2024年2月17日に開幕した「アブソリュート・チェアーズ」を観に埼玉県立近代美術館へ行って来ました。
デザイン椅子をコレクションし、館内に実際に設置して「椅子の美術館」とも称される埼玉近美で椅子をテーマにした企画展ですから、ただ椅子を並べた展覧会になるはずはないだろうと期待を込めての訪問です。
さて、どんな内容なのでしょうか。
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▲JR北浦和駅から歩いて数分という埼玉県立近代美術館の設計は黒川紀章です。黒川紀章が手掛けた一番最初の美術館でもあります。
黒川紀章にちなんで前庭に中銀カプセルタワーのカプセルが展示されているのでそちらも見逃さないように気をつけてください。
PR埼玉県立近代美術館
埼玉県立近代美術館を訪れたらまず見逃せない常設展示がいくつもあります。
公園の一角に設置された黒川紀章のカプセルはもちろん、館内にも洒落っ気たっぷりで展示されています。
![埼玉県立近代美術館 宮島達男](https://i0.wp.com/www.artarchi-japan.jp/wp-content/uploads/2021/05/IMG_5815.jpeg?resize=700%2C525&ssl=1)
▲宮島達男の常設作品。
意外な場所にあります。見逃さないようにしてください。詳細はこちら
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▲屋外展示場にもいくつか作品が展示されていますが。一番の見どころは階段に展示されている重村三雄の作品「階段」でしょう。
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▲椅子の美術館と言われるだけに名作椅子のコレクションは本邦随一。
例えばこのミース・ファン・デル・ローエのバルセロナ・スツールは実際に座れます。
他にも様々な名作椅子が設置されていて実際に座ってみることができます。どの椅子が座れるかは「今日座れる椅子」として館内に案内がありますのでそちらを確認してからまわりましょう。
PRアブソリュート・チェアーズ
美術館のパブリックアートを見て、名作椅子の座り心地などを確認したら目的の「アブソリュート・チェアーズ」へ。この展覧会は椅子をテーマに、主に戦後から現代までの美術作品における「椅子」の表現に着目したものだそうです。
椅子が主役の作品から、小道具として登場するものまで、平面、立体に映像とバリエーション豊かな83点の作品が展示されています。
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▲会期は2024年2月17日(土)から5月12日(日)まで。春休みからゴールデンウィークまでの長い会期です。
《樹状細胞》
地下のセンターホールに頭上からぶら下がる作品も今回の展示の一つ。
カナダの作家ミシェル・ドゥ・ブロンの《樹状細胞》です。
この作品は、エントランスのある1階からはちょうど目線の高さに作品があります。上から、下から、いろんな角度から眺めることが可能です。
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▲作家が今回の展覧会のために滞在制作した作品で、日本で調達した約40脚の椅子を素材にしています。
この写真は地階センターホールから見上げたものです。色々な場所から、表情の異なる姿を見ることができます。
第1章 美術館の座れない椅子。
「アブソリュート・チェアーズ」展の構成は第1章から第5章までの5部構成。
原則写真撮影可能で、撮影NGな作品はその旨作品に撮影禁止マークが掲示されています。
展覧会はマルセル・デュシャンの作品「自転車の車輪」から始まります。京都国立近代美術館所蔵の作品が来ています。この作品を見たことがある方は多いと思いますが、通常はタイトルがそうであるように逆さまに取り付けられた自転車の車輪に目が行きます。
しかし、今回この展覧会では、車輪が取り付けられた台として使われている白いスツールが主役です。
デュシャンの作品は撮影禁止のため写真はありません。
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▲これはジム・ランビーの《Train in Vain》というカラフルな作品。原美術館ARCの所蔵作品です。
他にも草間彌生やアンディ・ウォーホルの作品もありますが、残念ながらそれらは写真撮影禁止でした。
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▲岡本太郎の《座ることを拒否する椅子》。
展示されている5点のうち2点は実際に座れます。
南青山の岡本太郎記念館にいっぱいありますね (こちらも座れるのは庭に置かれたものだけですが)。
第2章 身体をなぞる椅子。
第2章は工藤哲巳やフランシス・ベーコンの作品。
ベーコンは撮影禁止です。
第3章 権力を可視化する椅子。
第3章はシリアスな作品が並んでいます。
究極の暴力でもある電気椅子をモチーフにしたアンディ・ウォーホルの《電気椅子》が白眉かも。ですが撮影禁止です。他にもメディアアートの先駆者ダラ・バーンバウムのビデオ作品が3本上映されていました。
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▲ポーランドの作家ミロスワフ・バウカの《φ51×4, 85x43x49》。
拷問器具を連想させる作品です。手前にあるのは塩です。
第4章 物語る椅子。
第4章の展示作品は椅子そのものがテーマかもしれません。
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▲ナフタリンを素材とする宮永愛子の《waiting for awakening -chair-》。
ナフタリンの椅子が樹脂の中に閉じ込められ昇華することなく永遠に存在するという作品です。
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▲儚いはずの作品が永遠に形を留めているという、いつもの宮永愛子とは真逆の作品。これも本展の見どころの一つでしょう。
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▲日本と韓国を拠点とするYU SORAの《my room》シリーズ。
代名詞とも言える白い糸を使った刺繍作品。タブローにはない不思議な魅力のある作品は、椅子がモチーフです。
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▲ベルギーの作家ハンス・オプ・デ・ビークの《眠れる少女》。
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▲椅子とテーブルにいかにも名和晃平なデコレーションを施した《PixCell-Tarot Reading (Jan. 2023)》。
第5章 関係をつくる椅子。
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▲オノ・ヨーコの《白いチェス・セット/信頼して駒を進 めよ》。
真っ白なチェスセットはチェスの手を進めるうちに敵味方の区別が付かなくなるというコンセプチュアルなもの。
初日週末に訪問したので座れませんでしたが、平日はこの椅子に座ることができます。座ってみたい方は是非平日に訪問しましょう。
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▲ベルギーのダンスカンパニー「Rosas(ローザス)」の《Re: ローザス!》の映像。
世界中から送られてくる椅子に座ってのパフォーマンス映像の数々。
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▲アーティストの作品の制作過程から副次的に生まれてくる廃材”副産物”を回収し、作品や素材として展示する資材循環プロジェクト「副産物産展」がこの展覧会のために制作した風変わりな椅子の数々。実際に座ることができます。
▲美術館1階のロビーに置かれている廃材を使った椅子も副産物産展の作品で、展覧会の一部です。遠慮なく利用させてもらいましょう。
椅子がテーマの展覧会でしたが椅子そのものではなく、美術作品と椅子との関係や椅子が想起させるイメージを主眼とした展覧会となっていて非常に刺激的な内容です。椅子を切り口にした現代美術の展覧会としてお勧めです。
公園内にある美術館なので周辺環境も気持ちいいし、館内も広々していて落ち着きます。北浦和の駅から徒歩5分ほどでアクセスもよいので春休みやゴールデンウィークの美術館巡り、展覧会巡りにもどうぞ。
黒川紀章設計 埼玉県立近代美術館について▼
基本情報
アブソリュート・チェアーズ
10:00~17:30 月曜日休館 料金 一般 1,300円、大高生 1,040円、中学生以下無料 埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1 MAP |