前々からいつかは訪れたいと思っていた場所、安田侃(やすだかん)彫刻美術館アルテピアッツァ美唄(びばい)をようやく訪れることができました。
安田侃彫刻美術館アルテピアッツァ美唄は、北海道の中部の美唄市(びばいし)にある、同地出身の彫刻家安田侃の個人美術館です。
安田侃は、1970年代より大理石の産地として知られる北イタリアのピエトラサンタにアトリエを構え、大理石とブロンズによる彫刻の創作活動をしています。
そこでイタリア語で「芸術広場」を意味する「アルテピアッツァ」が美術館に名付けられたようです。
PRかつての炭鉱町、美唄
美唄はかつて炭鉱の町として栄え、最盛期には炭鉱夫とその家族、約10万人が生活していました。”一山一家”という言葉が物語るように、炭鉱町はまるで一つの大きな家族のようで、日々、危険な作業に身を置きながら強い絆で結ばれていました。
しかし、やがて炭鉱は閉山となり、多くの人が仕事を求めて美唄を離れました。それでもなお、炭鉱町美唄に思いを寄せる人々が多く、遠く離れても故郷の記憶や思いを抱き戻ってくることがあります。
安田侃彫刻美術館アルテピアッツァ美唄の美術館の建物は、かつて炭鉱夫の子供たちが学んだ木造校舎と体育館を利用しています。これらの建物は、安田侃美術館であると同時に、かつて隆盛した炭鉱町美唄の歴史を後世に伝え、次世代に語り継ぐ場としての役割も果たしているのです。
安田侃(やすだかん)
1945年美唄市に生まれた安田侃は、東京藝術大学大学院を卒業後、1970年にイタリアに渡ります。以来、北イタリアのピエトラサンタにアトリエを構え、活動をしています。
都内では、六本木の東京ミッドタウンに白い大理石の作品「意心帰」と、黒いブロンズ作品「妙夢」を見たことがある方は多いでしょう。
他に、渋谷区文化センター大和田にも二つの作品があります。また東京都庭園美術館、東京国際フォーラム、電通本社ビルなどでも作品を見ることができます。
当然ですが故郷である北海道にもその彫刻作品は多く、札幌駅JRタワー、札幌コンサートホールKitara、北海道知事公館、洞爺湖畔、創成川公園、旭川駅などに設置されています。
安田侃彫刻美術館アルテピアッツァ美唄
1988年に廃校になったかつての小学校校舎を、作品の保管スペースを探していた安田侃の彫刻作品収蔵庫として活用することになったのが全ての始まりです。
1991年に体育館を改修してアートスペースとして利用されることになり、翌年1992年に野外にも彫刻作品を設置し、アルテピアッツァ美唄としてオープンします。1999年には旧校舎を改修してギャラリーを開設、2002年には建築界に感銘を与えた建築作品を設計した建築家に与えられる「第十五回村野藤吾賞」を安田侃が受賞しています。
2003年には天皇皇后陛下(現上皇夫妻)が視察に訪れ、その名は全国区となりました。
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雪のアルテピアッツァ美唄
以前、白金のギャラリーで安田侃さん本人とお会いした時に、ご本人から「雪のアルテピアッツァ美唄はいいよー」と言われたのですが、本当に雪の美唄に来ることになるとは思いもよりませんでした。というのも札幌は雪ではなかったからです。
美唄も正確には雪が降っていたのではなく、雪が積もっていた状態でしたが、真っ白な雪景色の中の安田侃作品は、東京ではなかなかお目にかかれない光景です。
▲雪で覆われ、どこに作品があるのか分かりにくくなっています。実は、白い大理石の作品には全て保護カバーがかけられており、余計に見つけにくくなっています。
▲軽井沢のセゾン現代美術館にも、似たシチュエーションに設置されている連作があります。
きっとセゾン現代美術館も冬場は保護カバーがかけられているのかもしれませんが、冬季休館しているので、一般人は冬の安田侃作品を目にすることはありません。ですから、これはある意味レアな状態が見れたと言っていいでしょう。
▲夏場は水の広場として、人気の場所ですが、冬場は立体作品だけでなく、地面の作品もカバーされていました。
その様子は完全にクリスト状態です。
雪の中の作品も素敵でしたが、広い敷地内を歩きまわることは難しく、全ての作品の近くまで行って鑑賞することができませんでした。
雪の美唄もいいけれど、保護カバーなしで、広大な敷地の作品を散歩しながら見て回れる季節の方がおすすめかもしれません。
雪のアルテピアッツァ美唄は上級者またはリピーター向けですね。
私自身は初訪問が雪の美唄となりましたが、ほとんど人がいなくて貸切で楽しめたので満足です。
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旧体育館アートスペース
雪国仕様のドーム型の屋根を持つ旧体育館です。
▲外観もノスタルジックで可愛い。
▲外観も良いけれど、中もすごかった。
かなり改修で手を入れているとは思いますが、炭鉱町の記憶を残す古い体育館建築と安田侃作品の共鳴が心地よいアートスペースです。
▲贅沢な展示。贅沢な空間です。わざわざ来た甲斐があります。
▲体育館の2階には安田侃コーナーがあります。世界中に設置されたモニュメントの写真を見ることができます。
また、ノートが置いてあって、訪問者がメッセージを書くことができるようになっています。
ペラペラとめくると全国各地から訪問者が来ていることがわかります。
このノートのメッセージをまとめた書籍「また来ます」があってついつい読んでしまいました。
旧校舎ギャラリー
残念だったのは、雪で保護カバーがかけられていたことよりも、旧校舎が改修工事中で中に入れなかったことです。
▲事前にわかっていたことですが、見たかったなぁ。
これは「もう一度新緑の季節に来なさい」と言われているような気がします。再訪決定ですね。
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カフェアルテ
安田侃の彫刻作品と炭鉱町の歴史の共演を堪能した後は、ゆっくりと美味しいコーヒーをいただきます。
▲とっても素敵なミュージアムカフェCafe Arte。店内にも小さな安田侃作品が。
▲雪の中の彫刻作品を眺めながら(ここから見える作品もカバーされてましたが)、美味しいシーズケーキと珈琲。至福の時間です。
▲暖炉があるのでとっても暖かく、居心地のいいカフェです。
安田侃の関連書籍が置いてあるので、ページをめくりながらカフェタイムを過ごせます。
▲軽食もいただけるのは嬉しいですね。
何年間もいつか行きたいと思い続けた美術館への訪問が叶って大満足でした。
雪の美唄もいいです!おすすめです!
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基本情報
安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄 (Kan Yasuda Sculpture Museum Arte Piazza Bibai)
カフェアルテ 10:00 – 16:00(土日祝は〜17:00) 火休、祝日の翌日(日は除く)休、12月31日~1月3日休 入場無料(任意による寄付) 北海道美唄市落合町栄町 MAP アクセス:JR函館本線 特急にて約35分美唄駅下車、市民バス東線「アルテピアッツァ美唄」行き(東明通り経由32分、旭通り経由19分) 美唄駅よりタクシー約10分 車の場合:道央自動車道利用で札幌JCTより35分、新千歳空港より60分、美唄IC下車、右折後、道道美唄富良野線を1.7km (約5分) 無料駐車場あり |