これまで長野県立美術館・東山魁夷館(その1)、その2という記事でリニューアルした「長野県立美術館」の本館を、その3では谷口吉生の「東山魁夷館」を、そしてその4では中谷芙二子の「霧の彫刻」紹介してきました。
簡単に言うと、2021年オープンという最新の美術館建築の県立美術館、谷口吉生の本領を発揮したかのような東山魁夷館、初めて美術館に常設展示される中谷芙二子作品というように見どころ満載なのが長野県立美術館です。
天気が良いとこのような南カリフォルニアを思わせるような青空の下の現代美術専門美術館みたいな佇まいを見ることもできます。なんとも美しい光景です。
さて、その真新しい長野県立美術館は今年2022年に七年に一度の「御開帳」が行われる善光寺とはほぼお隣さんなのです。
せっかく善光寺に行ったならすぐお隣の長野県立美術館もやはり訪問してみたいですね。
特に2022年の御開帳期間中は「マン・レイと女性たち」という興味深い展覧会が開催されています。
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善光寺御開帳
普通に ”御開帳” と言っていますが正確には「善光寺前立本尊御開帳」といいます。
七年に一度、絶対秘仏である善光寺御本尊の身代わりである 「前立本尊」(鎌倉時代の作で重要文化財)を本堂に安置して拝むことができるというイベントです。
善光寺の本尊は秘仏として姿を見せることができないので代理として「前立本尊」を造り、それも普段は見せられないけど7年に1回だけ公開しましょうというとこですね、簡単に言うと。
コロナにより前代未聞の8年ぶりとなった御開帳の様子。
朝10時頃は回向柱に触る行列もあまりありません。▼
本来は2021年が開催年だったのですが疫病(COVID-19)の流行もあって1年延期されて2022年に、しかも通常約2ヶ月の会期を3ヶ月に延ばして開催されることになりました。
7年に1回それも2ヶ月だけ(今回は3ヶ月)という希少性もあって毎回数百万人の参拝客がこの御開帳に集まりますから、伝統を破ってでもCOVID-19対策するしかなかったのですね。
普段の善光寺の様子▼
PR回向柱(えこうばしら)
下の写真は御開帳の期間中に本堂前に建てられる「回向柱」です(善光寺の本堂内は写真撮影NGなので)。
何か紐が結び付けられ本堂の方に伸びているのが分かります。そして紐の先は本堂内の前立本尊の指なのです。▼
本堂側から回向柱を見た様子です。紐がまっすぐつながっているのがわかります。▼
つまりこの回向柱に触ることは紐伝いに前立本尊に触れるのと同じ。なのでご利益にあやかろうと昼間は大勢の人が並んで回向柱に触れる順番を待っています。
12時頃には大行列になっていました。▼
この写真を夜中に撮ったのは、夜だと他に人がいなくて簡単に触れるから。善光寺は24時間いつでも立ち入り可能なので夜参拝しても問題ありません。
また2022年の御開帳では21時までライトアップをするそうですから、夜だと並ばないで済むかもしれません。▼
善光寺の地震柱
善光寺の本堂(国宝)は108本(煩悩の数と同じ)を支えに建っているのですが、その柱の何本かは写真のように土台とズレてしまっています。
こういう柱を「地震柱」といい少し前までは ”1874年の善光寺地震の痕” と言われていました。ただ今では補修の際に宮大工が木材の経年変化を織り込んで柱を建てたからという説の方が有力なようです。
こんなに捻れて大丈夫なのか、本当に経年変化なのかそれとも地震なのか、善光寺に行ったらここで現物を見て考えたいですね。▼
2022年善光寺御開帳は泊まりでの訪問も便利です。じゃらんで予約をどうぞ。
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善光寺から美術館へ
善光寺も長野県立美術館も敷地が広いので隣接しているといっても結構距離があります。
この写真は善光寺の境内に立つ案内板です。写真の向こうに見える屋根は善光寺の山門で本堂はまだもっと先。その本堂の横を抜けていくと長野県立美術館です。
この看板のある場所から美術館の入口まで500m以上はあると思います。▼
山門を抜けて回向柱に触り、本堂で前立本尊を拝んで、本堂の地震柱を見て回り、本堂横(東側)の参道を見てみると・・・
やっと向こうに長野県立美術館美術館が見えてきます。ここから300mくらい先でしょうか。
これでだいたい位置関係と距離感が分かるかと思います。
長野県立美術館
2022年の日本建築学会賞を受賞した話題の長野県立美術館です。いくつも見どころはあるのですがまずは木材を使った大屋根のある「風テラス」。
ミュージアムカフェもあり、広々としたオープンテラスで休みながら向こうの善光寺本堂も見えるという最高なロケーションです。
この風テラスのひとつ下のフロアにはレストランがあって、そこも眼前に善光寺というロケーションになります。
まさに「ランドスケープ ミュージアム」の本領発揮です。▼
もう一つの目玉が「水辺テラス」。
頭上を本館と東山魁夷館を結ぶ連絡ブリッジが通っていて、その手前に広場スペースがあります。
そしてブリッジの向こうに人工的な滝が2段連なっています。
何も知らないとふーんと見過ごしてしまいそうですが、実はここが長野県立美術館最大のポイントです。▼
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水辺テラス
上部の斜面から水が流れ、それが下のさらに大きな傾斜を流れ落ちています。▼
御開帳の開催中から夏にかけては気持ちいいでしょうね。長野は大きな盆地なので夏はかなり暑いはずです。
これは本館と東山魁夷館を結ぶ連絡ブリッジ。左右の眼下に水辺テラスを見ることができます。▼
PR霧の彫刻
この水辺テラスに常設されているのが中谷芙二子(なかたに ふじこ)の「霧の彫刻 #47610 -Dynamic Earth Series Ⅰ-」。
中谷芙二子の代名詞とも言える霧の彫刻シリーズの最新作で、美術館に常設されるのは世界中でもここ長野県立美術館が初めてです。中谷芙二子について詳しくは以前の記事をどうぞ。
毎日10:00, 12:30, 14:00, 15:30 の4回、霧の彫刻が姿を現します。
(開館当初は毎時30分ごと1日8回でしたが今は1日4回に減っています。また2022年になり再開したつい最近、時間が変更になっています。訪問の際はホームページで最新の情報を確認して出かけてください)
2022.4月美術館のデジタルサイネージにて▼
▼霧自体は水辺テラスの上部から吹き出されてきます。
これが風向き、天候その他の条件で毎回異なる姿を現すのがこの作品の醍醐味です。
霧の発生装置は中谷芙二子が主導して開発したもので、20ミクロンの水の粒子が空気中に放出されてそれが「霧」になるというハイテク装置です。
いったん水面まで下りた霧は再び上昇し、連絡ブリッジまで霧に覆われます。
もう少し風があると霧に浮かぶ谷口吉生の東山魁夷館という光景を見ることができると思います。▼
2022年4月の様子。この日は、調整中ということで、手前と右の2箇所の水盤の水が抜かれていました。いつ水が戻るかはわかりませんが、調整が終わったらまた水を入れるそうです。▼
調整中ということで霧が出ていない時は、作業服を着た関係者が何か作業をしているようでしたが、霧の彫刻はちゃんと見られました。▼
動画でもご覧ください▼
PRランドスケープミュージアム
中谷芙二子を見てしまえば後は落ち着いて美術館を見学できます。
”ランドスケープ ミュージアム” を標榜するだけに傾斜地に配置された美術館の建物をあちこちから見て楽しんだり▼
風のテラスからの眺望を楽しんだり。
あちこちから思わぬ眺望が楽しめたり、劇的になる要素を仕込んであったりして設計者 宮崎浩の遊び心を見つけて楽しましょう。
谷口吉生の東山魁夷館
長野県立美術館には「東山魁夷館」という東山魁夷の作品を保存・展示する美術館が併設されています。そしてこの美術館の設計が谷口吉生です。
谷口吉生らしい水面の使い方など楽しめます。ここも出入り自由なエリアです▼
金沢にある谷口吉生の代表作「鈴木大拙館」でも見たような感じですね。
東山魁夷館のエントランスから見たスクエアな空間と水鏡。
なお東山魁夷館は長野県の風景も多く描いた日本画家の東山魁夷が寄贈した作品を保存・展示する美術館で、収蔵品の展示だけを行っているみたいです。
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長野県立美術館はオープン直後に訪問して何回に分けて紹介しました。
本来は2021年の善光寺御開帳の直前にオープンさせたかったのでしょうけどパンデミックの影響で美術館だけが先にオープンということになりました。
2022年は御開帳と真新しい美術館という、やりたかったスタイルでの美術館が楽しめると思います。
御開帳で長野へ行くならぜひこの機会に長野県立美術館と中谷芙二子も合わせて訪問してみてはどうでしょうか。
また善光寺と長野県立美術館に合わせて新緑の奥信濃を楽しむのも良いでしょう。
宿泊するなら長野のホテルを一休で検索してみてください。
長野県立美術館 基本情報
館名 | 長野県立美術館 |
住所 | 長野県長野市箱清水 1-1-4 |
最寄駅 | 長野駅 |
休館日 | 水曜日 (5/4と11/23は開館し翌日休館)、年末年始 |
開館時間 | 9:00 – 17:00 |
善光寺御開帳 基本情報
行事名 | 善光寺御開帳 |
会場 | 信州善光寺 |
会期 | 2022年4月3日(日) 〜 6月29日(水) |
アクセス | 公式サイトを参照 |
善光寺 基本情報
寺院名 | 信州善光寺 |
住所 | 長野県長野市元善町 491 |
最寄駅 | 長野駅 |