六本木ヒルズの森タワー52階の展望台、東京シティビューでイギリスを代表するデザイナー、トーマス・ヘザウィック主宰のヘザウィック・スタジオが手がけた主要プロジェクトを俯瞰する展覧会「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」が開幕しました。
会期は2023年3月17日(金)から6月4日(日)までの3ヶ月弱。六本木ヒルズに続く森ビルの一大プロジェクト麻布台ヒルズの商業街区のデザイナーを務めたトーマス・ヘザウィックを2023年11月下旬開業前に日本にお披露目しよう!という内容の展覧会です。
彼の最新プロジェクトにして日本での初プロジェクトでもある開業目前の麻布台ヒルズ。それらを見下ろす六本木ヒルズ東京シティビューという場所での展覧会ということですから見逃すわけにはいきません。
さっそく初日から訪問です。例によって会期中何回か訪問して情報をアップデート、追記していく予定です。
PR森美術館主催 ヘザウィック・スタジオ展 共感する建築
今さら説明するまでもないトーマス・ヘザウィックですが、前述のように日本での初プロジェクトが麻布台ヒルズというように、日本ではまだ一般的には知られていない現代のデザイナーであり建築家の一人です。
▲ロンドンオリンピックの聖火台、上海万博での種の聖殿、ニューヨークのヴェッセルなど、21世紀の今だからこそのコンセプト、そしてデザインで評価が高まるばかりのトーマス・ヘザウィック。
麻布台ヒルズの開業まで半年余り。ガーデンプラザがその姿を現すようになれば否が応でもトーマス・ヘザウィックにも注目が集まるでしょうからタイムリーな企画です。
もっとも本来は2020年に開催する予定で、模型や資料は日本に到着済み、トーマス・ヘザウィック本人も日本へ旅立とうという時にCOVID-19のパンデミックが発生し結果的に2023年に開催がずれ込んだ展覧会です。
ただし、そのおかげで麻布台ヒルズの開業にほぼ時期を合わせられたので結果的には良かったのかもしれません。またこの3年の間に完成したプロジェクトもあったりして、より内容の濃い展覧会になったと森美術館館長もおしゃってました。
そうなんです。会場は東京シティビュー(六本木ヒルズ展望台)なんですが、森美術館が主催の展覧会です。
ですから、これまでこの展望台で開催されている直近のユーミン展やベルサイユの薔薇展などとは毛色の違う、美術展のカテゴリーに入る展覧会です。
展覧会の撮影と混雑状況それとチケット情報
撮影について
この「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」での撮影ですが、写真撮影はOK、動画撮影もOKです。
ただし動画の場合は1分以内という条件付きです。
また一部に撮影禁止の展示物がありますので、その辺りは会場での指示に従ってください。主にロンドンオリンピック関連の展示は撮影禁止です。
もちろんフラッシュや三脚・一脚、自撮り棒の使用も禁止です。
混雑状況
会場の東京シティビューは ”展覧会も行う屋内展望台” です。展望台が目的の、主にインバウンドの観光客の方が圧倒的に多くて、展覧会が目的のお客さんは少ないです。そのため展示品を見ている人は少ないけど全体的には人がいっぱいいるという状況になっています。
ゆっくりじっくり鑑賞したり写真を撮るなら、平日の午前中あるいは夜の閉館前という時間帯を狙うのが良いでしょう。
また同じフロアの森アーツセンターギャラリーでは常に人気企画が開催されていて、週末はその混雑に巻き込まれることもあります。
ヘザウィック・スタジオ展だけが目的であっても、事前にオンラインで日時指定予約しての訪問をおすすめします。
チケットについて
入場チケットは展覧会と東京シティビューが共通です。展覧会のチケットで屋内展望台を利用できますし、逆に東京シティビューが目的でチケットを購入した人も展覧会を観ることができます。なお、追加料金を払うことで森美術館や屋上展望台「スカイデッキ」に入場することができるようになるシステムです。
入場料金はやや複雑。基本的にはオンラインでの事前予約制が推奨されていて、平日のオンライン予約が最安になります。一般 1,800円で東京シティビューとヘザウィック・スタジオ展が鑑賞できます。同じオンライン予約でも土・日・休日は一般 2,000円とやや割高になります。
詳しくは展覧会のサイトで確認してください。
PRイントロダクション
52階で東京シティビューに入るとすぐにヘザウィック・スタジオ展の展示が始まります。
▲ロンドンのダブルデッカー(2階建てバス)、現地ではルートマスターと呼びますけど、2012年にリニューアルされた新ルートマスターの原寸大模型です。
この50年ぶりの新型バスのデザインをしたのがトーマス・ヘザウィックです。
ロンドンの顔とも言える市バスを任されるデザイナーなのです。
▲真ん中に置かれているのは電気自動車のコンセプトカー「エアロ」のスタディモデル。
窓の外には東京タワーを麻布台ヒルズ森JPタワーが見えます(森JPタワーは建築家シーザー・ペリ氏で知られるPCPA設計)。
天井からバナーがぶら下がっていますが、これらは日本の暖簾(のれん)からインスパイアさたのだそうです。
ちなみに真ん中のバナーの手はトーマス・ヘザウィック自身の手です。
▲エアロの車内です。
左右に開くドアはシンメトリー、車内は前後にも左右にもシンメトリー。
まるでスタンリー・キューブリックが描く近未来の英国みたいな車内ではありませんか。
▲「エクストリュージョン(押し出し)」。
金属を押し出して形成した椅子(ベンチ)です。
窓の外にはトーマス・ヘザウィックの麻布台ヒルズ「ガーデンプラザ」が見えますね。
実物も見られる
建築の展覧会のジレンマは、美術展などと違って完成した建築を見られない。展示できないというところにあります。
展示されているのは、たいていスタディ模型や記録写真・映像、マテリアルなど、その建築が完成するまでの過程や記録、そして構成する一部分だったりします。これは建築の展覧会の宿命であり、どうしようもないのです。
過去に国立新美術館で開催された安藤忠雄展には、そんなジレンマを打ち破る実物大の「光の教会」が設置され話題になりました。しかし、これはかなり特例だと思います。
さて、そんな建築の展覧会のジレンマを打ち破るのは、ヘザウィック展の一つのポイントです。なんと、東京シティビューから絶賛工事中の本物の麻布台ヒルズの低層階が見えるのです。
▲写真右が麻布台ヒルズの森JPタワー、その左の屋上にクレーンが乗っているのがレジデンスA棟。
2つのビルの間の足元に見えるカーブを描く建物こそ、トーマス・ヘザウィックが手掛けたガーデンプラザの一部なのです。
実際には桜田通り(国道1号)まで続いていて、六本木ヒルズから見えるのはガーデンプラザ後端の一部ですが、模型と本物をどちらも俯瞰で見比べることができるんです。
私たちは麻布台ヒルズの着工から定点観測を続けているので、これまでの工事の様子や麻布台ヒルズについての情報は専用の定点観測記事を
退屈な建築ばかりだとアジるトーマス・ヘザウィックが麻布台ヒルズでどのような建築を見せているのか、気になりませんか?▼
PR
6つのセクション
この展覧会は「ひとつになる」、「みんなとつながる」、「彫刻的空間を体感する」、「都市空間で自然を感じる」、「記憶を未来へつなげる」それと「遊ぶ、使う」という6つのセクションで構成されています。
ただここでセクションが終わりみたいなきっちりしたのものではなく、ゆる〜いカテゴリわけがされています。
▲これは上海万博英国館の「種の聖殿(Seed Cathedral)」です。
上海万博で人気のトップ5に入るパビリオンにせよという英政府からの要請を受け頭を悩ませ、王立植物園キューガーデンの世界の種子を未来のために保存するプロジェクト「ミレニアムシードバンク」にインスパイアされて、25万種の種子を使った独創的な建築になりました。
実際のパビリオンは高さ20mまでという制限もあって苦労したそうです。(なのに中国のパビリオンは高さ80mもあったのだとか)
またこの近くにはロンドンオリンピックの聖火台のパーツも展示されていますが、それは撮影禁止です。
▲未完成の麻布台ヒルズを除けば展示作品の中で最新のプロジェクト、2022年に竣工したGoogle社の「Google Bay View」社屋です。
シリコンバレー、マウンテンビューのGoogle本部(Googleplex)の近くに建設され、2030年までにカーボンフリーエネルギーで稼働することを目標にしているそうです。
▲これはパンデミック直前にニューヨークのハドソン・ヤード再開発で誕生したシンボリックな建築物「VESSELL(ヴェッセル)」。
蜂の巣のような複雑な形状をした16階建ての展望台です。
今は改修工事で一時閉鎖中ですが再開されれば登ってハドソン川を見るために世界中から観光客が訪れるようになります。
▲これは南アフリカの「ツァイツ・アフリカ現代美術館」。穀物の貯蔵・加工施設を改造しています。
新に建築を作り上げる場合とこのプロジェクトのようにリノベーションをする場合とその差についての話も興味深いものでした。
予算は少なく、与件は多いという困難なプロジェクトの一つだったそうです。
同じようにロンドンの「コール・ドロップス・ヤード」など、過去の建築を未来のために役立てる「記憶を未来につなげる」セクションでの展示です。
PR
トーマス・ヘザウィックが手掛けたガーデンプラザ
最新かつ日本で初めてのプロジェクト、麻布台ヒルズ ガーデンプラザも展示されています。
▲麻布台ヒルズのガーデンプラザ、外装はもうかなり工事が進んでいます。
あとは電気、水道それと内装工事という感じで、たぶん11月下旬の開業の時には私たちのその斬新なフォルムの姿を見せてくれると思います。
▲神谷町や外苑東通り沿いの麻布台や狸穴はよく歩き回っているのですが、麻布台ヒルズの全貌って規模が大きすぎてほぼ地元の私たちでも掴みきれていない部分があるのです。
でもこうやって模型で見せられると、あぁここはこういう建物になるのかというのがよく分かって参考になります。
▲最新(ヘザウィック・スタジオ展開幕直後)の麻布台ヒルズ ガーデンプラザの様子です。
外装はこれで完成なのでしょうね。あとは開業向けに頑張れ〜というフェイズになっています。
ヘザウィック・スタジオ展が開催されている六本木ヒルズ森タワーからガーデンプラザが見えるこの場所まで、実は15分くらいで移動できてしまいます。
日比谷線神谷町の2番出口を出ればすぐこのガーデンプラザです。
神谷町駅は六本木駅の隣の駅ですから本当に15分で移動できます。ヘザウィック展を見てから実際のガーデンプラザを見てみるか、ガーデンプラザの様子を見てからヘザウィック展を見るか、迷いますねぇ。
PR
プロダクトデザイン
トーマス・ヘザウィックがデザインするのは建築物だけではありません。
▲例えば手前のテーブルは「拡張する家具」。
設置場所や用途に合わせてテーブルの面積が変わるというものです。
奥の黒い台の上にあるのはスパン(SPUN)という椅子の金型です。
▲ヘザウィック・スタジオ展の最後のエリアになるスパンの体験コーナー。
コマのように360度回転します。もちろん安定しないので座った身体ごとくるくる回ったり前後左右に揺れながら座ります。
スクリーンには人々の想像を掻き立てる刺激的な建築が必要だとアジテーションするTEDでのトーマス・ヘザウィックの講演映像が流れています。
建築好きな方や仕事にしている方は、トーマス・ヘザウィックのコンセプトを体現した建築の数々が見られるヘザウィック・スタジオ展は必見ではないでしょうか。
そして、11月に開業する麻布台ヒルズにトーマス・ヘザウィックの言う刺激的な建築が実際に東京に現れ、私たちの想像力を掻き立ててくれることに期待します。
限界に挑戦したカード
スパンのプロトタイプなどが展示してある、最後の「遊ぶ、使う」のセクションの終わりを飾るのは、ヘザウィック・スタジオが近年までクライアントなどに送っていたグリーティングカードの数々です。
▲これらは、イギリスの郵便で送ることができるギリギリの形状のものを毎年探って制作していたそうです。
▲こんなところにもトーマス・ヘザウイックの遊び心が溢れていて楽しいいですね。
▲残念ながら現在は、カードを送ることはしていないそうです。
夜がおすすめ!夜景と模型
実は夜の方が模型に仕込まれた照明の効果が高まり見応えがあることに3回目の訪問で気づきました。
▲上海万博英国館の「種の聖殿(Seed Cathedral)も光を放ってより幻想的です。
▲麻布台ヒルズのタワーも実は内照式だったのです。
▲ヴェッセルの模型は内照式ではありませんが、照明が当たって光り輝いています。そして影も綺麗です。
東京の夜景を背景に見るNYの建築もいいですね。
昼の様子も夜の様子も展覧会の様子も麻布台ヒルズの実際の工事の様子も全部わかる▼
PRミュージアムグッズ
展覧会のもう一つの楽しみとしてミュージアムグッズがあります。さて、どんなものが販売されているのか、展覧会初日の様子です。
▲建築好きなだけでなく、建築に携わる人が多くくることを想定したグッズ、三スケです。これは買わずにはいられないですね。
ブロンズ(艶なし)、ホワイト、ブラック(艶あり)の3種類で税込946円 写真の中央にあるものです。
3月27日に再訪の際、三スケのブロンズだけ売り切れていました。会期中再入荷があるといいですね。 4/18に行ってみたら入荷されていました!
また、グリッドの入った方眼メモ帳税込1430円や鉛筆のように見えますが鉛筆ではない、長時間削らず書き続けられ、消しゴムで消すこともできるメタルペンは
1,540円(税込)写真の右端箱入りのペン
▲なんと、展示されていたぐるぐる回れる椅子「SPUN」も購入可能です。
▲主要プロジェクトのポストカード税込220円やヘザウィック・スタジオ特集のa+u(2023年2/27刊行)税込2852円など。
どうやら今の所展覧会図録の販売予定はないようです。それに変わるのがこの2月に出版されたばかりのa+uのようです。
▲その他関連書籍も販売中です。
a+u(エー・アンド・ユー)2023年3月号/ヘザウィック・スタジオ
¥2,852 (2024-12-10 12:02 GMT +09:00 時点 - 詳細はこちら価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点で当該の Amazon サイトに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。)基本情報
ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築
2023年3月17日(金) 〜 6月4日(日) 会期中無休東京シティビュー 10:00 – 22:00 チケット ()内はオンラインチケットの料金 港区六本木6丁目10−1 MAP アクセス |
東京シティビューや屋上展望台スカイデッキから見える都心の主な建築物の詳細はこちらの記事を▼
展望を楽しみたいならこちらの記事が参考になります▼