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『超複製技術時代の芸術: NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展 GYRE GALLERY


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表参道駅と原宿駅の中間地点にあるオランダはロッテルダムを拠点に活動する建築家集団MVRDVが設計した商業施設GYRE(ジャイル)の3階にあるGYRE GALLERY/ジャイルギャラリーでは、いつも革新的な展覧会が開催されています。

展覧会のタイトルが少々長めで難解なのも特徴の一つかもしれません。今回の展覧会タイトルは「超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——」展です。

一回では覚えられませんが、簡単に言うとNFTを用いた芸術作品による展覧会です。

超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——」展
超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——」展 左:ラファエル・ローゼンダール《キャビネット》2022 NFT 右:ルー・ヤン《マテリアルワールドの大冒険》2020 映像+NFT
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企画

このスペースで開催されていた直近の展覧会は、写真家の石川直樹の「Naoki Ishikawa Photo ExhibitionDhaulagiri / Kangchenjunga / Manaslu」で、その前が同じく写真家の高木由利子 写真展「chaoscosmos vol.1 — icing process —カオスコスモス 壱 — 氷結過程 —」でした。

クセのないさらりとした展覧会が続いたわけですが、今回は、長くて難解なタイトルに現れている通り、いつものGYRE GALLERYらしい展覧会が戻ってきました。

と言うのも、私がここでいう”GYREらしい展覧会”と言うのは、スクールデレック芸術社会学研究所所長の飯田高誉氏が企画または監修している展覧会のことです。

超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——」展
超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——」展 森万里子 《Eternal Mass》2023 彫刻+NFT

スクールデレック芸術社会学研究所と言うのは、恵比寿のNADiff a/p/a/r/t 2Fにある飯田氏が運営するギャラリーです。コロナ以降あまり展覧会を開催していませんが、過去にはダレン・アーモンドやデヴィッド・リンチ、ケネス・アンガー、森万里子の個展などを見たことがあります。

現在、飯田氏は2022年9月より渋谷区立松濤美術館の副館長もやられています。実は松濤美術館の館長は、2022年4月からデザイナーの石岡瑛子さんの妹で自身もデザイナーの石岡玲子(りょうこ)さんが就任しました。

石岡館長は、デザイナーなので美術が専門ではありませんから、実質キュレーションについては飯田氏がトップのようなものでしょう。松濤美術館も今後飯田色が強い展覧会が頻繁に開催されることを期待します。

超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——」展
超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——」展 ソル・ルウィット《弧と円と格子》1972 絵画(シルクスクリーン)

展覧会構成

この展覧会は、NFT(偽造・改竄不可能なデジタル証明書)を用いた芸術的実験に焦点を当て、「分有」「シミュラクラのアウラ」「超国家的権力」という3章で構成されています。

まずは、NFT元年と呼ばれた2021年にリリースしたNFT作品の結末が話題となったダミアン・ハーストの「The Currency」から。

ダミアン・ハーストが2021年に発表したプロジェクト「The Currency」は、1万枚のペインティングをNFT化したもの。

販売価格は1枚2,000ドル(約22万円)。1万枚すべてが同サイズ(A4)同素材で制作され、個別の偽造防止加工がなされていました。

『超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展
『超複製技術時代の芸術: NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展 ダミアン・ハースト 《The Currency》

作品の購入者は1年後に「NFTを放棄して現物の作品を所有」するか、「現物作品を放棄してNFTを所有」するかの選択をしなければなりません。

そして、NFTを選択した人の実際の作品は破壊されるというダミアン・ハーストらしい挑戦的なプロジェクトでした。

『超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展
『超複製技術時代の芸術: NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展 ダミアン・ハースト 《The Currency》

作品の売上合計は約8900万ドル(約121億円)でプロジェクトは終了しました。

そして、注目の選択期限の結果は、5149人の購入者が現物作品を選び、4851人がNFTを所有することを選びました。ほぼ半々という結果に。

つまり、ダミアン・ハーストは4851枚、合計約1000万ドル(販売当時約11億円)の価値がある実際の作品を2022年10月11日、ロンドンのニューポート・ストリート・ギャラリーにて焼却したのです。

その様子はインスタグラムでライブ配信されたので、私も固唾を飲んで見守りました。

購入可能

ダミアン・ハーストの作品は購入できませんが、展示されている作品で購入できるものもあります。展覧会に足を運んで、NFT作品を所有してみると言うのも悪くないかもしれません。

『超複製技術時代の芸術: NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展冨永愛 x TOMO KOIZUMI 《Light of Life》

▲GYRE地下にある冨永愛 x TOMO KOIZUMI 《Light of Life》も購入可能です。

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展示作品

展覧会の出品作家は、ダミアン・ハースト、ラファエル・ローゼンダール、ルー・ヤン、ロバート・アリス、レア・メイヤース、ジェネラティブマスクス、チームラボ、ソル・ルウィット、セス・ジーゲローブ、森万里子、藤幡正樹、施井泰平、鎌谷徹太郎です。

全てではありませんが、展示作品をご紹介します。

『超複製技術時代の芸術: NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展鎌谷徹太郎《The Dream of a Butterfly》2023 絵画+NFT
『超複製技術時代の芸術: NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展 施井泰平 IT I 2006
『超複製技術時代の芸術: NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展レア・メイヤーズ《非真正性の証明》2021 彫刻+NFT
『超複製技術時代の芸術: NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展チームラボ《Matter is Void》2022
『超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展
『超複製技術時代の芸術: NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展 藤幡正樹 Brave New Commons 2021

果たしてNFTのこれからはどうなっていくのでしょうか。

その未来は明るいものなのか、そうでないのか、まだ始まったばかりなので答えは出ていません。

今回のGYRE GALLERYは、飯田高誉氏は展覧会監修で、企画は高橋洋介氏だったので、これまでのようないい意味で一般市民を置いてけぼりにしたような現代美術の深淵に迫る飯田氏らしさが少し薄かったような気がします。

個人的に今後も飯田氏企画の展覧会に大いに期待したいと思います。

基本情報

『超複製技術時代の芸術:
NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展

2023年3月24日(金) – 5月21日(日) 

11:00 – 20:00 入場無料

GYRE GALLERY

東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F MAP

アクセス:東京メトロ表参道駅A1出口より徒歩4分、東京メトロ明治神宮前・JR原宿駅4番出口より徒歩3分

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