東京都写真美術館は3つの大展示室を持ちいつも複数の展覧会を開催しています。そこから10月に見ておきたい2つの展覧会《アレック・ソス 部屋についての部屋》と《光と動きの100かいだてのいえ ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ》を紹介します。
前者はアメリカのフォトグラファー、アレック・ソスの作品を写真美術館独自の視点で編み直したもの、閉幕してしまった後者はメディアアーティストの岩井俊雄の作品とその原点となる19世紀の映像装置を体験できる展覧会です。
両展とも閉幕しています。

▲フランスの国民的写真家フィリップ・ドアノーの代表作「パリ市庁舎前のキス」を横目に写真美術館へ。
2024年10月30日(水)までの会期でミッドタウンのFUJI FILM SQUAREでは《ロベルト・ドアノー写真展》が開催されていました。
PR部屋についての部屋
アメリカ人で写真家集団、マグナム・フォトの正会員でもあるフォトグラファー、アレクッス・ソスの個展です。
▲アメリカをロードトリップしながら各地で出会った人々を捉えた写真が多いのですが、旅先の一つには東京もあります。
展覧会のキービジュアルでもあるこの写真は新宿の「パークハイアット東京」の部屋の窓ガラスに写る、ベッドに横たわるアレック・ソス。
パークハイアット東京といえばソフィア・コッポラの映画「ロスト・イン・トランスレーション」ですが、この写真もそれを意識しているような気がします。
▲出品点数はさほど多くはないのですが、1点づつの情報量が膨大なので、読み解く醍醐味が愉しめます。
▲キービジュアル作品「Park Hyatt Hotel, Tokyo (self portrait)」の展示されている部屋では東京、パリ、そしてミネアポリスを舞台に撮影された写真が展示されています。
▲でも多くはアメリカの人々。
何気ない小道具が市井の人の人生を物語っていたり、アメリカで暮らすクィアな人々の姿だったり。
ロバート・フランクやダイアン・アーバスなどの系譜に繋がる写真家を独自視点で編集した展覧会で、これを見るとアレック・ソスの他の写真も強烈に見てみたくなります。
写真撮影と鑑賞時間について
本展は写真撮影可能です。ただし動画の撮影は禁止です。
作品数はそれほど多くありませんし、ゆっくり見ても1時間あれば十分だと思います。
基本情報
アレック・ソス 部屋についての部屋
会期:2024年10月10日(木) – 2025年1月19日(日) 開館時間:10:00 〜 18:00 (木曜と金曜は21:00まで) 休館日:月曜日(月が祝の場合開館し翌平日休館) 料金:一般 800円、学生 640円、中高生・65歳以上 400円 会場:東京都写真美術館 住所:目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内 MAP アクセス:JR恵比寿駅東口より徒歩約7分、東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分 |
光と動きの100かいだてのいえ ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ
人気の絵本『100かいだてのいえ』の作者いわいとしおは、日本を代表するメディアアーティスト岩井俊雄でもあります。
その岩井俊雄の代表的メディアアートとその原点となる19世紀の映像装置を展示することで視覚体験の面白さを実感できるとともに、視覚芸術に対する科学者や芸術家の歩みを振り返ることの展覧会です。
メディアアート自体も楽しいですし、今のテレビやスマホで体験する映像とは異なるアナログ的な映像を実際に体験することでできて、大人から子供まで愉しめます。
展覧会の構成は「19世紀の映像装置」、「岩井俊雄のメディアアート」それと「イワイラボ – 19世紀を再発明する」の三部構成です。

1. 19世紀の映像装置
まずは19世紀からの覗き絵や幻灯機にパラパラ漫画など。

▲さすがに古い器具はケースの外から見るだけですが、一部は実際に動く様子やその映像を見ることができます。

▲左の壁にある鏡と風車のような器具は実際に手にとって体験することができます。

▲見えているものを2次元に定着させる試みや、それを動かくための仕組み。
人間の視覚表現に対する技術的な関心は写真が発明されたときから始まっていたのですね。
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2. 岩井俊雄のメディアアート
第二部は岩井俊雄の30年以上にわたるメディアアート作品。

▲少年時代から電子工作を趣味とし、早い時期からパソコンに慣れ親しんできた、デジタル世代の先駆者である岩井俊雄の少年時代の愛機。
電子工作キットや顕微鏡セット、MSXのパソコンにラジカセ。同じような少年時代を過ごしたお父さんお母さんも多いのではないでしょうか。

▲展示室内の一番目立つ場所に置かれた岩井俊雄の「カメラ・オブスクラ2023」。
「100かいだてのいえ」をモチーフに鏡を駆使した作品。写真だと何が何だか分からないかもしれません。どうなっているのか実際に展覧会で体験してみてください。
とても楽しい作品です。

▲代表作である《時間層》シリーズ。
毎時0分と30分から実際に動作させます。
一つ一つは4分から5分くらいですが、全部見るとおおよそ20分。
しかし、これはちゃんと作動しているところを見ておきたい作品です。

▲80年代の作品なのでブラウン管モニターと8ビットのMSXパソコンで制御していて、動きと光で表現する作品です。
写真のこれは《時間層II》。

▲プロジェクターを使った《時間層IV》。

▲どれもSONYのMSXパソコンャーで制御しています。
プログラムは3.5インチフロッピーディスクに保存されています。
MSXパソコンとかフロッピーディスクとか今では博物館レベルの機材が今も現役で動くのが凄いです。
またメディアアートがいずれ技術の進歩によって再生できなくなる日が来るのではないか、そんな不安もよぎります。

これは《映像装置としてのピアノ》。
自動演奏ピアノとコンピュータを組み合わせた作品ですが、実際に操作して好きな音を奏でることができます。いわゆる参加型の作品で、大人でも楽しい楽しい。
現代音楽を奏でるアーティストになった気分で演奏しましょう。やめられなくなってしまいますよ。
PR3. イワイラボ
最後は「イワイラボ」。第一部で見た19世紀の映像装置を岩井俊雄が再発明(再制作)したものが展示されています。

▲写真左はこの展覧会のために再制作された「カメラ・オブスクラ」。
実際に動かして映像がどう映るのか試してみることができます。

▲これが岩井俊雄が再制作した映像装置の数々。
実際に手にとって楽しむことができます。
やはり実際に動かしてみるのは楽しいです。夏休みに子どもたちを連れて来ると絶対楽しんでもらえると思います。
ちなみに大人でも十分楽しめます。
写真撮影と鑑賞時間について
写真撮影は原則可能ですが動画の撮影は禁止です。
《時間層》シリーズを全部見ればそれだけで20分。それ以外にも体験型の展示が多く、思わずハマってしまうものもありますから、最低でも1時間。できれば1時間半くらい時間を取ってゆっくりじっくり鑑賞するのが良いと思います。
基本情報
いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ
会期:2024年7月30日(火) – 11月3日(日) 開館時間:10:00 〜 18:00 (7月18日〜8月30日の木曜と金曜は21:00まで) 休館日:月曜日(月が祝の場合開館し翌平日休館) 料金:一般 700円、学生 560円、中高生・65歳以上 350円 会場:東京都写真美術館 住所:目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内 MAP アクセス:JR恵比寿駅東口より徒歩約7分、東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分 |