最後の展覧会
2022年に丸の内へ移転が決まっている静嘉堂文庫美術館の世田谷岡本での最後の展覧会に行ってきました。最後の展覧会は「旅立ちの美術」です。ポスターもなかなか攻めたデザインですが、コピーもまた「行くぞ丸の内!移転前最後の展覧会」と静嘉堂文庫美術館のイメージとは少し離れた言い回しです。
岩崎家
「静嘉堂」は三菱第二代社長の岩﨑彌之助が設立し、その息子第四代社長の岩﨑小彌太によって拡充された文庫(図書館)と美術館です。詳細はこちらを参照ください。
コレクション
コレクションは現在国宝7点、重要文化財84点、およそ20万冊の古典籍と約6500点の東洋古美術品でしう。古典籍は静嘉堂文庫に収められています。この文庫は事前予約制で一般公開はしていません。丸ノ内に移転するのは美術館のギャラリーのみで、岡本で引き続き美術品の保管管理・研究閲覧業務、静嘉堂文庫(書庫)と敷地・庭園の管理業務は継続していくことになっています。
国宝
今回のこの展覧会の何がすごいって前期(4/10~5/9)は、「曜変天目(ようへんてんもく)」、「禅機図断簡(ぜんきずだんかん)智常禅師図(ちじょうぜんじず)」美術館所蔵の国宝7点を一挙に公開しています。これは1998年の「静嘉堂・国宝展」以来23年ぶりのことで、しかも展示室に一堂に会するのは初めてです。これは見逃す手はないですね。そして、この噂を聞きつけて多くの人が来館していました。
後期(5/11〜6/6)は国宝3点と重要文化財「聖徳太子絵伝」を修理後初公開します。
曜変天目(ようへんてんもく)
中でも、注目なのは曜変天目です。完形品は世界に3つしかないと言われる貴重な茶碗です。星雲のような輝きが一体どのようにして作られるのか、完全には解明されていないと言うところがまた神秘的で魅力です。思っていたより小ぶりな茶碗ですが、吸い込まれるような深い青に広大な宇宙の広がりを感じました。展示室内は撮影禁止なので写真はありません。目に焼き付けてきました。
グッズ
いろいろなグッズが販売されていますが、中でも目をひいたのは曜変天目グッズのハンドタオルです。もう、思わず可愛くて全色買ってしまいました。今治タオルで一枚800円。曜変天目の本物を所有することはあり得ませんが、ハンドタオルくらいなら‥。刺繍の曜変天目を愛でつつ、お椀の中の宇宙を感じたいと思います。
建築や緑豊かな庭園、素晴らしい眺望は動画を参照ください。
建築
静嘉堂文庫(書庫)は桜井小太郎設計で、1924年竣工です。。鉄筋コンクリート造2階建スクラッチ・タイル貼りの瀟洒な外観は、当時のイギリス郊外住宅のスタイルを取り入れています。▼
岩崎家廟(納骨堂)はジョサイア・コンドル設計、1910年竣工です。ジョサイアコンドルは岩崎家とは縁が深く、岩﨑彌之助の深川邸洋館(現存せず)や高輪邸(開東閣)、三菱一号館(現・三菱一号館美術館)などを設計しています。▼
移転先は丸ノ内の〈明治生命館〉内です。岡田信一郎・捷五郎兄弟の意匠設計で1934年竣工。ここにはかつてジョサイア・コンドル設計の建物が建っていた場所でもあります。設立者の岩﨑彌之助は丸ノ内に美術館を建設することを夢見ており、100年以上の歳月を経てようやく実現することとなります。貴重なコレクションを後世に残してくれた三菱財閥の岩崎家の夢がかなうのは無関係の庶民の私でもなんだか嬉しい。丸の内だと東京駅に近いので地方の人も足を運びやすくなりますね。
キャッシュバック
美術館はどこの駅からも遠いのですが、タクシー代キャッシュバックキャンペーンがあり、領収書と引き換えに200円キャッシュバックしてもらえます。私は二子玉川駅からタクシーに乗って900円でした。バスに乗っても1人220円かかるので複数で行く場合はタクシーがおすすめです。
静嘉堂文庫美術館
東京都世田谷区岡本2-23-1 MAP
「旅立ちの美術』展
前期が2021年4月10日〜5月9日 後期が5月11日〜6月6日 10:00〜16:30 月休