箱根にあるポーラ美術館に久しぶりに行ってきました。現在、ポーラ美術館ではフランスを代表する現代美術アーティスト、フィリップ・パレーノの個展「この場所、あの空」が開催中です。
緑豊かな箱根の森の中にある自然と共生するポーラ美術館で、フィリップ・パレーノのどんな作品が鑑賞できるのでしょうか。
期待に胸ふくらませて訪問してきました。
このブログでは、「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」をより楽しむために観にいく前に知っておきたい情報を中心にまとめてみました。
フィリップ・パレーノ
個人的には、2019年ワタリウム美術館で開催された日本初個展「オブジェが語りはじめると」以来となります。
ワタリウムでは1995年のヤン・フートがキュレーションした「水の波紋」で出品された「リアリティー・パークの雪だるま 」(1995-2019)の再制作が話題になりました。

▲本物の氷の彫刻「雪だるま」が話題でしたが、私が訪問した時は完全に溶けてしまってその姿を目にすることはできず。(奥の展示台が雪だるまの定位置)
パレーノにとって「空間」や「時間」はとても重要な要素です。また、最先端のA Iや技術を駆使した映像作品からドローイングまでその表現方法も多岐に渡ります。
パレーノの場合、個展全体がひとつの大きなインスタレーション作品、あるいは物語と言ってもいいでしょう。
パレーノは、自身の展覧会を「カメラのない映画」と形容しているそうです。
鑑賞者ひとりひとりが映画の登場人物となって、美術館を舞台にどんな物語を創造するのでしょうか。
《私の部屋は金魚鉢》
展覧会冒頭の展示室の作品は、なんと展示室空間内でゆらりゆらりと遊泳しているたくさんの魚たちです。
大きな窓からは箱根の豊かな緑が眩しく、展示室では魚が泳ぐ。この不思議体験はたしかに映画のようです。

▲この魚たちはヘリウムガスの入ったバルーンです。そしてこの作品は、フィリップ・パレーノの魚のバルーンシリーズの最新作でもあります。
魚は触ってもいいけれど、アート作品なので優しく撫でるように触れてください。決して叩いたり投げたりしてはいけません。
《マリリン》
次の展示室は映像作品《マリリン》(2012年)を中心とした部屋全体がインスタレーション作品です。
稀代の大スター、マリリン・モンローが映画『七年目の浮気』のロケのために住んでいた高級ホテル、ウォルドーフ・アストリアのスイート・ルームを舞台に作家が撮影した映像作品です。

▲映像は写真右の大スクリーンに投影されます。映像上映中にこの部屋に入ると最初は気づかないのですが、実は展示室の中に夏にはみることのない季節外れの残雪があります。これもフィリップ・パレーノの作品《雪だまり》です。
私は偶然にも映像投影中にこの展示室に入ったので、映像が終わってから展開されるインスタレーション作品に驚きました。
暗い展示室がその後どのような展開になるのか、その詳細はネタバレになるので書きませんが、できれば映像から鑑賞したいところです。

▲屋外にある作品は、「太陽を向いて転回するもの」を語源とする紫色の花の総称「ヘリオトロープ」です。
その名の通り巨大なミラーが回転し太陽を捉えます。この作品の登場の仕方がちょっと劇的なので映像の途中で退席したりせずに、全部鑑賞することをお勧めします。
ちなみに映像作品《マリリン》は19分49秒です。
《ふきだし(ブロンズ)》
ワタリウム美術館ではグレーだった吹き出しが今回はブロンズです。前回同様宙に浮かんで天井でひしめき合っています。

▲作品《ふきだし》は冒頭の魚と違って触ることはできません。というか手が届く高さではありません。
この展示室には平面作品も展示されています。
《どの時も、2024》
《ふきだし》の隣は暗い部屋です。マリリン同様に映像作品を中心とした展示室になっています。
この部屋には4つの作品が展示されています。
中心となる正面のスクリーンには《どの時も、2024》が投影されています。この作品は14分36秒です。
ここもまたどのタイミングで入室するかによって感じ方が違ってくるように思います。

▲スクリーンの左側には2点の作品が。
手前の《HDKの種子:2025年の預言》は新作で、フレームボードの脇に置かれたボックスの中にはコンピュータが入っています。そのコンピュータは生成AIが超高速で動作していて、リアルタイムで動画を生成し続けフレームボードにその動画を上映しています。
ですからフレームボードの映像をよく見るといろいろ動いているのが分かると思います。生成AIなので都度異なる映像を生成しますから訪問するたびに異なる映像を見ることになります。

▲2006年から形を変え制作され続けている作品「マーキー」。
マーキーとは上演作品のタイトルなどを表示するために劇場や映画館の玄関の上に取り付けられていた庇のことです。
ワタリウム美術館に出品されていたマーキーは「タイトルが空白のマーキー」感がありましたが、ポーラ美術館のマーキーは、もはや本来のマーキーの機能や姿は完全に失われアート作品として明滅していました。
《幸せな結末》
最後の展示室は、ポーラ美術館の展示ケースをそのまま使ったインスタレーションです。

▲1996年に個展で発表した作品に端を発しています。個展会場のある場所で、かつて計画されたものの建設されなかったホテルのためにアルネ・ヤコブセンがデザインしたランプをそのまま展示しました。
その後1997年にそのヤコブセンのランプを再解釈し、素材をガラスに変えて発表しています。
2019年のワタリウム美術館にも出品されていたシリーズです。その時のように明滅するだけでなく今回は姿を消したり現したりもします。
バージョンアップしていますね。
「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」の鑑賞時間について
2本の映像作品だけで約35分あります。最低でも1時間半はみておく必要があります。
また、ポーラ美術館は常設展示室もありますし、屋外の森の遊歩道に屋外作品が展示されています。
ポーラ美術館が初訪問なら3時間は考えておきたいところです。
この美術館は1日中いても飽きません。
一日中滞在した場合、昼食を挟んでも大丈夫です。ポーラ美術館には手軽にランチがいただけるカフェとしっかりランチを食べられるレストランがあります。
レストランは美術館のチケットがなくても利用できますが、カフェはチケットがないと利用できません。
駐車場代は美術館利用でもレストラン利用でも一律1台500円です。
「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」のミュージアムグッズ
私が訪問した時はまだ展覧会図録が完成しておらず販売開始前でした。どんな図録なんでしょう。楽しみですね。
図録はありませんでしたが、フィリップ・パレーノの関連書籍(洋書)の販売は行われていました。

▲ポストカードやマグネットなどのグッズもあったのですが、充実していたのはなんと言ってもTシャツです。
こんなに種類があるなんて!どれにするか迷ってしまいます。
「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」の撮影について
ポーラ美術館の展覧会はいつもだいたい撮影OKです。今回も写真撮影も動画撮影も可能です。
ただし、動画の撮影は1分以内です。

▲詳細な条件は写真を確認してください。
2年ぶりに訪れたポーラ美術館ですが、これまでにも何度も訪れているのですが、何度来ても光が美しく建築も見どころいっぱいの美術館です。
都内から車で1時間半から2時間で到着できる癒しのアートスポットです。
箱根登山鉄道強羅駅とポーラ美術館を結ぶ無料送迎バスもありますから車がない方でも大丈夫です。
基本情報
フィリップ・パレーノ:この場所、あの空
会期:2024年6月8日(土)~12月1日(日) 時間:9:00 – 17:00 会期中無休 入館料:大人2200円 高大生1700円 中学生以下無料 駐車場有(一日500円) 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原 小塚山1285 MAP |