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名建築「松川ボックス」で人の成長と無常を感じる、ラム・カツィ-ルの個展 『がんばって』


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西早稲田の名建築「松川ボックス」のギャラリーTHE MIRRORでアムステルダムを拠点に活動するビジュアル・アーティスト、ラム・カツィール(Ram Katzir)の個展『がんばって』が2024年9月11日から10月5日までの会期で開催されています。

ちょっと縁あって開幕前日のオープニングに参加することができたので紹介します。

ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

ギャラリーの1階を使ってラム・カツィールの作品が3点展示されています

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ラム・カツィール

ラム・カツィールはアムステルダムを拠点に活動するアーティストで、この20年以上、建築家などと協働し世界中で多くのパブリックアートを制作してきました。

ラム・カツィール(Ram Katzir), The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲会場で撮らせていただいたポートレート写真。

背景に見えるのは彼が手掛けたパブリックアートで、横浜みなとみらいの横浜三井ビルディンズ前の《Grow》という作品の写真です。

日本では他にも名古屋の久屋大通公園や品川区のパークシティ大崎など各地に彼のパブリックアートが設置されているので、見かけたことがある方も多いかと思います

YUMEMITAI, Ram Katzir, from ramkatzir.com

▲大阪の話題のスポット「グラングリーン大阪うめきた公園」。そこには安藤忠雄が設計監修を手掛けた大阪からの文化発信を担う施設「VS.」(ヴイエス)があり、その目立つ建物の前面にラム・カツィールの新作彫刻《YUMEMITAI》が設置されています。

9月6日に除幕式が行われ一般公開が始まったばかりのこの新作のお披露目記念として、今回松川ボックスでの個展『がんばって』が開催されています。

話題のスポットの、話題の施設の前の、大きく目立つ作品です。これで大阪でのラム・カツィールの知名度も一気に高まるのではないでしょうか。

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『がんばって』

展覧会のテーマは人間の成長と無常。

がんばって, Ram Katzir, 2024, ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲展覧会タイトルと同じ「がんばって(Ganbatte)」というムービー作品。約4分間のループ映像で、素材は2009年に撮影されたものですが、今回の個展のために新たに編集された新作です。

実際に見てもらえば分かるのですが、小学生が一所懸命に教室の床を磨いているのだけど、いつのまにかその姿は・・・というもので、不条理な行為を映像化したこれはシシュフォスの神話を思い起こさせます。

床に置かれたモニターで見ることで、床を磨く人物を近い視線で見ることになります。ヘッドフォンは4人分用意されていますが、ノイズキャンセラー付きの向かって右の2本で聞くのが良いそうです。

乳歯, Ram Katzir, 2004, ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲「乳歯」という作品です。英語タイトルは ”Milk Teeth” 。日本語でも英語でもMilk/乳という同じ言葉が使われることをラムさんは面白がっていました。

作品自体は大理石ビアンコカラーラで作られた机と椅子です。

乳歯, Ram Katzir, 2004, ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲サイズが小さいのは小学校の机と椅子だから。入学したての1年生が使うようなサイズ感。

こうしてひっくり返した椅子を机の上に置くのは、その後に教室の掃除をしやすくするため。

もししたら人生で初めて行った純粋に利他的行為な象徴なのだそうです。

これと人生の不条理を描いたかのような「がんばって」が同じ場所に設置されているのがこの展覧会のポイントです。

オニリコ(夢), Ram Katzir, 2023, ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲別室に1点だけで展示されている《オニリコ(Onirico/夢)》

今回グラングリーン大阪に設置された《YUMEMITAI》の初期バージョンなのだそうです。

人物の頭の上にあるのはクラウド(Cloud/雲)です。人々の記憶や思考をクラウド経由で共有し合うという理想郷なのか悪夢なのか分からない未来を描いているようです。

オニリコ(夢), Ram Katzir, 2023, ラム・カツィ-ル 個展『がんばって』, The Mirror, 2024, Photo by 建築とアートを巡る

▲グラングリーン大阪の《YUMEMITAI》はサイズも大きく人間のサイズも実物大かそれ以上。

雲(クラウド)の下に実際の人も入れてしまうのですが、『がんばって』に展示されている「オニリコ(夢)」はもっと小さいです。この写真でサイズ感が分かるでしょうか。

展覧会『がんばって』は大阪で公開されたパブリックアート《YUMEMITAI》と呼応する形で東京で開催されているものですが、話題の場所の話題のパブリックアートの作者がこれまでどのような作品を制作してきたのか、たった3点だけで的確に知ることができる展覧会でした。

THE MIRRORでの展覧会の多くがそうなのですが、会場が小さいため入場は各回10名までの1時間交代制で完全事前予約制になっています。まずは予約してから訪問してください。

▲名古屋のヒサヤオオドオリパークに設置されている「Stay」。名古屋タワーを見ながら肩を寄せ合うカップルのように見える作品です。名古屋のほぼ中心地にある作品なので近くへ行ったら見てみてください。

他にも横浜のMM21やグラングリーン大阪など比較的アクセスのしやすい場所に作品が設置されているので、それらも今回の展覧会を契機にじっくり見てみようと思います

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会場の松川ボックス

会場となるギャラリーTHE MIRRORが入るのは、優れた住宅建築を数多く手がけたことで知られる建築家の宮脇檀(みやわき・まゆみ)が設計した西早稲田の「松川ボックス」。

宮脇檀の〇〇ボックスという箱型住宅の一番最初の建築です。竣工は1971年。1979年にはあの安藤忠雄の住吉の長屋と同時にA棟が建築学会賞を受賞しています。

松川ボックス, Photo by 建築とアートを巡る

▲印象的な赤い塀は夜になるとライトが点きまた別の顔を見せています

▲今回は夜の時間帯での訪問でしたが、昼間に訪問するとこのとおり、

1階の開口はとても大きく、天井のトップライトからの光と大きな窓からの光でとっても明るい空間です。

リビングルームの床は実はガスでお湯を温めて通す床暖房になっており、東京の住宅で初の床暖房だとか!

昼間に訪問すれば名建築とラム・カツィールのコンセプチュアルな作品を愉しめます。

建築とアートを同時に巡ることができる素晴らしい空間、松川ボックスについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

基本情報

ラム・カツィ-ル個展 『がんばって』

会期:2024年9月11日(水) 〜 10月5日(土)

開廊時間:13:00 – 17:00 1時間ごとの入れ替え制

休廊日:日曜日、月曜日 

予約:完全事前予約制

定員:各回10名まで

入場料:無料
(入場に際してTHE MIRRORの運営を支援するドネーションにご協力をお願いいたします)

会場:松川ボックス(THE MIRROR)

住所:新宿区西早稲田2丁目14−15 MAP

アクセス:東京メトロ副都心線 西早稲田駅から徒歩3分

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