上野の国立西洋美術館ではアメリカのサンディエゴ美術館との共同企画展《西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで》を2025年3月11日(火)から6月8日(日)の会期で開催しています。この内覧会に参加しました。
サンディエゴ美術館と国立西洋美術館の所蔵する作品計88点を組み合わせ、それらの対話を通じてルネサンスから19世紀に至る幅広い西洋美術の魅力とその流れを紹介しようという展覧会です。
なんとなく難しそうな内容に見えて実は逆。絵画などの作品の ”どこみる” という視点を提供してくれるので、マニアでなくでも絵画の見どころや楽しみ方が分かるというもので、若い人にこそ訪れてもらいたい展覧会です。
中学生以下は入館料無料、さらに小中学生には「ジュニア・パスポート」という鑑賞ガイドも配布しています。3月の春休みや桜の季節に、あるいはGWに上野公園と西洋美術館に足を運んでみたくなります。

サンディエゴ美術館
国立西洋美術館と共同企画し主催にも名を連ねるのはアメリカはカリフォルニア州のサンディエゴ美術館。
カリフォルニアというと日本ではロサンゼルス(LA)やサンフランシスコといった都市がイメージされますが、実はサンディエゴは都市の規模でいったらロサンゼルスに次いで2番目の大都市なのです。
サンディエゴ美術館はそのサンディエゴの中心部バルボアパークという都市公園内にあります。

サンディエゴ美術館は世界中の幅広いジャンルの作品を収蔵していて、特にイタリア美術、スペイン美術のコレクションが充実しています。
対して国立西洋美術館は20世紀までに至るヨーロッパの美術の歴史を辿れるように作品を集めてきています。そのため両館には共通点も多く、それもあって今回の共同企画が実現したようです。
本展のためにサンディエゴ美術館から来日したのはルネサンス期から19世紀に至る西洋絵画の傑作ばかりで、どれも日本初公開となる作品です。しかもほとんどの作品はサンディエゴ市外で展示されるのも初めて、いわば門外不出とも言える作品です。
ルネサンスから19世紀までのいわば西洋芸術の最盛期の作品が20世紀になって一方は西洋文明の西の崖でもあるサンディエゴに、一方は西洋文明から遥か東の果ての日本に収蔵され、それが21世紀になって海を越えて一緒になって展示されるというのもロマンです。両館のコレクションと共同企画のロマン、どうしても期待が高まる展覧会です。
西洋絵画、どこから見るか? 展の構成
本展はサブタイトル通り、ルネサンスから19世紀印象派までの全4章から構成されています。
第1章 ルネサンス
ルネサンスの先駆者であるジョットから始まる第1章は主にルネサンス期の作品ですが、さらに時代と地域によりサブタイトルが付けられています。
i ゴシックからルネサンスへ
ii ヴェネツィアの盛期ルネサンス
iii 北方ルネサンス
第2章 バロック
17世紀のバロック様式の作品ですが、地域によりサブタイトルが付けられています。
i スペイン
ii イタリア、フランス
iii フランドル、オランダ
第3章 18世紀
第4章 19世紀
追加作品
第4章までは国立西洋美術館の企画展示室を使って展示されていますが、5点だけ常設展示室に展示されています。
西洋絵画、どこから見るか? 展のみどころ
本展にはジョットというルネサンス前夜の作家からドガ、ロートレックといった19世紀末の作家まで幅広い時代のアーティストの代表作や傑作が展示されています。その中から見どころと思える作品をいくつか紹介します。

▲サンディエゴ美術館からやってきた作品の中でも特に際立つ作品、スペインの画家フアン・サンチェス・コターンのあまりに有名な《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》。展覧会のキービジュアルとしても使われています。
もちろん日本では初公開となる作品です。
同じ展示室には国立西洋美術館が所蔵する同時期のスペインの画家フアン・バン・デル・アメンの《果物籠と猟鳥のある静物》が展示されています。同じような時期に同じ国の画家が描いた静物画を見比べることで、似ているところ、似ていないところを見つけてみようというのが鑑賞のヒントです。

▲これはどちらもスペインの画家エル・グレコ(ドメニコス・テオトコプロス)の宗教画。
左はサンディエゴ美術館収蔵、右は国立西洋美術館収蔵の作品です。
同じ作家の似た題材だけどちょっと時期が異なる作品が並んでいると、どこが同じでどこが変わったのかが分かりますね。
このように両館の作品をペアで並べたり、小テーマでまとめたりしているところが本展の真骨頂でもあり、絵画の見方や読み方を学ぶ良い機会でもあるのです。

▲これは18世紀のヴェネツィアを描いた作品。
作家は異なりますが同じような色彩で、当時のヴェネツィアは本当にこんな空だったのだろうなと実感します。

▲これは17世紀、バロック様式のイタリアの作品。
左が国立西洋美術館、右がサンディエゴ美術館の所蔵作品で、どちらも光の劇的効果が似ていますね。
多くの作品にはみどころの解説や、作品を見るヒントが書かれていますから、それを読み解きながら足を進めると良いでしょう。

▲展覧会には「DOMIRU? 感想コーナー」があって、付せん紙に感想を書いて壁に貼り、鑑賞者同士で共有するコーナーもあります。
追加作品
国立西洋美術館の常設展示室にもサンディエゴ美術館からやってきた作品が5点、 特別展示されています。
まとまったコーナーがあるわけではなく、広い展示室に分散して展示されていますから他の作品と併せて鑑賞します。

▲緑色のボードにキャプションが書かれているのが「西洋絵画、どこから見るか?」展の特別展示作品で、同展の会期中に限って展示されるものです。

▲また茶色く ”新規収蔵作品” とあるのは国立西洋美術館での新規収蔵作品です。
「西洋絵画、どこから見るか?」展のチケットで常設展示室にも入れますからどちらも見逃さないようにしたいです。
ミュージアムショップ
特設ミュージアムショップが本館1Fロビー展に設置されています。

▲展覧会図録は2,700円(税込み)です。
一見2種類あるように見えますがコターンの静物画(右)が表紙、カペの《自画像》は裏表紙です。

▲トートバッグ、バッヂ、ポストカードなどグッズ類も豊富。

▲Tシャツもコターンの静物画がやっぱり映えますね。
黄色い太陽みたいなクッションもグッズです。某作品中に登場するモチーフです。
▲音声ガイドのレンタルもあります。
音声ガイドナビゲーターはディーン・フジオカ、解説ナレーターはTBSアナウンサーの日比麻音子。
レンタル料金は650円(税込)ですが決済は現金のみです。ご注意を。
西洋絵画、どこから見るか?展の混雑状況
本展は3月から6月上旬まで3ヶ月という会期です。
その間に春休みもありますし上野公園が一番混む桜の時期にも重なります。さらにGWもありますからこうした時期は放っておいても混雑します。正直話題性としてはモネやミロには敵いませんが日本経済新聞やTBSという大メディアが主催者ですから、時間が経てば話題の展覧会になると思います。
展覧会は会期後半になれば空くなんてことはないので、「西洋絵画、どこから見るか?」展に気が付いたら(本記事を読んだら)すぐにチケットを買って国立西洋美術館に向かうことをお奨めします。
訪問する場合、本当なら平日が良いのですが本展の場合は特に小中学生でも楽しめるものですから、混み始める前の週末に訪問したいですね。
写真撮影と鑑賞時間
本展は原則として写真撮影可能です。ただし動画撮影は禁止です。
写真撮影の際もフラッシュ撮影、三脚や自撮り棒などの撮影機器の使用、作品の接写等の行為は禁止です。
こうしたレギュレーションは混雑状況などによっても変わりますので、展覧会場での最新の指示に従ってください。
鑑賞時間ですが展示作品数が88点なので普通に見れば1時間です。ただし、キャプションを読んで鑑賞のヒントを貰いながら見ているとあっという間に2時間コースです。
さらに常設展示室の5点もとなるとさらに1時間ですね。
※本記事は内覧会で特別に許可を得て撮影した写真を使用しています。
西洋絵画、どこから見るか?展のチケット
公式オンラインチケット(e-tix)や各プレイガイド、および国立西洋美術館で当日券を購入できます。
特に事前予約などは不要です。
西洋美術も良いんだけど絵の見方がよく分からないとか、子どもたちに良質の古典美術を見せてあげたいといった人にはぴったりな展覧会ですが、擦れっ枯らしな美術マニアにとっても新しい視点のヒントを与えてくれるという意味でお奨めかもしれません。
基本情報
西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで
会期:2025年3月11日(火) ~ 6月8日(日) 開館時間:9:30 – 17:30 (金・土曜日は20:00まで) 休館日:月曜日と5月7日(水)。ただし3月24日(月)、5月5日(月)と5月6日(火)は開館 観覧料:一般 2,300円 、大学生 1,400円、高校生 1,000円、中学生以下は無料 会場:国立西洋美術館 住所:東京都台東区上野公園7−7 MAP アクセス:JR上野駅 公園口改札から徒歩1分、地下鉄上野駅 7番出口から徒歩8分、京成電鉄 京成上野駅から徒歩7分 |