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グラングリーン大阪や名古屋で見る、オランダ在住のアーティスト、ラム・カツィ-ルのパブリックアート


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グラングリーン大阪の《YUMEITAI》

いま、大阪どころか日本中で話題になっている大阪・梅田駅北側の再開発地区「グラングリーン大阪」とうめきた公園ですが、その一角にアムステルダム在住のアーティスト、ラム・カツィールのパブリックアート《YUMEITAI》が設置されています。

決して知名度の高いアーティストではありませんが、名古屋や横浜にも大きなパブリックアートが設置されていたり、東京で個展が開催されたりとこれから注目のアーティストです。

大阪と名古屋のパブリックアート、そして東京での個展の様子を紹介します。

YUMEMITAI, ラム・カツィ-ル2023, Photo by 建築とアートを巡る

 

▲最新作《YUMEMITAI》は安藤忠雄が設計監修を手掛けたグラングリーン大阪の文化発信施設「VS.」(ヴイエス)の前面に設置されています。こ写真で背景に写るガラス張りの建物がVS.です。

話題のスポットの、話題の施設の前の、大きく目立つ作品です。これで日本でのラム・カツィールの知名度も一気に高まるのではないでしょうか。

YUMEMITAI, ラム・カツィ-ル2023, Photo by 建築とアートを巡る

▲クラウド経由で瞬時にアイディアや情報を人々と共有できるって素晴らしいですね。

と思うか、思考や感情を他人や政府にも見せなければならないプライベートのない悪夢の世界となのか。そうした2面性を問いかけるのがラム・カツィールの作品の特徴です。

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久屋大通公園の《STAY》

ラム・カツィールの最新パブリックアートが《YUMEMITAI》なのですが、少し前には名古屋のヒサヤオオドオリパーク(久屋大通公園)に《STAY》という作品を設置しています。

STAY, ラム・カツィ-ル, 2020, Photo by 建築とアートを巡る

▲ベンチに腰掛け仲良く名古屋タワーを見つめる二人。

Photo by 建築とアートを巡る

▲ヒサヤオオドオリパークの芝生広場に設置されている作品ですが、表裏が分からない不思議な造形をしています。

名古屋のほぼ中心地にある作品なので近くへ行く機会があったら見てみてください。

他にも横浜のMM21やなど比較的アクセスのしやすい場所に作品が設置されているので、それらも今回の展覧会を契機にじっくり見てみようと思います

ラム・カツィール

ラム・カツィールはテルアビブ出身で、現在はアムステルダムを拠点に活動するアーティストです。

この20年以上、建築家などと協働し世界中で多くのパブリックアートを制作してきました。

ラム・カツィール(Ram Katzir), The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲東京で開催された個展《がんばって》の会場で撮らせていただいたポートレート写真。

背景に見えるのは彼が手掛けたパブリックアートで、横浜みなとみらいの横浜三井ビルディンズ前の《Grow》という作品の写真です。

日本では本記事で紹介した以外にも品川区のパークシティ大崎など各地に彼のパブリックアートが設置されているので、見かけたことがある方も多いかと思います

 

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個展《がんばって》

西早稲田の名建築「松川ボックス」のギャラリーTHE MIRRORでラム・カツィール(Ram Katzir)の個展《がんばって》が2024年9月11日から10月5日まで開催されていました。展覧会のテーマは人間の成長と無常。

ちょっと縁あって開幕前日のオープニングに参加することができたので既に終了していますが個展の様子を紹介します。

ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

個展《がんばって》ではギャラリーの1階部分を使ってラム・カツィールの作品が3点展示されていました

がんばって, Ram Katzir, 2024, ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲展覧会タイトルと同じ「がんばって(Ganbatte)」というムービー作品。約4分間のループ映像で、素材は2009年に撮影されたものですが、今回の個展のために新たに編集された新作です。

実際に見てもらえば分かるのですが、小学生が一所懸命に教室の床を磨いているのだけど、いつのまにかその姿は・・・というもので、不条理な行為を映像化したこれはシシュフォスの神話を思い起こさせます。

床に置かれたモニターで見ることで、床を磨く人物を近い視線で見ることになります。ヘッドフォンは4人分用意されていますが、ノイズキャンセラー付きの向かって右の2本で聞くのが良いそうです。

乳歯, Ram Katzir, 2004, ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲「乳歯」という作品です。英語タイトルは ”Milk Teeth” 。日本語でも英語でもMilk/乳という同じ言葉が使われることをラムさんは面白がっていました。

作品自体は大理石ビアンコカラーラで作られた机と椅子です。

乳歯, Ram Katzir, 2004, ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲サイズが小さいのは小学校の机と椅子だから。入学したての1年生が使うようなサイズ感。

こうしてひっくり返した椅子を机の上に置くのは、その後に教室の掃除をしやすくするため。

もししたら人生で初めて行った純粋に利他的行為な象徴なのだそうです。

これと人生の不条理を描いたかのような「がんばって」が同じ場所に設置されているのがこの展覧会のポイントです。

オニリコ(夢), Ram Katzir, 2023, ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲別室に1点だけで展示されている《オニリコ(Onirico/夢)

今回グラングリーン大阪に設置された《YUMEMITAI》の初期バージョンなのだそうです。

人物の頭の上にあるのはクラウド(Cloud/雲)です。人々の記憶や思考をクラウド経由で共有し合うという理想郷なのか悪夢なのか分からない未来を描いているようです。

オニリコ(夢), Ram Katzir, 2023, ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲グラングリーン大阪の《YUMEMITAI》はサイズも大きく人間のサイズも実物大かそれ以上。

雲(クラウド)の下に実際の人も入れてしまうのですが、《がんばって》に展示されていた「オニリコ(夢)」はもっと小さいです。この写真でサイズ感が分かるでしょうか。

展覧会《がんばって》は大阪で公開されたパブリックアート《YUMEMITAI》と呼応する形で東京で開催されたものですが、話題の場所の話題のパブリックアートの作者がこれまでどのような作品を制作してきたのか、たった3点だけで的確に知ることができる展覧会でした。

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個展会場の松川ボックス

会場となるギャラリーTHE MIRRORが入るのは、優れた住宅建築を数多く手がけたことで知られる建築家の宮脇檀(みやわき・まゆみ)が設計した西早稲田の「松川ボックス」。

宮脇檀の〇〇ボックスという箱型住宅の一番最初の建築です。竣工は1971年。1979年にはあの安藤忠雄の住吉の長屋と同時にA棟が建築学会賞を受賞しています。

松川ボックス, Photo by 建築とアートを巡る

▲印象的な赤い塀は夜になるとライトが点きまた別の顔を見せています

▲今回は夜の時間帯での訪問でしたが、昼間に訪問するとこのとおり、

1階の開口はとても大きく、天井のトップライトからの光と大きな窓からの光でとっても明るい空間です。

リビングルームの床は実はガスでお湯を温めて通す床暖房になっており、東京の住宅で初の床暖房だとか!

建築とアートを同時に巡ることができる素晴らしい空間、松川ボックスについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

基本情報

《YUMEMITAI》

設置場所:グラングリーン大阪 VS.前

《STAY》

設置場所:ヒサヤオオドオリパーク 芝生広場内

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