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黒川紀章設計の美術館第1号 埼玉県立近代美術館


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1982年開館した埼玉県立近代美術館は、自然豊かな北浦和公園の中にある美術館です。

美術館は中銀カプセルタワービルなどメタボリズム建築で有名な黒川紀章が手掛けた最初の美術館建築です。

緑豊かな公園の奥に美術館はあります。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

外観

エントランス

美術館は格子状の柱梁構造です。エントランスへのアプローチは、格子に囲まれた屋外でも屋内でもない中間領域で、利用者はここを通って美術館内へ入ります。

何度も来ている美術館ですが、なぜか雨模様のこの日は上に鳩が数羽休んでいました。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

格子に囲まれた空間の先には緩やかに波打つファサードが現れます。

曲線を描くガラス面に、直線的な格子のリフレクションが見えてとても美しいです。

ここを設計してから約20年後にあの黒川紀章設計最後の美術館、乃木坂の国立新美術館へと繋がるんだなぁと感慨深い思いに浸りながら、波打つガラスのファサードを眺めました。黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

屋外でも屋内でもない中間領域から公園の入り口方面を見上げるの図です。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

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コミッションワーク

入口から右側に目を向けると何やら美術館に刺さっているのか、飛び出しているのか、不思議なものが見えます。

これは彫刻家、田中米吉の「ドッキング(表面)No.86-1985」という作品です。見てわかる通り美術館の外壁と同じ素材でできており、開館時に設置されたコミッションワークです。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

今でこそ金沢21世期美術館や十和田市美術館のように、設計段階からアーティストと建築家が協働して美術館をつくりあげるのは珍しくなくなりましたが、この作品のように美術館建築と作品が完全に一体化しているのは、1982年当時だと新しかったのではないでしょうか。

この流れはきっと約30年後の2010年にアーティストと建築家の協働で最も優れた美術館、内藤礼と西沢立衛の豊島美術館へと繋がるわけです。たぶん。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

内観

エントランス

波打つファサードの中は、アールに沿った緩やかにカーブを描く長ーい石のベンチがあります。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

美術館は並木道の景観を生かすために高さを15m以内におさえて設計されています。

建物としては地上3階地下1階で、1階の展示室は主に美術館のコレクション展示室、2階は企画展示室。地下は一般展示室となっていて地域の美術展などを開催しています。3階は創作室、講座室、史料閲覧室があります。

エントランスロビー▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

アトリウム

中央に3階から地下1階までをつなぐアトリウムがあって天窓から自然光が採り入れられるようになっています。また、作品を吊って展示することもできます。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

地下からアトリウムを見上げると万華鏡のような光景が広がります。この空間はこの美術館の内部の見せ場ですね。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

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階段

エレベーターもありますが、階段で上階へ向かうと、外から見えていた田中米吉の作品を内部から見ることができます。

中から見るとなかなかの迫力です。タイトルが「ドッキング」ですから、この作品の方向性は”飛び出していく”というよりは、”刺さっている”が正しいのでしょう。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

2014年の大規模改修工事で美術館建築とあわせて表面のタイルを改修し、美しく生まれ変わりました。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

田中米吉の作品は実はあの刺さっている作品だけではありません。

こちらは▼階段の窓から見える、外壁と同じタイルの部分とコールテン鋼との二つの素材でできた、長い長い直方体が1階から地下へと斜めに置かれています。この作品のタイルは改修されてないようですね。

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

こちらは▼先ほどの長い直方体のすぐそばにある立体作品です。この立体が動いた軌跡のように周囲が外壁のタイルとコールテン鋼で貼り分けられています。しかもワイヤーで吊られていて浮いてるようですね。黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

サンクガーデン

公園から地下へと続くこの階段は、施錠されていて外部からは入れないようになっていますが、地下のピロティへと続きます。

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

実際出入りができないのが残念ですが、外部の公園がそのままサンクガーデンにつながるようになっています。この階段の横には屋外彫刻広場があります。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

サンクガーデンの階段と向き合うように3階から1階までの外階段があります。この階段には重村三雄の彫刻が常設されています。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

ひきで撮った写真だと2つの階段の位置関係がわかりやすいと思います▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

屋外彫刻広場です。

▼手前に見える黒い石は関根伸夫の作品です。田中米吉のドッキングは、作品の良し悪しは置いといて、建築と一体化していて必然性を感じるのですが、屋外彫刻広場の作品は、どこかで制作した立体を運んできて並べてる感が強くてちょっと残念です。

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

カフェレストラン

館内にはイタリアンカフェレストランのペペロネがあります。

このレストランだけの利用も可能です。現在は開催してないですが、展覧会のオープニングパーティもここを貸切にして行っていました。

カフェレストランペペロネ

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コレクション

椅子

埼玉県立近代美術館は「椅子の美術館」とも言われ、2021年3月に開催された展覧会「コレクション4つの水紋」に出品されていた、倉俣史朗のミスブランチをはじめ様々な椅子をコレクションしています。

座ることも可能な椅子の展示もあります。座れる椅子は毎日変更されるようなので館内の案内に従って座ってみてください。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

モネ

モネや藤田嗣治など教科書に載っているようないわゆる名画のコレクションや、瑛久本人による寄贈などコレクションの数は3,000点にものぼります。▼

黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館

宮島達男

忘れてはいけないのは、ロッカールーム内の宮島達男の常設作品です。

NO 37は扉が開かないのでロッカーとしては使用不可能ですが、鑑賞は可能です。「Number of Time in Coin-Locker」1996▼

「Number of Time in Coin-Locker」宮島達男

何度も来ているけれど、企画展示室を見たらコレクション展さえも見ないで帰ってしまうこともありました。今回建築的にも実はいろんな顔を持つ美術館だったんだと改めて再確認しました。

カプセル

北浦和公園内には黒川紀章設計で最も有名な中銀カプセルタワービルのカプセルが一つ常設されています。中には入れませんが、覗くと中はよく見えます。▼

北浦和公園 黒川紀章 中銀カプセルタワービル カプセル

このカプセルは中銀カプセルタワービルで実際に使われていたものではなく、プロトタイプとして中銀カプセルタワービルの1階ロビーにずっとおいてあったものだそうです (中銀カプセルタワービルの見学会に参加した際にお聞きしました)

そして2011年に六本木の森美術館で行われた「メタボリズムの未来都市」展で展示された後に埼玉県立近代美術館に寄贈されたものです。

プロトタイプなので実際のカプセルと若干違います。▼

北浦和公園 黒川紀章 中銀カプセルタワービル カプセル

使用していないカプセルなので内部はとてもきれいです。▼

北浦和公園 黒川紀章 中銀カプセルタワービル カプセル

カプセルの周りにもいくつか彫刻作品が設置されています。

埼玉県立近代美術館は、黒川紀章建築の美術館第1号として見学するととても面白いです。公園内にあるので気持ちいいですし、駅からのアクセスも良いです。美術館で面白い企画展が開催している時に訪問して展覧会と共に建築もじっくり見学することをオススメします。

埼玉県立近代美術館

埼玉県さいたま市浦和区常盤9丁目30−1 MAP

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