東京都写真美術館は2002年から写真・映像の可能性に挑戦する、新進気鋭の日本人作家に焦点を当てたグループ展「日本の新進作家」展を開催しており、今回はちょうど20回目の節目の年です。
記念すべき20回目の展覧会の参加アーティストは、うつゆみこ、淵上裕太、星玄人、夢無子(むむこ)、山上新平の5人。
毎年趣向を凝らした展覧会タイトルも楽しみのひとつですが、今年は「見るまえに跳べ」。
とっても前向きな気持ちになるタイトルの展覧会です。さて、肝心な展覧会の内容はどんなでしょうか。
会期初日に鑑賞してきましたのでその展覧会の全貌をレポートします。
PR見るまえに跳べ
今回の「見るまえに跳べ」展では、不確かな時代を生き抜く原動力を探り、21世紀の大きな出来事によって揺るがされた日常に焦点を当てた作品で構成されています。
アメリカ同時多発テロ、東日本大震災、新型コロナウイルス感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻などの歴史に残る出来事が次々に起こり、世の中の不確かさが人々を不安にし、挑戦する気持ちを後退させています。
この展覧会では、そんな中で「深い孤独」に向き合い、生きる原動力を写真作品で表現する5人の作家の作品を紹介しています。
アーティストがとらえた5人5様の”生きる原動力”を見てから跳んでも遅くない!
淵上裕太
アーティストが日々上野公園に通い、そこでとらえた人々の写真です。
展示室めいっぱいに貼り巡らされた印画紙には全て人の姿が写しとられています。
アーティストがなぜ取り憑かれたように「人」の写真ばかり撮影しているのか、解説パネルにその答えが書かれていました。
夢無子
今回の展覧会は近年主流となりつつある映像作品の出展は夢無子の作品だけです。
画面は表裏2面、各々別の映像が流れています。2画面全部鑑賞しても所要時間30分です。
暗い展示室に入るとそこには「戦争結婚式のマナー」が書かれています。
それを読んで戦争結婚式に参列してください。
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山上新平
山上新平の作品展示もかなり照度が落とされた空間です。
暗い空間に浮かび上がるように写真作品が並びます。
その照明が反射して写真と同じ四角い光を床に落とし、不思議な空間になっていました。
1点1点の作品を鑑賞する楽しみと、この不思議なインスタレーション空間を体験する楽しみと二つの楽しみを味わえる展示でした。
星玄人
これまで知らなかったアーティストの写真作品です。
その地に通いつめ、通い詰めることでしか撮れない写真を発表しています。
シリーズはアーティストが通った場所の名前、西成だったり東京だったり。
西成や東京の後に目に飛び込んできたのは、ひどく見慣れた場所のシリーズでした。
それは、まるで親しい友人と再会したような嬉しい気持ちにさせてくれました。
▲我町と言っても過言ではない西麻布にある喫茶店れいのです。西麻布の交差点から六本木通り沿いをヒルズ方面へ上がって行ったところにある昔ながらの喫茶店です。
もちろん、近くなので何度か訪問したことはあるのですが、なんせ正真正銘の喫茶なので愛煙家の方が多く、タバコを吸わない私にはちょっと厳しい環境なので、常連さんになるほどはいけてません。
ただ、とにかくれいのの前を通りがかったことはもう数えきれません。瑠璃茉莉/ルリマツリが咲き誇る季節には足を止めて見入ってしまうほどです。
そして、キャプションを読んで、星玄人さんがれいののオーナーの息子さんだということがわかって思わず声を出してしまいそうになりました。
というのも、最近オーナーが亡くなられ、息子さんがれいのに立っていることは知っていました。
あの方が写真家だったのか!という驚きと、ここ最近れいのの前を通るたびに店の前に三脚があってカメラとフラッシュが用意されているのを何度も目撃したからです。
カメラを店前で目撃したのは結構最近だったけれど、展覧会に間に合ってよかった!なんて勝手に安心したりして。
この辺りは再開発の波が押し寄せており、近隣の店も順々になくなっています。
キャプションを読んでそう遠くない未来にこの店もなくなってしまうんだと知ってちょっとショックです。
タバコが苦手なので、人が少なそうな時にまたコーヒーを飲みに行こうと思います。
でも、人気店なのでいつもいつも賑わっているのよねぇ。
西麻布の老舗喫茶れいの▼
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うつゆみこ
この展覧会の最後はうつゆみこの作品です。
展覧会のアイキャッチにもなっている、一度見たら忘れられない強烈なインパクトの作品です。
1点1点も強烈であり、集合体でもさらに強烈な作品群です。
よく見るとちょっと可笑しい組み合わせやグロテスクなものなど、完全にうつゆみこの世界です。
写真撮影について
展覧会の写真撮影は可能ですが、動画の撮影は禁止です。
1点だけ最後のうつゆみこのインスタレーション作品のみ撮影禁止です。
うつゆみこのインスタレーション作品というのは、箱の中の内部の作品でそれ以外の作品の撮影は可能です。
作品の前に撮影禁止マークがあるのですぐにわかるはずです。
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基本情報
見るまえに跳べ 日本の新進作家vol.20
月休館(月が祝の場合開館し翌平日休館)、年末年始(12/29-1/1) 料金:一般 700円、学生 560円、中高生・65歳以上 350円 東京都写真美術館 目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内 MAP アクセス:JR恵比寿駅東口より徒歩約7分、東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分 |