JR恵比寿駅と動く歩道(恵比寿スカウォーク)でつながっている恵比寿ガーデンプレイス内にあってアクセス便利な都立の東京都写真美術館をご存知でしょうか。写真美術館(TOP MUSEUM)は写真・映像に特化した国内唯一の公立美術館です。
常設展示室を持たない写真美術館では、毎回膨大な所蔵作品の中から、その年のテーマに即した写真作品をTOPコレクション展として公開しています。
今回のTOPコレクション展は、ホンマタカシ、石川直樹、畠山直哉などの写真家や牛腸茂雄など物故作家の作品に加えて現代美術のアーティスト奈良美智の写真作品など「セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見」と題してさまざまな作品を鑑賞することができます。
PRセレンディピティとは
今回のTOPコレクションの展覧会タイトルにあるセレンディピティ /serendipityとはなんでしょうか。
セレンディピティ /serendipityとは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見することを意味します。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つける事、あるいはふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取るという意味もあります。
「セレンディピティ」とは実は造語なのです。というのもイギリスの政治家であり小説家だったホレス・ウォルポールが1754年に生み出した言葉なのです。
この言葉は、ホレスが幼少期に読んだ『セレンディップの3人の王子 (The Three Princes of Serendip)』という童話を由来としています。
ホレスがセレンディピティという言葉を最初に使ったのは友人に宛てた手紙でした。そこからどのように一般に広がっていったのかはわかりませんが、200年以上の時を経て、日本でも展覧会のタイトルとして使われるような言葉として定着したのです。
セレンディピティとは誰もが経験したことのある、とても幸福に満ち溢れた、前向きな現象です。
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展覧会
会場は写真美術館3階の展示室です。
3階展示室前のカウンターで展覧会チケットを見せたら中に入る前から気をつけなければなりません。
▲展示室の自動扉の前に何やら可愛らしい足跡があります。肉球の足跡とどうみても鳥の足跡ですね。その先に目線を移すと。
▲展覧会冒頭の挨拶文を見ている犬と小鳥がいます。
そうです。この1匹と1羽の足跡だったんですね。
のっけから、予想もしていなかった素敵な出会いセレンディピティです!
展覧会は4つの章立てで構成されています。
しずかな視線、満たされる時間
最初の章は北井一夫作品からスタートします。
続いて牛腸茂雄の作品。どちらもモノクロで、とても静かな写真です。
▲次は、同じモノクロですが、生活感溢れる冷蔵庫の写真です。この作品は、潮田登久子のシリーズ作品です。
そして、島尾伸三の写真には、さっきの冷蔵庫の写真を撮った潮田登久子本人が被写体として写っています。
隣にいるかわいいかわいい女の子は、島尾伸三と潮田登久子夫婦の娘しまおまほです。しまおまほは90年代に「女子高生ゴリ子」でデビューした漫画家です。
島尾伸三の両親は共に小説家の島尾敏雄と島尾ミホという芸術家一家です。
小説家夫婦の祖父母、写真家夫婦の両親を持つしまおまほは、幼少期に牛腸茂雄の作品にも登場しています。
それにしてもかわいい。ちなみに現在はもう40代の大人です。
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窓外の風景、またはただそこにあるものを写すということ
次は、作家たちが「ただ、そこにあるものを写しとる」という行為によって得られたイメージが、それを鑑賞する人におこすセレンディピティについて考えてみるという章です。
▲神楽坂の柿の木荘には、展覧会を鑑賞するために訪れたことがあるので、親近感のある作品です。
ふたつの写真を編みなおす
次は、撮影した場所や時間を越えて2つの写真が、写真家が全く予期していなかった何かの関係性によって結ばれた作品を集めた章です。
この偶然は、まさにセレンディピティそのものと言ってもいいかもしれません。
▲みていて楽しいセレンディピティの数々
▲展示室中央には人工芝が敷かれ、丸い座布団があるので、靴を脱いで自由に座って作品を鑑賞することができるようになっています。
自分なりのセレンディピティを見つけてみましょう。
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作品にまつわるセレンディピティ
素晴らしい作品を世に送り出す作家たちも当然ありふれた日常を過ごしています。
そんな日常のなかでセレンディピティが訪れ、制作のきっかけになった作品や、鑑賞するうちに、私たちに思いがけない発見が訪れる作品などを集めた最後の章です。
▲見慣れた東京タワーがこんな風に見えるなんて。
▲石川直樹の富士山の写真。
▲生まれたばかりの赤ちゃんの瞳と死期を迎えた老人の瞳の写真が対になって展示されています。
写真美術館の収蔵作品は、約3万7千点です。その膨大な作品の中から、今回は「セレンディピティ」をキーワードに111点の作品が展示されています。
いつもTOPコレクション展の、テーマやセレクトを楽しみにしています。
チケット料金700円で良質な写真をこんなに楽しむことができるなんて良心的です。
じっくり作品鑑賞をしてセレンディピティと出逢いたい!
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基本情報
TOPコレクション セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見
月曜休館 10:00~18:00(木・金は20:00まで、図書室を除く) チケット料金:一般 700(560)円/学生 560(440)円/中高生・65歳以上 350(280)円 ※( )は写真美術館の映画鑑賞券ご提示者、各種カード会員割引料金 オンラインによる日時指定予約を推奨していますが当日券もあり 京都目黒区三田1-13-3 MAP アクセス:JR恵比寿駅東口より徒歩約7分、東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分 |