西麻布(最寄駅表参道)にあるカリモク家具のショールームスペース、Karimoku Commons Tokyo/カリモクコモンズトウキョウで開催されている田口佳弥/Yoshiya Taguchiによる無数のガラスの浮玉のインスタレーション「DETOXIFICATION」に行ってきました。このインスタレーション作品は、来場者によって日々変化していく体験型・参加型の作品です。是非立ち寄って体験してみてください。(会期終了しました。)
PRガラスの浮玉
会場に入ると、いや入る前からKarimoku Commons Tokyoの1階入り口側のスペースは無数のガラスの球体で埋め尽くされていました。
あるものは緑がかっていて、あるものは青みがかっています。球体のサイズは大小様々で、小さいものは直径5〜6cm、大きいものはバレーボールサイズくらいあるものもあります。球体の形も色味も微妙に一つ一つ違います。
このガラスの球体の正体は、海で漁をするときに網に取り付けて使う浮玉です。
現在は、大量生産で安価となったプラスティックの浮玉に取って代わられ、ガラスの浮玉を漁で使うことはなくなり、生産もされていません。
なんと、ガラスの浮玉の前は木製の浮玉を使っていたんですって!それもすごい。
ですから、会場にある浮玉は、漁師さんの元にあったいわばデッドストックの浮玉なのです。
民芸品
吹きガラスでできた浮き玉は、無名の職人による手作りで、漁で使用するという機能のあるガラス製品なので、完全に民芸品です。
さらに、実際にこのガラスの浮玉を網に取り付けるために、漁師の奥さんがガラスに紐でを巻き付けてマクラメのような作業を行った上で使用されていました。
また、芸術品、美術品ではないので、非常に厚みのあるぽってりとしたガラスで、ところどころに泡が入っていたり、球体が歪だったり、刻印のようなものが押されていたり、手にとって眺めているとそれぞれに物語があるように感じられます。
海
生まれた時からインターネットがあったという作家にとって、情報を得るためにインターネットを回遊することをネットサーフィンと言うように、人は常に情報の海にさらされていることから、海に関する作品を制作したいと思い立ち、この使われなくなった浮玉に出会ったそうです。
当たり前ですが、作家はコンセプトありきでこの浮玉と出会い、このような美しいインスタレーションができた訳です。
天井からも浮玉が軽やかにぶら下がっています。▼
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変化する作品
さて、浮玉の一つ一つの微妙な差異がなぜわかるかというと、この作品、実は浮玉に触ってもいいんです。
来場者が日々少しづつ手にとって眺めて、また床に置くことによって微妙に浮玉の配置が変化するのも作品の一部です。
なんとなく隣の部屋に続く獣道のような道筋もできています。
入り口側のインスタレーションは実は隣の部屋にも続いており、さらに浮玉の美しい映像作品もループで流れています。おおよそ10分弱くらいの映像でした。
映像が流れている部屋にある作品。西麻布の古い民家がいい借景となっていました。▼
持ち帰れる
手にとって触っていいだけでなく、この浮玉なんと購入して持ち帰ることができるのです。浮玉のサイズによって価格は変わります。
私が購入した一番小さいサイズは1200円でした。なんて手軽な価格のアート作品!
購入すると、コンセプトが書かれたカードが付いてくるので、持ち帰ったその先の行為についてはカードを読みましょう。このコンセプトは会場内にも展示されています。
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作家在廊
なんと会期中ずっと作家本人が在廊しています。私が訪問した際にもいらっしゃいました。静かな語り口で丁寧に説明してくれるので、作品に対する理解がただ漫然と見るよりも断然深まります。
そして、ついつい浮玉を持ち帰りたくなります。というか、持ち帰りました。
来場者と同じ姿勢で丁寧に解説する作家本人▼
基本情報
Yoshiya Taguchi Exhibition「DETOXIFICATION」会期終了
5月9日(月)~5月26日(木) 12時~18時 5/15日(日)、22日(日)、23日(月)休
Karimoku Commons Tokyo
東京都港区西麻布2丁目22−5 MAP
最寄駅:表参道駅A5番出口より徒歩10分
Karimoku Commons Tokyoでの過去の展覧会記事はこちら▼
10 YEARS OF ISHINOMAKI LABORATORY /「十」石巻工房の十年展 karimoku Commons Tokyo