恵比寿の東京都写真美術館で企画展「野口里佳 不思議な力」が始まりましたので、早速鑑賞してきました。
写真と映像とドローイングによって構成される展覧会です。
現在、写真美術館では「見るは触れる」日本の新進作家Vol.19(2022年12月10日まで)も開催中です。
日本人のアーティストの美しい写真表現の数々を同時に鑑賞できる機会です。これは行くしかない!
野口里佳
現在、沖縄県那覇市に在住の写真家です。
私自身は、これまでに六本木のcomlex665にあるTaka ishii galleryで2017年に開催された個展「海底」や、千葉県のDIC川村記念美術館で開催されたグループ展「ふたつのまどか」などで野口作品を鑑賞してきました。
特にDIC川村記念美術館の「ふたつのまどか」に出品されていた映像作品「アオムシ」はとっても印象的で今でもよく覚えています。
今回の展覧会にも、当時脳裏に焼き付いてなかなか頭から離れなかった作品「アオムシ」が出品されていて嬉しくなりました。
野口里佳作品をそう多く観てきているわけではありませんが、写真作品も映像作品も透明感があって美しいのは大前提としてありつつ、作品として切り取られたその場所の温度や湿度、そして匂いを感じるような作品が多いのが特徴です。
この展覧会は、誰もが目にするような何気ない日常の一瞬が、作家の目を通して切り取られることで、尊くて愛おしく感じられる野口里佳の世界観を一度にまとめてみられる貴重な機会です。
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展覧会
展覧会は会場内で7つのセクションに分かれています。
冒頭は展覧会タイトルにもなっている「不思議な力」シリーズの写真作品が展示されており、一つだけ「台所宇宙」と題した立体作品があります。
これらシリーズの写真にはタイトルのまま「不思議な力」が捉えられています。それは、オカルトや超常現象のようなものではなく、日常で目にしたり、家の中で起こり得る「不思議な力」です。
次のセクションは2013年に亡くられた作家のお父様が撮影したという写真の数々「父のアルバム」です。
これらもまた、どこにでもある幸せな家族の光景が写っているだけなのですが、時を経て撮影者が亡くなり、被写体となっていた娘が遺されたネガをプリントする時に感じた幸福な時間、それを第三者が鑑賞する時、その幸福感がじわじわと伝わる「不思議な力」を感じました。
そして、DIC川村記念美術館で釘付けになった映像作品「アオムシ」との再会です。
更にこのセクションでは3つのモニターによる「虫・木の葉・鳥の声」も同時に鑑賞できます。
また、壁には作家によるドローイングも展示されています。
一つは壁に直接チャコールペンシルで描かれています。そののびのびとしたやんばるの森の様子は、沖縄在住の作家ならではの描写です。映像に気を取られて見逃さないように!
映像の次は「クマンバチ」と「さかなとへび」、「クジャク」、「ヤシの木」など虫や動物、植物に目を向けたシリーズ。
このクマンバチの撮影を機に小さいものを撮影するために胃カメラを改造した特殊なカメラを用いるようになったそうです。
映像作品「夜の星へ」があって、最後は迫力の大型作品「潜る人」シリーズで展覧会は締めくくられます。
映像作品
この展覧会には4つの映像作品が出品されています。
各々作品の時間を掲載しておきますので鑑賞時間の目安にお役立てください。
「アオムシ」5分1秒
「虫・木の葉・鳥の声」3つのモニター 12分12秒
「夜の星へ」27分34秒
「レスキュー隊」5分33秒
作品「レスキュー隊」は、展示室を出た2階エレベーターホールに展示されています。
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写真撮影について
写真撮影は展示室内の冒頭に展示してある「不思議な力」シリーズのみ撮影可能。
あとはエレベーターホールの映像作品「レスキュー隊」も写真撮影可能です。
動画撮影はNG。
というわけで圧倒的に撮影禁止の作品の方が多いので、このブログに掲載されている展示作品はほんの一部です。
是非、実際に美術館へ足を運んで鑑賞してください。
鑑賞するとなぜかとても温かい気持ちになる作品の数々です。
そして、写っているものすべてが尊くて愛おしい。
なんら特別ではない日常の切り取りなのですが、生命の神秘や生きる喜びをあらためて感じることができる作家の視点にとても共感しました。
決して大袈裟ではなく、生きる希望を与えてくれる「不思議な力」を放つ野口里佳の展覧会、おすすめです。
基本情報
野口里佳 不思議な力
2022年10月7日(金)~2023年1月22日(日) 10:00~18:00(木金〜20:00) 東京都写真美術館 2F展示室 目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内 MAP アクセス:JR恵比寿駅東口より徒歩約7分、東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分 |
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