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ノージャンル、ノーカテゴライズ!「ニッポン国 おかんアート村」展


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東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」展を観てきました。渋谷の交差点で一際目立つウィンドウの写真に導かれてギャラリー行ってみたらまだ会期前で、出直す事になったのですが、そのくらいおかんアートのビジュアルは強烈なインパクトを放っています。

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

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手付かずだったニュージャンル

会場に足を踏み入れると「ああこういうのあった!あった!」と思わず声が出てしまう愛らしいもの達。

ウイスキーボトルでできたこういうものは、昭和の時代スナックにあって当たり前のものでした。あるのが当然で特に気に留めたことがなかったけれど、最近見かけませんね。▼

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

そう、それはあくまでも「こういうもの」であって誰もカテゴライズしたり、注目したり、ましてや集めて考察して展覧会をしようなんて考える人は今まで皆無だった全く手付かずのジャンルです。

でも、確かに存在するし、誰もが一度は手にしたり、目にしたりしたことがあるものです。もしかしたら、「可愛い」なんてつい軽い気持ちで言ってしまったが為に「いらない」って言ってるにもかかわらず無理矢理持ち帰ることになってしまった経験があるかもしれません。

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

これらは、可愛いけれど用途がないので民藝ではないし、手芸と言うにはそのオリジナリティの突飛さが突き抜けすぎていてちょっと違う気がする。そんなノージャンル、ノーカテゴライズだった「こういうもの」がまさに「おかんアート」です。

この「おかんアート」って名前は誰がいつ名付けたのでしょうか?この展覧会の2組のキュレーションのうちの1組下町レトロに首っ丈の会のかな。

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

もう一人のキューレーション担当の都築響一も書いていましたが、アール・ブリュットアートやアウトサイダーアートの対極に位置するニュージャンルです。

そもそもこの渋谷区公園通りギャラリーは開館時よりアール・ブリュットアートに力を入れており、過去にはこのブログでも紹介したアール・ブリュット2021特別展「アンフレームド 創造は無限を羽ばたいてゆく」展を開催しています。

もしかしたらその延長線上としてのおかんアートなのかもしれませんが、その暴力的なまでの純粋さは、アール・ブリュットアートやアウトサイダーアートを超越しているかもしれません。

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アナーキーな著作権無法地帯!

会場に入って目に飛び込んでくるのは、あれ?大人気のあのキャラクターにどことなく似てる。あの犬のキャラクターぽいけど顔に雪崩が起きてるみたい。猫のキャラクターにそっくりだけど頭身が全然違う。

そんなどこかで見たことがあるような、ないような、何かにとっても似ているような、他人の空似のような、そんないろんな意味でギリギリ、いやもう一線を軽々超えているもの達です。

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

お茶を濁さずにはっきり言うと、どこぞのお国でもよく起きている著作権無法地帯で、とんでもなくアナーキーな空間です。

しかし、某国のキャラクター達とおかんアートのそれらは、その制作の原動力となる動機が全く異なります。

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

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純粋な愛の破壊力

某国の方は打算が、きな臭い金儲けが、腹黒い考えが人間の強欲が渦巻いています。実際に手を動かして制作している内職の人たちには、もしかしたら著作権という概念はないかもしれません。

しかし、作らせている側は知らないわけがないのです。楽してお金を儲けたい。人の褌で相撲を取りまくりたい。ばれなきゃそれでいい。要するにパクリです。

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

しかし、おかんアートのその原動力はとんでもなくピュアです。そこに打算的な考えは微塵もありません。そして、本当に著作権という概念が皆無なのです。

そこにあるのは、孫に喜んでもらいたい!あの人の喜ぶ顔が見たい!そんな純粋な愛です。しかし、時に純粋な愛は残酷なまでの破壊力を持ち合わせます。その愛が純粋であればあるほど。

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

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数の襲撃、ピュアな暴力性

展覧会を見ていて、集団に襲われるような恐怖に似た感覚を持ったのですが、それはなんだろうかと思ったら、おそらく数による襲撃なのです。

ほぼ全てのおかんアートに目口鼻のいわゆる「顔」がついているので、集団でじーっと物言わず見つめられ続けるので、その視線がだんだん痛くなってきます。かわいい表情だからこそ尚更。そうです、まさにピュアの暴力性が会場中で猛威を奮っています。

みんなこっちを見ている▼

軍手によって製作されたいろんな動物の五人組。軍手ゴレンジャーです。(←勝手に命名)▼

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

これは顔はついていないけれど、すごい密度でゾワゾワする松毬アート▼

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

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用の美おかんアート

全てに用途や機能がない訳ではありません。柳宗悦が提唱した民藝すなわち用の美に通じるものもありました。草鞋や鍋つかみ、小物(ハサミ)入れです。小物入れはトリックアートにもなっていて、ハサミを入れるとふくろうが眼鏡をかけたように変身します。民藝とおかんアートの境界線に位置するおかんアートの用の美です。▼

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

コンセプチャルおかんアート

最後の展示室は特別に三人のアーティストをフィーチャーしたコーナーです。手前のミニジオラマは、荻野さんの作品です。日常的な廃材を使って独自の箱庭を作るのは、ジョセフ・コーネルの影響を感じますね。壁面は嶋さんの作品です。松江泰治も真っ青な街並みです。▼

手前がチラシで箱を作る野村さんのチラシ箱。どこか、ミニマルアートのドナルド・ジャッドの影響を見てとれなくもない作品の数々です。▼

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

そして、見た目の量感は三島喜美代の影響を感じるアーティスト嶋さんの新聞バック。コロナ禍で毎日その日の新聞でバックを制作したという作品です。コンセプトには河原温の影響があるのでしょうか。完全にコンセプチャルおかんアートです。▼

東京都渋谷区公園通りギャラリーで「Museuum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」

 

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おかんアートの未来

昭和の時代は、そここで名もなきおかんアートが幅をきかせていたような気がするのですが、最近は少なくなってきているかもしれません。この先絶滅することがないようにおかんアートにこのような光を当てる展覧会は今後も定期的に続けて欲しいです。まだまだ全国に埋もれたおかんアートのアーティストがいるはずですから。

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基本情報

Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村

2022年1月22日 (土) 〜 4月10日 (日) 11:00-19:00  月休(3/21開館3/22休)入場無料 会期終了

東京都渋谷公園通りギャラリー

渋谷区神南1丁目19−8 渋谷区立勤労福祉会館 MAP

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