広尾の住宅街にあるチェコセンター東京で、19世紀末から20世紀前半の急速に近代化が進む日本を訪れたチェコの旅行家たちが撮った写真の展覧会「チェコの旅行家たちの目に映った近代日本」が開催されています。
ちょうど1年前に開催されたチェコのジャポニズム文学をテーマにした展覧会「夢うつつの世界へ 近代チェコ文学に描かれる〈日本〉」の続編とも言える企画のようです。
19世紀半ばに日本が開国した当時、チェコはまだオーストリア=ハンガリー帝国の一部でしたが開国したばかりの東洋の国への興味・関心は高く、その後第二次世界大戦の頃までチェコではジャパネスク文学が隆盛を極めます。
そんな時代に旅行者として日本を訪れたチェコ人たちが見て記録した近代日本の姿の一部を観ることができます。
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神秘の国 日本へ
今回は写真がメインでキャプションは少なめ。撮影者と場所と年代という最小限です。
▲彩色された写真たち。
厳島神社の大鳥居と帆掛け船、奈良の石灯籠そして日光の神橋。
奈良と日光はちょうど100年前の1923年撮影ですが、たぶん今訪れても変わらない景色だろうと思います。
▲ヨーロッパ人にとって物珍しかっただろう大仏。
左はもちろん私たちも見慣れた鎌倉の大仏様(高徳院)。
右上へは上野大仏(上野公園)、右下は神戸大仏(能福寺)。今はもう失われた大仏です(上野の大仏の方は顔だけ残っていますが)。
▲街頭の様子や珍しい風習なども撮られています。
左上は京都の二条城、その下は浅草の行商の本売り。
そして右下は100年以上の前の羽田の穴吹稲荷神社。明治時代には穴吹稲荷に鳥居を奉納するのが流行り、その頃の写真です。
▲一般の名もない庶民たちの暮らしぶりもしっかり記録されています。
右上は大道芸人、左上から高尾山の物売り、江ノ島の旅館など。
関東大震災前の江ノ島は貴重な記録写真です。
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関東大震災
1923年9月1日、ちょうど100年前に発生した関東大震災にもチェコ人たちは遭遇し、その記録も残されています。
▲震災後の横浜の様子です。
日本の田舎と花咲く日本
展示室外にも近代化の波が十分に届いていない日本の田舎、それと桜の季節の日本の様子が紹介されています。
▲田舎のあばら家みたいな写真から、近代化されつつもどこかノンビリした鎌倉の海岸など。
▲また桜が咲く日本各地の写真。
やはり当時から桜は人を惹き付けるものがあったのですね。
このように東欧人であるチェコの人々が見た近代化しつつある日本。ユニークな視点からの写真展です。
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会場の様子
この展覧会、会場はチェコセンター地下の一室です。
▲ひたすら写真が並んでいる会場構成。
▲会場内はいくつかのセクションに別れ、各セクションに額装が数個。
そして各額装内に写真が数点という構成です。写真の数は思った以上に多いので丁寧に見ていくと結構な時間がかかります。
ちなみに展示室内は写真撮影も可能です。
▲今回の展覧会でフィーチャーされているチェコの旅行家たち。
チェコのジャパネスク文学を作り上げた人から、それに影響を受けて日本を訪れた人たち。それと世界を見聞しようとする旅行者たち。様々なバックグラウンドを持つ人たちです。
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チェコセンター東京
この「チェコの旅行家たちの目に映った近代日本」展の会場は広尾のチェコセンター東京です。
チェコセンターは広報や文化交流を通じてチェコの文化を世界中に広める役割を担っているチェコ外務省の外郭団体で、このうちチェコセンター東京は2006年10月にアジアで第一号のチェコセンターとして、駐日チェコ共和国大使館内にオープンしました。
入館方法
チェコセンター東京はチェコ大使館と同じ建物内です。大使館と言うと四方八方にポリスボックスが設置され、ものものしいイメージがありますが、それは中国大使館やロシア大使館、アメリカ大使館など、一部の大使館であって、実はそれ以外のほとんどの大使館がそこまで厳しい警備をしているわけではありません。
ただチェコセンターは土日祝日はお休みなので、フルタイムで働く人には訪問難易度高めの施設です。
▲また、一応大使館と同じ建物なので、館内の出入口にはセキュリティがかかっています。
インターホンを押して、展覧会を観にきた旨伝えると解錠してくれます。
▲センター内には図書閲覧コーナーがあって初代大統領ヴァーツラフ・ハヴェルの著作があったりします。セルフのコーヒーコーナー(有料)もあるので、コーヒーを飲みながら珍しい書籍に目を通したりすることができます。
PRチェコ共和国大使館
チェコ大使館は、広尾の静かな住宅街にあって監視カメラこそありますが、警備員が常時いるわけでもなく、非常に平和な大使館です。現在の建物は、もともと当時のチェコスロバキア大使館として、1977年に建築された建物です。その後1993年にスロバキアが分離したため現在はチェコ共和国大使館となっています。
設計
「駐日チェコ共和国大使館の建物は、建築家のイジー・ロウダ氏およびイヴァン・スカーラ氏が、クヴィーズ氏とコトルボヴァー氏との協力により設計した案に基づき、1975年から1977年にかけて建てられました。
チェコスロヴァキアで栄えたブリュッセル様式の名残が感じられる、ブルータリズム形式の建築となっています。」(チェコ共和国大使館HPより抜粋)
日本でチェコの建築と言えばアントニン・レーモンドがまず頭に浮かびます。アントニン・レーモンドは、1948年から1973年まで日本に滞在し、日本の近代建築を築いたチェコ人建築家です。
今でもそのDNAは株式会社レーモンド設計事務所として脈々と受け継がれています。チェコ共和国大使館の設計にはレーモンド事務所も協力をしています。
ただ、大使館の建物の竣工が1977年で、アントニン・レーモンドはその前年に亡くなっていますので、レーモンド自身というより、レーモンド事務所が設計協力をしたという事でしょう。
建築
大使館の建物は9階建てと5階建ての2棟から構成されています。
▲日赤通りからは、5階建ての建物しか見えないのですが、裏にまわると斜面に9階建ての建物があることがわかります。
5階建と言っても日赤通りからみると地上3階、地下2階の建物です。
▲ドアハンドルは全部このCzechの頭文字の「C」です。無茶苦茶可愛い。
大使館の入り口とチェコセンター東京の入り口は向かい合っており、そのドアハンドルも両方とも「C」です。しかも外側のCとは別のデザインのCです。
大使館の建物を観ているだけでも楽しいチェコ大使館です。
PRチェコセンターは一歩中に入るとそこはチェコです。そんな場所で100年前の旅行者たちの目に映った日本。意外にも今と変わらないところもあれば、たった100年前とは思えないような風景だったり。いつもと異なる視点で見る近代日本という展覧会、全部見るのにそれほど時間もかからないですし、近くに行く機会があったらちょっと覗いてみてはどうでしょう。
基本情報
チェコの旅行家たちの目に映った近代日本展
2023年2月6日(月) – 3月20日(月) 10:00 – 19:00 土日祝は休館 入場無料、予約不要 渋谷区広尾 2-16-14 チェコセンター東京 MAP |