森美術館で開催中の森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」環境危機に現代アートはどう向き合うのか?と同時開催しているMAMコレクションのさわひらき展とMAMプロジェクトの地主麻衣子の展覧会をご紹介します。
森美術館で開催している展覧会は、いつも内容が濃くて非常に見応えがあるので、見終わるとへとへとなんてこともありますが、最後の最後に開催されているMAMコレクションとMAMプロジェクトは、美術館の展覧会とはまた違った切り口の作品がみられるので、森美術館訪問時の楽しみのひとつです。
今回は、MAMコレクションもMAMプロジェクトも映像作品です。
疲労困憊でも、心にすーっと染み入ってくるような作品なので、スルーしないで堪能しましょう。
さわひらき
さわひらきの作品を最初に目にしたのは飛行機の映像作品《DWELLING》です。この作品ですっかり心を射抜かれ、その後2012年の東京オペラシティアートギャラリーで開催された個展「Under the Box, Beyond the Bounds」でファンになりました。
この個展がすでに10年以上前だということに驚きですが、その後も所属ギャラリーのオオタファインアーツをはじめ、六甲ミーツアートや川村記念美術館、恵比寿映像祭、東京都庭園美術館など、さまざまな場所でさわひらき作品を見てきました。

最初に目にした作品《DWELLING》は、ロンドンでさわひらき自身が暮らす部屋で撮影・制作されたものですが、現在もロンドンを拠点に活動しています。
さわひらきの映像作品に出てくる日本ではないどこかの風景、あるいは日本のようだけれど、どこか異国情緒を感じる風景は、作家自身の長い海外生活による影響は無関係ではないはずです。

さわひらきの作品は一様に、ノスタルジックでちょっとメランコリックな独特の世界観を持っています。ちょっとだけのつもりで見始めるのですが、いつの間にかその世界観に引き込まれ、最後までその場を離れられなくなってしまうのです。
音楽がついている場合もありますが、今回のMAMコレクションの作品には、音楽というよりサウンドインスタレーションのような音がついていて、さわひらきの世界観を一層印象強いものにしています。
さわひらきの展示作品は3点
今回のMAMコレクションに展示されている作品は3作品です。しかし、3つの作品が展示されているというよりは、展示室全体がさわひらきの世界になっており、一つのインスタレーション作品と言っても良いでしょう。

▲入り口側にあるのは、以前にも鑑賞したことのある作品です。しかし、以前見た時よりもその画面のサイズはとても小さくて、終始ブルーでした。
この作品は約5分間でループします。

▲中央のメインとなる作品は、大きなテーブルの上に砂が敷かれそこにスクリーンとなるパネルが、本や花瓶などの間を縫うように設置されています。これは箱庭療法からインスピレーションを得た作品でタイトルは《hako》です。
この作品の映像は12分でループ再生されています。
テーブルの足元にも映像作品が1点あるので見逃し注意です。
壁面の平面作品は2023年の新作です。

▲東京の夜景が綺麗に見えるガラス窓の近くにもこのような作品があります。
前述したようにこの展示室全体でさわひらきの世界観が繰り広げられています。

▲外が明るい時間帯に訪れてみたら、スクリーンが下ろされ夜と変わらぬ暗さでした。そのかわり窓越しに東京を見ることはできません。

▲マジックアワーの時間帯に訪れたら、作品を鑑賞しているうちにゆっくりとスクリーンが上がり東京の街並みが姿を現しました。
夜は完全にスクリーンが上がっていてさわひらきの作品越しに東京の夜景を見ることができます。
さぁ、あなたはどの時間帯に鑑賞する?
基本情報
MAMコレクション017 さわひらき
会期中無休 10:00~22:00 火17:00まで 森美術館 私たちのエコロジーのチケットで鑑賞可能 |
地主麻衣子
恵比寿映像祭などで過去にも作品を鑑賞しているアーティストです。

新作《空耳》は、正面のスクリーンには詩が投影され、その横に回転するモニターが設置され、手前の工業用のダクトからは石が転がる音が聞こえるという3つのレイヤーの上に作家本人の声が重なるという構成のインスタレーションです。
写真だとこの作品は非常に伝わりにくいので是非実際にこの作品の中に身を置いて体験することをお勧めします。
今、森美術館で見られる展覧会▼
基本情報
MAMプロジェクト031:地主麻衣子
会期中無休 10:00~22:00 火17:00まで 森美術館 私たちのエコロジーのチケットで鑑賞可能 |