小田原、江之浦測候所へ
小田原は根府川駅から行く小田原文化財団「江之浦測候所」を訪問して来ました。
この「江之浦測候所」は現代美術家の杉本博司が設立した小田原文化財団により建設・運営されてている施設です。 ”測候所” と名乗っていて、たしかに測候所機能はありますが、実際には美術館です。それも杉本博司の作品とその世界観を体感するためだけの美術館です。さらに、この「江之浦測候所」自体が杉本博司の作品でもあります。
そのため世界中から美術愛好家や杉本博司ファンが江之浦測候所を目指して訪問し、実際私たちもオープン直後に訪れ、その後も数回訪問しています。
そんな世界的にも注目を浴びている、この「江之浦測候所」の見どころやアクセス方法などを紹介します。
(初出2018年の記事ですが、最終更新日は 2022年7月3日 です)
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江之浦測候所の予約とチケット
アートは人類が人類となった瞬間に産まれたもので、その起源に立ち返ることができる場所として江之浦測候所があるというのが杉本博司のコンセプト。そこで、施設内では近代以前(産業革命以前)の人口密度を体感できるようにするため、施設内への入場人数が制限されています。
人数を制限するた江之浦測候所は日時指定の完全予約制の施設となっていて、予約なしでは見学することはできません。
入館時間ですが、入館できるのは午前10:00からと午後13:30からの2部制でそれぞれ3時間、入れ替え制です。さらに8月の土日月曜日限定で17:00~19:00の「夕景の部」という時間帯も設定されています。
チケットは事前予約と当日券の2種類。
(2022年7月1日から当日券制度が再開しました)
事前予約の見学予約及びチケット購入は江之浦測候所のサイトから行えます。当日券は当日の午前9時から電話予約して現地決済です。ただし、週末や休日は予約だけで枠が埋まり当日券の販売は期待できません。週末に訪問されるなら事前予約はほぼ必須です。
最寄り駅の根府川駅
江之浦測候所の場所は、根府川駅から車で10分ほどの海沿いの高台にあります。クルマで伊豆へ行く人なら抜け道として使うこともある小田原湯河原線沿いです。
江之浦測候所に見学予約するとJR東海道線の根府川駅から出る無料送迎バスを利用することができるので、この無料送迎バスに乗って訪問するか、マイカーで訪問し江之浦測候所の駐車場を利用するのか、見学予約の時にセレクトしておくシステムになっています。
同じ東海道線本線の真鶴駅も最寄り駅です。根府川駅の無料送迎バスに間に合わなかった場合には客待ちタクシーの多い真鶴駅まで行ってタクシーを利用するのが良いです。
JR東海道線の「根府川」駅。小田原より2駅、熱海寄りになります。
ここまで品川駅から東海道本線で約1時間半、渋谷からだと湘南新宿ラインで平塚や小田原で乗り換えをして約1時間半。
東京や品川から新幹線こだまで小田原まで行って東海道本線に乗り換える ”富豪ルート” もあります。これなら1時間弱です。
無料送迎バスの午前の部も午後の部も3本ありますが、できれば根府川駅で少し時間を取れるよう早めに根府川駅に到着するようスケジュールすることをお勧めします。
絶景の根府川駅
なぜ根府川駅での時間を取るかというと、写真でも分かる通り根府川駅の立地とその景色が絶景なのです。
「関東の駅百選」にも認定されている ”海の見える”駅です。
相模湾に面した崖の上の無人駅という旅愁を誘うシチュエーションで、相模湾の海やその向こうの湘南海岸や伊豆半島を観ているだけでもテンションが上がります。
絵に書いたような絶景ですが、これが根府川駅の下り線ホームから見える光景です。
江之浦測候所はここよりさらに絶景なロケーションですから期待も高まります。
根府川駅 駅舎 |
駅舎はレトロな無人駅。でも東海道本線ですからSUICAも使えます。
そして改札の向こうに見える青い相模湾。いい景色ですね。
無料送迎バスの時刻に合わせて到着すると、江之浦測候所へのお客さんがどっと降りてきてこの無人駅舎が人で溢れかえってしまいます。少し早めに着いて人のいない根府川駅を楽しんでみてください。
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送迎バスで江之浦測候所へ
根府川駅の1つしかない改札を出ると、小ぢんまりした駅前ロータリーに無料送迎バスが発車時刻の少し前に到着しています。
小田原文化財団と名前の入った送迎バスです。運転手さんに名前を伝え、予約リストと照合し乗車です。
マイクロバスなので補助席入れて25人位でしょうか。この日は天気の良い土曜日でしたので補助席利用なしで満席でした。
すれ違いもやっとのような細い山道を登って行く道中も左側に海が見えます。ですから行きは左側、帰りは右側に乗車した方が車内でも海景を楽しめます。
この時点で期待は最高潮です。そしてようやく到着すると測候所の案内があります。
江之浦測候所 |
バスが停車する駐車場からの眺めもすでに絶景なのです。
これは素晴らしくないわけないよなぁとこの時点で確信しました。
江之浦測候所駐車場からの眺め |
クルマで江之浦測候所へ
江之浦測候所へは自動車でもアクセスできます。無料の駐車場もありますが、駐められる台数に限りがあるので見学予約時に ”駐車場利用” を選びます。近隣に駐車場はありませんし路上駐車できるような道路でもないので、クルマで訪問する際は必ず江之浦測候所の駐車場を利用するよう予約してから訪問してください。
東京からなら国道1号と西湘バイパス、それか東名と小田原厚木道路で小田原へ。小田原から国道135号を使って海沿いを南下して「根府川」交差点を右折し、小田原湯河原線に入れば数分で江之浦測候所です。
東京から2時間前後というところでしょうか。
ただ問題は週末や連休の渋滞問題です。国道135号はそもそも上り下りの渋滞が頻発する上に、なにか事故でもあるとすれ違いもできない、回避する道路もないということで全く動かなくなってしまいます。
江之浦測候所は午前も午後の3時間しか枠がないし、最低でも2時間の滞在時間は欲しいところです。
週末や連休などでの訪問は電車を使うことをお勧めします。クルマだと入館時間に間に合うかという問題もありますし、帰路の渋滞問題もありますから。
他に訪問予定があるなどクルマが必要な場合は、なるべく朝10時前に到着するようにした方が良いでしょう。もちろん平日はクルマでも問題ないと思いますし、クルマでないとアクセスできない深夜のイベントは言うまでもありません。
PR待合棟へのアプローチ
バスを降りて坂道を登るといよいよそれらしき建物が前方に見えて来ます。
そこでは法被を着たスタッフがにこやかに見学者を迎えてくれました。
江之浦測候所 |
走り出したい気持ちを抑えて、まずは待合棟に向かいます。
待合棟はガラス張りのシャープな建物で、入り口にドラのようなものが展示されていました。
スタッフの方にお聞きしたらちゃんと鳴るホンモノのドラだそうです。
江之浦測候所待合棟 |
江之浦測候所の受付
待合棟で受付を済ませ、パンフレットと見学者である印のシールをもらいそれを見やすい場所に貼ったら見学スタートです。
江之浦測候所 待合棟 |
江之浦測候所冊子 |
江之浦測候所見学者シール |
江之浦測候所の見学:夏至光遥拝100メートルギャラリー
待合棟を出て最初に目に入るのが「夏至光遥拝100メートルギャラリー」です。
とりあえず吸い込まれるように、ガラスの長い棒が海へ突き出したようなギャラリーへ入りました。
ここにはその名の通り杉本作品が展示されており、細長いギャラリー空間です。100メートルあるのですからそのスケールだけで前代未聞です。
江之浦測候所 「夏至光遥拝100メートルギャラリー」
その先に見えるのは相模湾です。
江之浦測候所 「夏至光遥拝100メートルギャラリー」 |
中からは、ガラス越しに風景が見えます。そしてその遥か先の突端に海を感じます。
ホンモノの海を見るまでの間、壁面には杉本博司の「海景」シリーズの作品が7点展示されています。
入り口から順に「カリブ海」「リグリア海」「スペリオール海」「ボーデン海」「エーゲ海」「ティレニア海」「日本海」です。
江之浦測候所 「夏至光遥拝100メートルギャラリー」 |
”夏至光遥拝” という名前でピンと来ると思いますが、この建物は夏至の朝に太陽が昇る方角を向いています。つまり夏至の日の日の出にこの場所に立てば、ギャラリーの向こうの相模湾から太陽が昇る様子を見ることができるのです。
江之浦測候所が測候所であるのは、このように夏至の日や冬至の日、あるいは春分の日、秋分の日を建物など構造物で可視化していること。現代のストーンヘンジのようなものです。
数千年後に新しい文明がこの江之浦測候所を発見し、「きっとこれは太陽の位置から季節を知るための測候所に違いない」そう未来人たちが考えてくれることを杉本博司は期待しているのです。
江之浦測候所 「夏至光遥拝100メートルギャラリー」 |
江之浦測候所 「夏至光遥拝100メートルギャラリー」 |
江之浦測候所 「夏至光遥拝100メートルギャラリー」 |
作品を右手に風景を左手に見ながら100メートル進むと扉があり、扉の向こうには相模湾の海が広がっています。
柵はガラスだけでできていて透明感と緊張感のあるバルコニーです。
見学した日の天気は絵に描いたような晴天で本当に美しい風景が広がっていました。
江之浦測候所と相模湾 |
小田原から大磯、そして江ノ島や三浦半島まで、湘南海岸が見渡せます。
江之浦測候所と湘南 |
100メートルギャラリーは片側がガラスで片側は石です。
しかもバルコニーも含めた先端は地上からはみ出しています。
このギャラリー、石壁側に写真作品の展示があり、その石壁側を外から見たのが下の写真です。
100メートルの途中は避難口しかありませんので基本的に一方通行です。とりあえず入ったら前に進み、バルコニーに出て、また来た道を戻るしか出られません。
もうこのスケールだけで圧倒されます。
江之浦測候所 「夏至光遥拝100メートルギャラリー |
でも、まだまだ杉本博司のこだわりにこだわり抜いた空間がそこかしこにあるのです。
「光学硝子能舞台」と「冬至光遥拝隧道」を紹介する 江之浦測候所その2、茶室などの見どころを紹介する江之浦測候所その3へ続きます。
また杉本博司の「江之浦奇譚」を訪問前後に読んでみてはどうでしょうか。江之浦測候所を訪問する前に読めばすぐに行きたくなる、訪問した後に読めばもう一度行きたくなる本です。
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また表参道で杉本博司の作品と空間を楽しめる「茶酒 金田中」、江之浦測候所より前に海が見える崖上の美術館を監修した「MOA美術館」の記事も参考にどうぞ。
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