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《ポーラ青山で建築とアートを巡る》 戦後日本のモダニズム住宅の傑作「土浦亀城邸」とシムラブロス作品


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あのフランク・ロイド・ライトの片腕として、ライトの事務所であるタリアセンでも働き、帰国後は日本で数多くのモダニズム建築を設計した建築家、土浦亀城(つちうら・かめき)の、モダニズム住宅としての代表作で自邸でもあった「土浦亀城邸」がもともと建っていた土地から南青山に移転され、今は一般にも有料公開されています。

土浦夫妻の没後、後継となる方がほとんど手を加えず大切に利用し保存してきたものですが、貴重な建物を後世に遺すためポーラに寄贈し、南青山に新築されたPOLA青山ビルディングの敷地内に移築されたものです。

戦後日本のモダニズム住宅の傑作「土浦亀城邸」写真:建築とアートを巡る

▲一般公開といっても東京都指定有形文化財でもある貴重な住宅建築なので、公開は月に2日程度。毎回ガイド付きツアーとしての見学になります。

ただ住宅の外観は隣接する道路からも見えます。見学の際は実際に内部に入り、昭和初期の設計とは思えないモダンな住宅を見学する形式になります。


土浦亀城とは

土浦亀城は1897年(明治30年)生まれ。東京帝大工学部建築科に在学中、遠藤新の紹介で帝国ホテルの設計をしていたライトを手伝うことになり、卒業後はタリアセンで働くために渡米します。

帰国後は主に住宅の設計を手がけ、昭和初期からはバウハウスの影響を受けたモダニズム住宅の設計を行っていくことになります。

戦後日本のモダニズム住宅の傑作「土浦亀城邸」写真:建築とアートを巡る

箱根の強羅ホテル、戦後は銀座シネパトス(銀座三原橋の旧地下街にあったビル)など大規模建築も手掛けますが、残念なことに現存する建物はこの土浦亀城邸と坂本龍一もかつて住んでいたという代官山の集合住宅だけです。

土浦亀城邸

土浦亀城・信子夫妻の自邸として1935年(昭和10年)に竣工。昭和初期の住宅建築を代表する住宅です。

戦後日本のモダニズム住宅の傑作「土浦亀城邸」写真:建築とアートを巡る

▲隣接する公道から見たPOLA青山ビルディング敷地内の土浦亀城邸。

もともとは品川区にあり、前川國男の自宅も近所というロケーションでしたが2023年に解体され、2024年から現在の場所に移築されています。

外から見るだけでも白い箱型の外観、大きく開放的な窓とその上の庇、シンプルな箱型のベランダなど昭和初期の一般的な日本の住宅とはかけ離れたモダンな住宅だということが分かります。

戦後日本のモダニズム住宅の傑作「土浦亀城邸」写真:建築とアートを巡る

▲少し角度を変えて見るとそのモダンさがさらによく分かります。

玄関前の太い柱はPOLA青山ビルディングのものです。

戦後日本のモダニズム住宅の傑作「土浦亀城邸」写真:建築とアートを巡る

▲この日は公開日だったので内部の明かりが灯っています。

なお移築の際に方角だけはそのまま移転というわけにはいかず、本来は南側に向いていたリビングが東側を向いています。

近所でもあった前川國男邸からは品川の海が見えたそうですから、土浦亀城邸からも同じように海が見えていたのかもしれません。


土浦亀城の内部

邸宅内は撮影禁止ですのでこちらのサイトで内部の様子を確認してみてください。

大きな吹き抜け空間を持つリビング、当時アメリカでも最新だったシステムキッチン、水洗トイレなど本当に昭和初期の住宅なのかと驚くばかりです。

また、全ての居室がステップフロアで緩やかに繋がっており、各々がどこにいても家族の気配を感じられる空間になっています。家具だけでなく食器や小物など土浦夫妻の暮らしを感じられるものがたくさん残っています。

飾ってある絵画は土浦夫人が描いたものだそうです。

アレクサンダー・カルダーかしら?と思わせるモビールもあって、もしカルダーのものだったらかなり高価なはず!などど下世話な皮算用をしてしまいました。

また、見やすく整えられたクローゼット内の棚や帽子掛けなど、当時の日本でモダンな都市生活をするための配慮も見どころです。

一般公開概要

一般公開が行われるのは月に2日。原則として水曜日と土曜日に実施されています。

1日に2回または3回、ガイド付きツアーの形式で行われ。1回あたりの定員は15名。観覧料は1人1,500円です。

ただし入場できるのは小学生以上、また昭和初期という時代もあってバリアフリーには対応していません。

開催日や見学予約はPeatixから。当月と翌月の見学を申し込めるようです。

POLA青山ビルディングのパブリックアート

2024年に竣工したPOLA青山ビルディングですが、敷地内やビル内にはパブリックアートが設置されています。

ポーラ青山 シムラブロス 写真:建築とアートを巡る

オラファー・エリアソンのスタジオで働く姉弟ユニット「シムラブロス」の《悠久の光景 つぼみ》。

ポーラ青山 シムラブロス 写真:建築とアートを巡る

▲POLA青山ビルディングの青山通り沿いに設置され目を惹く作品です。

奥に見える丸いのはベンチにもなる作品で《悠久の光景 待合のリゾーム》。

ポーラ青山 シムラブロス 写真:建築とアートを巡る

▲さらに上を見上げると目に入るのが《悠久の光景 シギラリア》。

青山通りを行く人があれは何だと思わず立ち止まってしまう不思議な造形です。

他にも現在は一般公開されていませんが屋上テラスには大山エンリコイサムの《FIGURATI #630》のQTS作品がありますし、道路沿いには彫刻家、板東優の彫刻作品も展示されています。

POLA美術館など芸術分野での社会貢献にも力をいれるPOLAならでは

国立新美術館の《リビング・モダニティ》展

期間限定の情報ですが2025年3月19日から6月30日までの会期で国立新美術館で開催されている《リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s》展で、まさにこの土浦亀城邸が紹介されています。

国立新美術館《リビング・モダニティ》展 2025 写真:建築とアートを巡る

▲様々な資料や写真の他に、このような土浦亀城邸の模型も。

国立新美術館《リビング・モダニティ》展 2025 写真:建築とアートを巡る

▲土浦亀城邸があったのは ”長者丸” 地区と呼ばれ、土浦亀城邸(中央)の周囲にやはり当時先端のモダンな住宅が建ち並んでいたそうです。

その住宅群の復元模型も展示されているのですが、どれも昭和初期とは思えないデザインの住宅です。

《リビング・モダニティ》展の土浦亀城邸セクションでは、ガイド付きツアーの際に見た写真や資料以外の興味深い資料や初めて見る写真が展示されています。土浦亀城に興味を持たれたら国立新美術館の《リビング・モダニティ》展にも足を運んでみてください。


併せて見ておきたい

POLA青山ビルディングの最寄り駅は地下鉄青山一丁目駅。

その青山一丁目駅からもPOLA青山ビルディングからも至近なのが「Honda青山本社ビル」です。

Honda青山本社ビル 写真:建築とアートを巡る

▲1985年に竣工した、通称 ”青山ビル” とも呼ばれているホンダの本社ビルです。

しかし、この青山ビルが建て替えられることになり、本社としての業務も5月には終了し、その後は解体作業に入る予定です。

長く青山の名物として親しまれ、創業者の本田宗一郎氏のフィロソフィーが色濃く反映された建築でもあります。

併設される「ウェルカムプラザ青山」には自由に入ることができるので、土浦亀城邸の見学と併せて訪問してはどうでしょうか。

Honda青山本社ビル 写真:建築とアートを巡る

▲「ウェルカムプラザ青山」の入口。2本の柱は ”太くて権威主義的すぎる” として本田宗一郎が激怒したという伝説を持つものです。

ここは2025年3月31日でいったんクローズして休館します。

カフェもあるので土浦亀城邸の後に休憩するにはピッタリです

基本情報

土浦亀城邸

公開日:月に2日、水曜と土曜日を予定。1日2〜3回のガイドツアー。
詳細はPeatixにて

定員と観覧料:1回15名、1,500円/人

住所:港区南青山2-5-13 POLA青山ビル敷地内 MAP

アクセス:南青山一丁目駅 5番出口から徒歩1分、外苑前駅1番出口から徒歩5分


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