金沢・石川で建築とアートを巡る
石川県と金沢は江戸時代からの文化の蓄積もあり、伝統工芸から現代アート、さらに近現代の名建築が点在しています。兼六園などの観光名所も多く日本人はもちろんインバウンドのお客さんも多い観光地です。
「建築とアートを巡る®」ではこれまで何度も訪れていているので、今回は2泊3日で石川県内と金沢市内を巡るモデルコースを紹介をしてみます。初日は金沢市内をメインに、2日目はさらに石川県内にエリアを広げて巡ってみるというコースです。
デスティネーションとして世界中からファンを集める「金沢21世紀美術館」は修繕工事のため2027年5月から1年弱休館します。工事前の美術館の姿を見ておくためにも金沢、石川を巡る旅はどうでしょうか。
巡ってみるのは1日目が
・金沢21世紀美術館
・国立工芸館
・鈴木大拙館
2日目が
・谷口吉郎・吉生記念金沢建築館
・石川県立図書館
・西田幾多郎記念哲学館
・石川県金沢港大野からくり記念館
・松任海浜公園 展望休憩所
3日目が
・セラボクタニ
・加賀片山津 総湯
・中谷宇吉郎雪の科学館
なお、この記事で紹介する宿泊施設からスポンサードいただいています。
<金沢へのアクセスとルート>
東京から金沢への鉄道は2015年に北陸新幹線が開業し半世紀ぶりに直通列車が復活したことで格段に便利になりました。最短で2時間半なので朝7時台の新幹線に乗れば多くのオフィスや店舗が開く10時前には金沢到着。これならビジネスでも観光でも1日が有効に使えます。
今回は平日の朝7時20分東京駅発のかがやきに乗り10時前に金沢入り。市内でアートと建築を巡りその日は金沢市内宿泊。翌日は前半が建築巡りをして午後は県央を巡りながら加賀市へ移動し宿泊、最終日は南加賀の建築を巡って小松空港から飛行機で東京へ帰るというコースです。
北陸新幹線の金沢 – 敦賀間延伸に伴い開業した新幹線の加賀温泉駅から新幹線で帰る選択肢もありますけど飛行機の方が安いんですよね。
なお旅行中の移動は主にレンタカーを利用しました。主に金沢市内を巡る初日は公共交通機関で、2日目に金沢市内でレンタカーを借り3日目に小松空港で返却です’。
1日目
旅の初日は東京から新幹線で金沢へ。軽井沢などを経由して最速2時間半で到着します。
市内の美術館や名建築を巡ってこの日は金沢駅からも近い町家宿に泊まります。
<金沢21世紀美術館>
2004年の開館から20余年、日本中、世界中からここを訪れるのを目的に金沢にやってくる人が後を絶たないのが「金沢21世紀美術館」。
SANAA設計による斬新な建物、現代美術に振ったコレクション、見応えのある常設作品などこの後に開業する美術館のモデルともなった美術館です。
金沢・石川で建築とアートを巡るなら絶対避けては通れない場所で、私たちも金沢を訪問に際は必ず足を運んでいます。
前述のとおり2027年5月6日から2028年3月まで修繕工事のための休館が予定されています。休館中は香林坊の旧日銀跡地に展示スペースを設け展示がイベントなどの企画が実施されるそうで、すでにそのための工事も始まっています。

金沢市の中心に位置しているので金沢駅からバスでもタクシーでも10分くらい。バスは朝から夜までガンガン出ていて発車時刻を気にする必要もありません。新幹線で金沢駅に降り立ち荷物をロッカーに入れたりカフェでひと休みしてから適当なバスに乗って金沢21世紀美術館に向かいます。
なお、開館は10時ですが無料の「交流ゾーン」エリアは朝9時から開いています。開館前の人が少ない時間帯に建築そのものや交流ゾーンの様子を見学しておくのもよいでしょう。
展覧会のチケットは日時指定のWeb予約が推奨です。当日券を窓口で購入することもできるますが行列がハンパない時もあるので可能な限りWeb予約がおすすめ。

21世紀美術館の常設作品中で最も有名な作品の一つ、レアンドロ・エルリッヒの「スイミングプール」。
地上からは無料で鑑賞できますが、プールの中(地下)で見学するには予約が必要です。
このスイミングプールの中を見学するかどうかでその日の予定が決まります。というのは、プールの予約が可能なのは当日の朝9時からで、この時に取れた予約時間に合わせて美術館を訪問する必要があるからです。
朝9時にWeb予約でプールの時間を予約、予約できた時間に合わせて展覧会のチケットを時間指定予約。という流れになります。なお当日9時から美術館の券売機からも予約できます。

「ブルー・プラネット・スカイ」、通称「タレルの部屋」も無料ゾーンにあります。
正方形の部屋の天井が開いていて、変化し続ける空と光を体感できます。晴天の日、曇天の日、昼と夜など何度訪れても同じ体験ができない作品。直島の地中美術館にあるジェームズ・タレルの「オープン・スカイ」と兄弟のような作品です。

タレルの部屋では観客が空を見ていますが、こちらヤン・ファーブルの「雲を測る男」は作品が空を見上げています。この作品も無料ゾーンから見ることができます。
基本情報
| 金沢21世紀美術館
休館日:月曜日(展覧会ゾーン)、年末年始 開館時間: 設計:SANAA 竣工:2004年 金沢市広坂1-2-1 MAP |
<国立工芸館>
金沢21世紀美術館の周辺は兼六園など文化施設も多いエリアです。
その一つが「国立工芸館」。2020年に東京から移転してきた施設です。
東京では「東京国立近代美術館」の分館として、旧近衛師団司令部庁舎を活用して運営されていました。

金沢での国立工芸館は旧陸軍第九師団司令部庁舎と旧陸軍金沢偕行社(将校の社交場)を移築活用したものです。
手間の白い建物が司令部庁舎で明治31年(1898年)建造、奥の緑の建物が偕行社で明治42年(1909年)建造。

司令部庁舎側の階段ホール。
既視感がありますね。旧近衛師団司令部庁舎の階段ホールとそっくり。別に真似したとかではなく、旧陸軍時代の建築基準などがあってそれに沿ったものだなのでしょう。
基本情報
| 国立工芸館
休館日:月曜日、展示替期間、年末年始 営業時間:9:30 〜 17:30 観覧料:展覧会による 金沢市出羽町3-2 MAP |
<鈴木大拙館>
金沢21世紀美術館という超ヘビー級の美術館を観てしまうと気力も体力も消費してしまって、もう今日はいいやという感じになりますが、この「鈴木大拙館」だけは足を運んでおきましょう。
禅(ZEN)を世界に紹介した仏教学者の鈴木大拙(すずき・だいせつ)を紹介し理解を深めてもらう施設で2011年に開館しています。
設計は谷口吉生。

施設は大きく「展示空間」、「学習空間」と「思索空間」に分かれていて、鈴木大拙の書や資料、写真などが展示される前2者は撮影禁止。
上の写真(▲)は「水鏡の庭」とその中に浮かぶように建つ「思索空間棟」。
水鏡の庭には時々さざなみを立てる仕掛けが施されています。

▲禅寺の方丈をイメージして谷口が設計した思索空間。
水鏡の庭や借景を成すお隣の本多の森を眺めなら静かに自分を見つめ直す時間が過ごせます。
世界中で関心を持たれているZENとその伝道者である鈴木大拙を紹介する施設とうこともあり、ここもインバウンドのお客さんが多いです。

▲小さな施設ですけど何度訪れても1時間2時間とあっという間に過ごしてしまいます。
また鈴木大拙館に隣接し自由に行き来できる「松風閣庭園」は兼六園のモデルにもなったという江戸時代初期の庭園です。鈴木大拙館を訪問したら併せて訪問しておきたいです。
鈴木大拙に興味があれば近所(徒歩1分)にある「鈴木大拙誕生地記念碑」も見ておきましょう。
もう一つ大切なことがあって、毎年5月19日(西田幾多郎の誕生日)から11月11日(鈴木大拙の誕生日)の間は、鈴木大拙館または西田幾多郎記念哲学館の入場券があればもう一方の館に無料で入館できる相互優待制度があります。鈴木大拙館の入場券は分かりやすいように保管しておきましょう。
基本情報
| 鈴木大拙館
休館日:月曜日、年末年始 開館時間:9:30 – 17:00 入館料金:一般 310円、高校生以下無料 設計:谷口吉生 竣工:2011年 金沢市本多町3-4-20 MAP |
<夜の金沢21世紀美術館>
鈴木大拙館を観終わった頃には夕方になり宿泊施設のチェックインも可能な時間になっているはず。いったんチェックインして休憩したら金沢の街で夕食。
それから再び金沢21世紀美術館へ。
展覧会ゾーンは18時(金土は20時)で閉館しますが、交流ゾーンは22時まで開いているので、夜の美術館と恒久展示作品を観に行くのです。昼間とはまた違う姿を見せてくれるので、金沢に泊まるなら夜の21世紀美術館訪問は外せません。
金沢は都会なので夜21時台でも路線バスが走っていますし、配車アプリを使えばすぐタクシーがやってくるので宿までの交通機関も心配いりません。

▲昼間は白い端正な姿を見せる金沢21世紀美術館ですが、夜は館内に灯りが点きまったく違い劇的な印象です。

昼間は多くの人が記念撮影をしているるラビットチェアも夜になれば人っ子一人いないことも。
ここは交流ゾーンなので誰でも無料で利用できます。

「タレルの部屋」も入れます。
特に日没直前から太陽が完全に沈み漆黒の空に変わるまでの時間帯がおすすめです。
直島の地中美術館には日没にあわせて「オープン・スカイ」を鑑賞するプログラムがありますが、ほぼあれと同じ鑑賞体験ができます。

オラファー・エリアソンの「カラー・アクティヴィティ・ハウス」を中心にライトが灯され、昼とはまた違った印象になります。
灯台のように輝いている様子を見ると作品の意味もまた違ってくるかのようです。
昼間はいつも混雑している金沢21世紀美術館ですが、人がいなくなる夜間も別の魅力を放っています。
<白間>
今回の宿泊先は金沢駅からも近い一棟貸の町家宿「Haku_ma / 白間(はくま)」です。
古い民家をZEN(禅)的なフィロソフィーとモダンな感性で再解釈した宿。

なんでも揃っているけどなんだか慌ただしいラグジュアリーな宿とは正反対な引き算の美学。
テレビもない静かな部屋で美術館、名建築を巡った感想をゆっくり咀嚼する時を過ごすにはうってつけ。

2階はベッドがある畳の部屋。
和紙職人ハタノワタルや新城大地郎の作品、さらに金沢ゆかりの柳宗理のバタフライストゥールなどがさりげなく置かれているところにもオーナーの美意識が出ています。
基本情報
| Haku_ma / 白間
アクセス:金沢駅から徒歩5分 金沢市中橋町1-10 |
2日目
2日目はレンタカーを利用します。金沢市内でも駅からちょっと遠い場所や海沿いの施設を巡るのでレンタカーが便利だからです。
主に名建築を見てから加賀温泉郷に移動しアートをテーマにした宿に泊まります。
<谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館>
金沢で建築を巡るなら絶対訪問すべき場所が「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」。設計は息子の方の吉生氏。
犀川沿いの谷口吉郎の住まい跡地に立っています。

▲直線を基調とした、いかにも谷口吉生といった趣の金沢建築館。
常設展は310円。企画展は1,000円ですが、常設展と建築を見るだけでもお腹いっぱいなので、企画展が開催されていたらラッキーくらいの感じで問題ありません。

常設展示の目玉はこの広間と茶室。
谷口吉郎の設計による迎賓館赤坂離宮の和風別館「游心亭」の広間と茶室を忠実に再現した空間です。

▲こちらは金沢建築館としての休憩用ベンチ。
目の前には谷口吉生の代名詞的な水盤があり、その向こうは犀川、さらに先には金沢の街並みが見えています。
親子共演なのですが、それぞれの個性が分かりやすく表現されています。

金沢建築館に駐車場はありませんが、犀川沿いに民間の時間貸し有料駐車場があるのでそこに駐めると便利です。
写真の階段が目印、駐車場に車を駐めて階段を上がれば金沢建築館の入口です。
表側から気づきませんが、裏に回るとこのような名階段がさりげなく用意されている。谷口吉生の真骨頂ですね。
基本情報
| 谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館
開館時間:9:30〜17:00 休館日:月曜日、年末年始 観覧料金:企画展 一般 1,000円、大学生 800円。常設展 310円。高校生以下 無料 設計:谷口吉生 竣工:2019年 金沢市寺町5-1-18 MAP |
<石川県立図書館>
続いて「石川県立図書館」へ。できたばかりの新しい図書館ですが、すでに「映えスポット」といて全国に名を轟かせています。
映えスポット!? つまり思想の自由を担保するため誰が何を読んだかはもちろん、誰がいつ来たかも知らせたくない図書館としては異例ともいえる「写真撮影OK」なのです。なんなら「お喋りもOK」な開放的な図書館です。

▲実際に訪問してみると入口には本当に「おしゃべりOK ただし迷惑にならない音量で」とか「どこでもフォトスポット!」などと書かれています。
もちろんお喋りは場所や声量に配慮する必要がありますし、写真だって個人を特定できるような撮り方、セルフィーなど機材の使用、動画の撮影などNG行為ははあります。一律に禁止するのではなく個人の責任に任せたところが新しいのです。
そして館内に入ると吹き抜けの大空間とその周囲を囲む本題にもう一度感銘。
設計は仙田満。すでに多くの賞を受賞していて、将来は仙田満の代表作としても紹介されることになるでしょう。

▲円形の空間を中心に12のテーマ毎に沿って図書が分類、配置されています。
中央の床面には方向が分かるように方位が示されていますが、これはそれより「知の羅針盤となる」となる図書館の決意表明なのだと思います。
基本情報
| 石川県立図書館
開館時間:9:00〜19:00 (土日祝は18:00まで) 休館日:月曜日、年末年始 設計:仙田満 竣工:2022年 金沢市小立野2-43-1 MAP |
<石川県西田幾多郎記念哲学館>
次は哲学者の西田幾多郎を顕彰するかほく市の「石川県西田幾多郎記念哲学館」へ。
金沢市街からクルマで30分ほどの内灘砂丘に建っています。
設計は安藤忠雄。「考えること」をテーマに安藤忠雄らしい空間を作り上げています。

安藤忠雄らしい大階段。敷地に余裕があると大階段を作りたくなるみたいです。
階段を登ってのアプローチもいいですけど、ちゃんとエレベーターやスロープも用意されています。

展示室には西田幾多郎の哲学や人となりを知るための分かりやすい資料が数多く展示されています。
ただ展示室内の撮影はNGです、施設中央のホワイエと展望ラウンジは撮影可能です。

▲ホワイエから天窓を見上げたところ。

逆に上から見下ろしたところ。
禅師の鈴木大拙と日本を代表する哲学者の西田幾多郎はともに1870年(明治3年)生まれで、しかも旧制四高の同級生です。その一方の記念館が谷口吉生ならもう一方は安藤忠雄。建築とアートと哲学を追う旅になってきます。
鈴木大拙館でも紹介しましたが、毎年5月19日(西田幾多郎の誕生日)から11月11日(鈴木大拙の誕生日)の期間は相互優待として鈴木大拙館と西田幾多郎記念哲学館の入館券半券でもう一方の館に入館可能です。
基本情報
| 石川県西田幾多郎記念哲学館
開館時間:9:00 – 17:00 休館日:月曜日、年末年始 観覧料:一般 300円、65歳以上 200円、高校生以下無料 設計:安藤忠雄 竣工:2002年 石川県かほく市内日角井1 MAP |
<石川県金沢港大野からくり記念館>
西田幾多郎記念哲学館を見たら、今度は南下して加賀方面へ向かいます。
海沿いに走ると金沢港。埋立地ぽい土地の先端に目的地があります。

▲「石川県金沢港大野からくり記念館」。
江戸時代末期にこの地に住んだ発明家の大野弁吉を記念した施設です。
からくり人形やエレキテル、工芸品など大野弁吉の手になるものを中心に江戸時代からの工芸品などが展示されています。

▲設計は世田谷美術館などを手がけた内井昭蔵。
楕円形の建物2つが回廊で繋がっている複雑な形態で、訪れれば思わず声が出てしまいます。
今回紹介する建築の中では一番の掘り出し物。こういう発見があるから建築巡りは楽しい。

展示棟は全体が楕円形でしかも外側に傾斜が付いているので、建物内もこの通り。
展示室も二重になっていて中心に大野弁吉の展示室、その外側に一般展示室という配置です。
建築もほぉ〜と感心するものだし、展示品はからくりだけに楽しいし、時間が過ぎるのも忘れるほどに熱中してしまうかも。
基本情報
| 石川県金沢港大野からくり記念館
開館時間:9:00 – 17:00 休館日:水曜日 料金:大人 800円、小中高生 500円 設計:内井昭蔵 竣工:1996年 金沢市大野町4丁目甲2番29 MAP |
<松任海浜公園 展望休憩所>
この日の最後は白山市の松任海浜公園にある「展望休憩所」。
長いビーチ沿いに建つ休憩所兼展望台です。

▲海浜公園側からだと津波の避難所のようにも見える四角い建物ですが、近づくと穴が不規則に空いていたりして、デザインされた何かだということがわかります。

▲ビーチ側から見上げたところ。
円柱、交差する梁、意味なく斜めに走る通路。
何となく安藤忠雄ぽいですが、北陸を中心に活動する建築家、松島健の1992年設計です。

少し前まで老朽化して立ち入り禁止になっていたようですが、現在(2026年)は普通に入れて展望階まで上がれます。
からくり館から20分、ここから今夜の宿がある山中温泉まで40分くらい。丁度良い休憩場所です。
基本情報
| 松任海浜公園 展望休憩所
設計:松島健 竣工:1992年 白山市徳光町3206 MAP 駐車場あり |
<山中温泉 花紫>
この日の宿は加賀温泉郷の「山中温泉 花紫」。
100年以上の歴史を持つ温泉旅館「山田屋」が「花紫」と屋号を改め、SIMPLICITYのデザイナー緒方慎一郎と協力してセンス溢れる新しい和モダンな宿へとリニューアル。
雑誌Forbesが主催する新たな観光価値を創造する先駆者に光をあてるアワード「Destinations of the Year 2026」の30選にも選出されるなど、今話題の宿です。

館内や客室には現代アートが飾られ、シンプルだけど高級な設え。本当の意味でのラグジュアリーな空間で時間を過ごせる宿です。
このスイートの部屋にはライトや壁面にガラス作家の佐々木類の作品が使われています。文字通りのアートに囲まれた空間です。

シンプルなリビング。探す気にもならなかったけどたぶんTVはありません。
世俗を離れて、なんならデジタルデトックスもしながら自分の本質的な時間を過ごすのが現代の最高の贅沢なのです。

▲ライブラリーにはアートや工芸、食などに関する書籍が並んでいます。興味の赴くままに文字を追う時間もまた楽しいです。
足下にはミューラルアーティストのKAMIがペイントしたスケートボードが転がっていたりして、その守備範囲の広さにも驚かされます。

▲「茶房」のカウンター。宿泊客以外でも利用可能です。
それにしても、この花紫の空間で時間を過ごすために、まさにデスティネーションとして泊まりに行く価値のある宿です。

▲また2026年春に「YAMADART」という現代アートギャラリーを金沢の香林坊にオープンしています。
21世紀美術館が休館中に展示スペースを持つ旧日銀跡地のすぐ裏手。今でもそうですが21世紀美術館訪問時にYAMADARTで展覧会が開催されているようなら併せて訪問しておきたい尖ったギャラリーです。
基本情報
| 山中温泉 花紫
石川県加賀市山中温泉東町1丁目ホ17-1 MAP
金沢市香林坊2-12-3 MAP |
3日目
旅の最終日は山中温泉 花紫をチェックアウトしてから加賀市内、小松市内を回ります。
私たちは小松空港でレンタカーを返却し夕方の飛行機で東京へ戻りましたが、いったん金沢へ戻ってレンタカーを返却し新幹線で帰るのも良いと思います。安いのは飛行機ですが新幹線は何本も出ていて時間の制約が少ないですから。
<加賀片山津温泉 総湯>
まず向かうのは花紫からクルマで20分ほどの「加賀片山津温泉 総湯」。公営の日帰り温泉です。
山中温泉をチェックアウトして真っ先に向かうのが日帰り温泉? というのは、この施設は谷口吉生設計だから。

▲柴山潟を望むシンプルなガラス張りの建物。
内部に階段が見えるところが谷口吉生らしい。

1階が温泉で2階にはカフェやテラスがあります。
温泉に入らなくても柴山潟やその向こうの白山など眺望が楽しめる施設です。
基本情報
| 加賀片山津温泉 総湯
営業時間:6:00 〜 22:00 (まちカフェは11:00 〜 16:00) 定休日:なし (まちカフェは木曜定休) 入場料:大人(12歳以上) 500円、中人(6歳以上12歳未満) 150円、小人(3歳以上6歳未満) 70円、3歳未満 無料 設計:谷口吉生 竣工:2012年 加賀市片山津温泉乙65-2 MAP 無料駐車場あり |
<中谷宇吉郎雪の科学館>
3日目のメインは柴山潟の水辺に建つ博物館「中谷宇吉郎雪の科学館」です。総湯からクルマで数分の距離です。
中谷宇吉郎は「雪は天から送られた手紙である」の言葉で知られ、世界で初めて人工雪を作ることに成功した物理学者で、片山津温泉出身です。
その中谷宇吉郎の業績を記念すると共に雪と氷にまつわる様々な展示が行われています。

▲設計は磯崎新。
色は黒ですが形状は六角形、つまり雪の結晶をイメージした建築です。この六角塔が3つ立っています。
館内は様々な実験器具などの他に中谷宇吉郎の人となりを知る資料が所狭しと展示されています。あの寺田寅彦が師であったこともあり、思わずへぇ〜を押したくなる展示もあります。

▲これは中庭のようす。中谷博士が研究のため過ごしたグリーンランド内陸部から運ばれてきた約60トンの石が敷き詰められています。
だいたい7億から27億年前のものと推定されるそうで、その気が遠くなるような時が刻まれた石がここにあるのですね。
そしてこの中庭には人工霧発生装置が装備されていて、1日に何度か霧が吹き出すインスタレーションが開催されます。

▲中谷宇吉郎の次女で「霧の彫刻家」としても知られる中谷芙二子の《『グリーンランド氷河の原』霧の庭#47704》です。
霧が姿を現している間は、雪(中谷宇吉郎)+霧(中谷芙二子)+建築(磯崎新)というコラボレーションを見ることできるのです。
設備の老朽化などで一時期その姿を見ることができなかった作品ですが、改修も終わり今は以前のようなインスタレーションを見ることができます。なお開催日や開催時刻については中谷宇吉郎雪の科学館のホームページで確認してください。
中谷芙二子の今見ることができる作品やこれまでの業績についてはこちらの記事に詳しいです。
基本情報
| 中谷宇吉郎雪の科学館
休館日:水曜日 開館時間:9:00 〜 17:00 入館料:一般 560円 設計:磯崎新 竣工:1994年 加賀市潮津町イ106番地 MAP |
<Cafe 冬の華>
「中谷宇吉郎雪の科学館」のミュージアムカフェである「Cafe 冬の華」はいろいろな意味でおすすめのカフェです。

▲磯崎新建築のカフェにあるモンローチェア(磯崎新)。
もちろん座れます。
あっちを見れば磯崎新建築と中谷芙二子の霧の彫刻、こっちを見れば柴山潟と白山連峰、座っているのはモンローチェアというかなり贅沢なカフェです。
天気が悪い日や寒い日でも、暖かいカフェの中から濡れずに霧の彫刻を鑑賞することができます。

▲目の前が中谷宇吉郎雪の科学館の中庭ですからね。

▲メニューはドリンクとスイート類だけ。
なお中谷宇吉郎雪の科学館を利用しなくても、カフェだけの利用も可能です。
基本情報
| Cafe 冬の華
定休日:雪の科学館 休館日 営業時間:9:00 〜 17:00 加賀市潮津町イ106番地 MAP |
<セラボクタニ>
「中谷宇吉郎雪の科学館」で中谷芙二子のインスタレーションを鑑賞しても時間に余裕があるようなら、クルマで20分ほどの場所にある「セラボクタニ」を訪問してみましょう。
正式名は「九谷セラミック・ラボラトリー」といい、350年の歴史を持つ九谷焼のギャラリー、製土工場などを併設する複合型文化施設です。
▲セラボクタニの建物は隈研吾設計。
屋根に緑が乗った平屋建築は隈研吾の思想をラジカルに表現したものかもしれません。
▲これはその内部。
基本情報
| セラボクタニ
休館日:水曜日(4月 − 11月)、火曜日・水曜日(12月 – 3月) 開館時間:10:00 〜 17:00 入館料:一般 300円、高校生以下 150円 設計:隈研吾 竣工:2019年 小松市若杉町ア91番地 MAP |
石川・金沢を2泊3日で巡ってみたコース、これは外せない主だったところだけ巡ったのにこれだけあります。本当だったら滞在をもう少し長くしてゆっくり巡ったり、あるいは2回、3回と分けて訪問してみても良いかもしれません。
ずっと行きたい先リストに載っていてまだ訪問できていないところも沢山ありますから、金沢という土地はそれだけ魅力的ということなのでしょう。












