京都にある「顔の家」や青山のFrom 1st/フロムファーストビルなどを手がけた建築家山下和正が設計した建築のうち、身近な六本木界隈にある建築を紹介します。
山下和正と言えば青山にあるフロムファーストビルが有名ですが、実は六本木に3つも山下和正が手がけた建築があることはあまり知られていません。
今回はその六本木にある3つの建築とおまけで渋谷の建築、全部で4つの山下和正建築を紹介します。
PRPIRAMIDE
1990年竣工
六本木駅から徒歩2分ほどの場所にあるテナントビルのPIRAMIDE/ピラミデは、建設当時の施主はブリヂストンでした。
その後、六本木ヒルズを筆頭に六本木の文化都心計画を推進する森ビルに2008年に買収されました。
森ビルに買収されてからのピラミデは、徐々に入居するテナントが現代美術ギャラリーへと変わっていき、現在は11のギャラリーと1つのオークション会社、そして前澤友作の現代芸術振興財団が入っています。
▲中庭にピラミッドがあるからピラミデ。ピラミデは、イタリア語でピラミッドの意味です。
▲三角屋根の戸建が集まっている2階と3階。一番左の棟はなんと喫煙所なんです。贅沢ですねぇ。こんなに喫煙者に優しい場所は今では珍しいですね。
▲ピラミッドのある敷地内の中央には中庭、その中庭を取り囲むように贅沢に配されたテナントスペース。
竣工時の1990年はバブル真っ只中ですから、現在のようにぎゅうぎゅうではなく、とてもゆとりのある設計です。
▲喫煙スペースから4階まであるビル型のエリアを望む。
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▲全面ラスタータイルで覆われているので天気の良い日はキラキラと輝きます。ラスタータイルとは、釉薬によってつやを出したタイルのことで、 パール状の光彩を発するのは、うわ薬の影響が大きく、輝くように見えることからパールタイルとも呼ばれています。
▲共用廊下の腰壁は2階が大きな円弧、3階が三角で4階に小さな円弧が2個とランダムなリズムを持ち、建築に表情を作ります。
この棟には現代美術のギャラリーが多く入っています。
▲足繁く通っている場所ですが、細部に目をやると色々な工夫がなされていることがわかります。
手すりと手すりが直角に交わる部分の装飾には円形の意匠がなされているし、戸建てのような棟の屋根の先端にはガラスの正方形が乗っているし、エスカレーターの壁面のグリッドは斜めになっているし、バブル期に建てられた贅沢な回遊型のテナントビルというだけでなく、面白ポイントがいっぱいです。
その全貌は写真では伝わりません。とても複雑な作りの低層のテナントビルです。
▲引きの外観を撮るのは至難の技です。是非、現地に足を運び、ホットな現代美術の展覧会と共に山下和正の建築を堪能してください。
基本情報
PIRAMIDE/ピラミデ
港区六本木6丁目6−9 MAP |
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ペガサスビル
1979年竣工
1976年にフロムファーストビルで日本建築学会賞作品賞を受賞した3年後に竣工したオフィスビルです。
外苑東通り沿い、青山一丁目駅と乃木坂駅のちょうど真ん中あたりで、山王病院の向かいにあります。
▲このフォルムは、後々のピラミデに通じるものがありますね。直線と曲線の優雅な融合です。そして、最上階にはやっぱり四角い箱が乗っているような装飾がなされています。
▲ペガサスビルの名の通り、中央にペガサスが飛翔するシンボルが掲げられています。
すでに竣工から40年以上経つ古いビルですが、綺麗に使われています。
▲中央に見える柱の下部はタイルではなく、石と金属による装飾が。
2階の共用廊下の腰壁と手すりは波型に揺らめいています。
▲フロムファーストやピラミデのように回遊させるほどゆとりのない縦に長いビルですが、曲線やマテリアルの変更で遊び心を演出しています。
この柱、敷地からはみ出ていたのでしょうね。明らかに削られています。
基本情報
ペガサスビル
港区南青山1丁目15−3 MAP |
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STRIPED HOUSE GALLERY/ストライプハウスギャラリー
1980年竣工
竣工時は写真家塚原琢哉が設立したストライプハウス美術館でした。
2000年に美術館が閉鎖後、2001年12月から3階をギャラリーとする運営に変わり、現在は、ギャラリーと共にレンタルスペースとしても活用されています。
▲ストライプハウスですから、2色使いのタイルでストライプになっています。
遠くからでもすぐわかるビルです。
▲四角い窓の並びが顔に見えなくもない。
そして、やっぱり最上部には四角い箱のような意匠が施されています。
▲森ビルの再開発の手が間近に迫ってきているエリアで、東洋英和女学院と背中合わせに建っています。数年後には解体されてしまうのでしょうか。
基本情報
ストライプハウスギャラリー
港区六本木5丁目10−33 MAP |
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Kezette House/ケゼットハウス
1978年竣工
渋谷のセンター街にある小規模なテナントビルです。竣工時はこんなにゴミゴミした街ではなかったでしょうから、目立っていたのではないでしょうか。
▲ピラミデに通じるような渋いグレーのタイル張りの建築です。
直線と曲線で構成されたフォルムは、45年以上経っても飽きのこないデザインです。
▲上部には四角い箱ではなく、円形の窓が並んでいますね。
▲雑踏の中にあるのですが、タイルとレンガの2つのマテリアルの使い方とか、ドーム状の屋根とか、実は洗練されたデザインです。
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基本情報
Kezette House/ケゼットハウス
渋谷区宇田川町30-2 MAP |
実は日本民藝館新館の設計も山下和正です。
山下和正の代表作フロムファーストビルの記事はこちらから▼
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