全部が見どころ
江之浦測候所その1(予約とアクセス)、江之浦測候所その2(能舞台)に続くレポートです。
ここでは、これから訪れる人を想定して書いていますので、本当に素晴らしい景色は、実際に江之浦測候所を訪問してみて堪能するのが一番と思っています。
ですから、詳細に全てを網羅したいところですが、実際に訪問するにあたり便利な情報を中心にレポートします。
PR運頼みなポイント
お天気
まず、事前予約制なので、当日の天候に関しては完全に運です。開設してから台風の影響で、見学中止になった日もあるようですから、とにかく晴天を祈るしかありません。
しかし、必ずしも晴天が良いかというと、もしかしたらそうではないかもしれません。
天気ごとの、季節ごとの表情が楽しめるのではないでしょうか。
とはいえ、最初に訪れるのは晴天がおすすめですね。
私は初回、晴天だったのが本当によかったと思っていますから。
装いについて
ほとんど屋外の見学なので、季節ごとの暑さ、寒さ対策が必要です。
また、日陰の場所もありますが、基本的には直射日光にあたり続けることを前提とした装いがよいです。(特に晴天の場合)
靴も特にヒールはNGとは書いていませんが、石の階段や急斜面などの場所も少なくありません。歩きやすい靴、装いの方が無駄な労力を使わずにすみます。
春分秋分の日の出
茶室「雨聴天」
江之浦測候所の施設内、少し奥まったところに茶室があります。茶道を嗜まれている杉本さんですから、茶室があるのは当然ですね。
この茶室は千利休の「待庵」の本歌取りとして構想されました。(本歌取りとは古典を引用しつつ新作にその精髄を転化させる手法)
石造鳥居を抜けると姿を表すこの茶室の名前の由来は、この地にあったミカン小屋のトタン屋根を慎重に外して、茶室の屋根としたところから来ています。
トタン屋根なので、雨が降るとその音が響く、響くその音を聴くという意味で「雨聴天(うちょうてん)」。なんとも洒落た命名ですね。
そして、春分秋分の日の出にはその太陽が眩い光を落とすように計算されています。
春分秋分の日の出はこの茶室と石舞台から見ることができます。
▲春分の日と秋分の日は太陽がこの方角の海から昇ってきます。
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夏至の日の出と冬至の日の出
夏至の日の出は、その1で触れた「夏至光遥拝100メートルギャラリー」のバルコニーから、冬至の日の出は円形石舞台と光井戸をつなぐ70メートルの「冬至光遥拝隧道」の先から見ることができます。
おそらく冬至の日(2017年12/22)に撮影されたと思われる画像が
ここにupされてました。
江之浦測候所では夏至、冬至それと秋分の日、春分の日に、日の出を見られる予約抽選制の特別公開が行われています。
夏至の日の出は4:25分頃、冬至でも6:50分頃という事です。都心からクルマで向かう場合、夏は3時前には出発しないとたどり着けません。なかなか参加するのも難しい時間帯ですが、機会があるなら見てみたいです。毎回のように応募しているのですが1回も当選したことがありません。
もっとも毎回のように悪天候に見舞われていて、きちんと日の出が見られたことはないかもしれません。
冬至光遥拝隧道の光井戸の部分は天井に穴が開いています。
雨や雪の日は上から雨粒や雪片が落ちてくる様子が見られます。
またこの上にも井戸があり、そこからこの光井戸を覗き込むこともできます。どこにあるか場所を探してみてください。
PR竹林エリアの作品たち
「化石窟」
古道具商としての顔も持つ杉本博司。
長年蒐集してきた化石が展示されているので「化石窟」です。
トタン建ての、かつての農家の道具小屋を改装したもの。化石以外にも見どころがあるので見過ごさないように。
また季節にもよりますが蜜柑も売っています。
数理模型
杉本博司の代表作的な「数理模型」シリーズ。
竹林エリアにあるのでお見過ごしなく。
これは「数理模型0010 Surface of Revolution with constant negative curvature」の方ですね。
永遠に交わることのない曲線と彼方の水平線。
春日社社殿
竹林エリアの見晴らしのよい高台に設置されたのが「春日社社殿」。
奈良円成寺(えんじょうじ)の国宝「春日堂」を採寸して忠実に模したものだそうです。
▲私たちが最後に訪問した時は未完成でしたが、現在は見目麗しい春日造の社殿が完成し、春日大社からの分霊も行われきちんとした神社になっているそうです。
明月門
江之浦測候所で最初に目にするこの門は「明月門」。
室町時代に、今は”あじさい寺” としても有名な鎌倉の明月院の正門として建てられた「明月門」。関東大震災で半壊し、その後は根津美術館の正門として使われていたのものを、2006年の根津美術館リニューアルにあたって小田原文化財団へ寄贈されたそうです。
▲数奇な運命で江之浦測候所へやって来た明月門。でも今はここのシンボル的存在になっています。
この写真は江之浦測候所のオープン時のもので、今は門幕がない場合が多いようです。
この江之浦測候所という施設は全て計算に計算を重ね、考え尽くされたものです。
自然現象と建築の融合というのでしょうか。
小田原の美しい自然と世界中から集められた様々なものが一体となって、この壮大な施設が成り立っています。
この測候所そのものが杉本博司作品です。
最後に小田原文化財団のファウンダー杉本博司の言葉を引用します。
悠久の昔、古代人が意識を持ってまずした事は、天空のうちにある自身の場を確認する作業であった。そして、それがアートの起源でもあった。新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し点の夏至、通過点である春分と秋分。天空を測候する事にもう一度立ち戻ってみる、そこにこそかすかな未来へと通ずる糸口が開いているように私は思う。
小田原文化財団 江之浦測候所 概説より
江之浦測候所の関連記事
江之浦測候所の予約方法やアクセスについては 江之浦測候所その1で詳しく紹介しています。
硝子の能舞台などハイライトは江之浦測候所その2をどうぞ。
また茶室などその他の見どころについては、本記事江之浦測候所その3で。
また杉本博司の「江之浦奇譚」を訪問前後に読んでみてはどうでしょうか。江之浦測候所を訪問する前に読めばすぐに行きたくなる、訪問した後に読めばもう一度行きたくなる本です。
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表参道で杉本博司の作品と空間を楽しめる「茶酒 金田中」、江之浦測候所より前に海が見える崖上の美術館を監修した「MOA美術館」の記事も参考にどうぞ。
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