ズントーの代表作の一つ聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館の読書室で使われているサイドテーブルを日本の素材と技術を用いて製作したもの。ハイ&ローの2種類とカラーバリエーションは4色。
スイスのハルデンシュタインにあるピーター・ズントーの自宅兼アトリエや、ズントーが設計した貸別荘ライス・ハウスで使われている4本脚のスツールは、Damenhocker(女性のスツール)と名付けられています。▼
1本の丸太から削り出されたテーブルは、そのフォルムから日本のコケシを思わせます。違う?!
その側面は欅の美しい木目を見せています。▼
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Atelier Zumthor working table
スイスのハルデンシュタインにあるピーター・ズントーの2つのアトリエと自邸でも愛用されているテーブルです。
日本の家具産地である北海道旭川にあるタイムアンドスタイルファクトリーで1台ずつ職人が手作業で製作しています。
テーブルの上のペッパーミルの試作品もズントーデザイン。▼
ショールーム
ズントー展以外のスペースも見学させていただきました。
そこには根津美術館の借景の美しさも相まって、ため息が出るような美しい空間がありました。▼
窓の向こうの屋上テラスにはズントーのシェーズロングが。▼
このスペースにある家具(手前)は建築家隈研吾デザインのものです。▼
こちら側の丸みを帯びたデザインの家具やモビールはドリルデザインのもの▼
パトリック・シアのオブジェやジャン‐マリー・マソーの家具▼
建築家中村拓志デザインの家具▼
ズントーデザインのシェードロングに座らせてもらいましたが、できることならスイスのテルメヴァルスへ行って、その使い心地を試してみたいものです。
そろそろコロナ禍も落ち着きをみせ始めていますし、ズントー建築巡りの夢が膨らみまくる展示でした。
ご丁寧に対応いただきありがとうございました。いつか自宅にもズントー家具を導入してみたいです。
基本情報
Peter Zumthor collection exhibition in Tokyo
2022年6月6日(月) – 6月30日(木) 11:00 – 19:00 水休
東京都港区南青山4-27-15 MAP
アクセス:東京メトロ 表参道駅 A4/A5出口 徒歩約7分
大阪巡回予定
Peter Zumthor collection exhibition in Osaka
2022年7月7日(木)ー8月7日(日)11:00-19:00 水休
大阪市中央区南船場2−7−14大阪写真会館1F MAP
アクセス:大阪メトロ御堂筋線 心斎橋駅より徒歩7分、大阪メトロ鶴見緑地線・堺筋線 長堀橋駅より徒歩3分